2009年 02月 17日
評者の町田康との出会いは『夫婦茶碗』である。そのダラダラと書かれた、ほとんど粗筋のない文章に、何回も笑ったというか、笑いの琴線を奏でられて、グフフ、グフフの読書体験だったのことども。その後、多くの町田作品を消化してきた評者だが、笑い琴線本としては『耳そぎ饅頭』、『テースト・オブ・苦虫』、『テースト・オブ・苦虫2』なんかが挙げられようか。 勿論、笑い琴線グフフだけをこの作家に求めているわけではなく、『パンク侍、斬られて候』、『告白』、『宿屋めぐり』では、笑かすだけではない日本語の操り師としての町田康に感服いたした次第でもある。 ただ、でも、作品群によっては笑かしていただきたい聖月様ではあるので、その後シリーズ6までいった「テースト・オブ・苦虫」は全部読んできたし、その他の作品たちも笑いに期待して読んできたのではあるが、中々、いやあ、笑った、笑った、なんてとこまではいかなかったのである。少し悔しくなって、少し哀しくなって、少し淋しくなって、今一度『夫婦茶碗』他、笑かしてくれた作品たちを再読したのだけど、やはりそこは再読は再読、新鮮な笑いには出会えなかったのである。 そしたらさあ、これ読んで笑った笑った。ゲラゲラじゃないよ。グフフ、グフフとね。粗筋としては、前作『実録・外道の条件』(シリーズだけど、前作を読む必要はない。評者も、もう8年くらい前に読んだので、内容はほとんど覚えていない)と同様、主人公のマーチダコーが業界人に振り回される話で、ブコウスキーなる作家の足跡を辿るドキュメンタリーのテレビ企画にいやいや乗せられ、いやいや米国に行ったけど、案の定企画は失敗し、ただ業界人に振り回されただけ、そんなお話なのである。 とにかく、どうでもいいようなことがダラダラダラダラ書かれていて、それでいて手垢のついていないような表現で思弁を手玉に取る、町田康という作家は凄いとしかいいようがない。ハマる人には大いにハマり、ハマらない人には、何これ?駄作?ってな感じなんだけど、評者的には聖月様的には大ハマりの久々のマーチダ爆笑節である。 ところで、本書を読んでいると、チャールズ・ブコウスキーという作家が非常に気になってくる。虚実入り混じった本書だけれども、多分、町田康がブコウスキーを高く評価しているのは間違いのない話のようで、そうなると評者も読みたくなってくるわけで、amazonで検索したみたら、どの作品も評判がいいようで、結構、鹿児島の図書館にも蔵書があるようで、今後の先の長い読書スケジュールとしてはブコウスキーを4冊くらいは読んで、今一度『実録・外道の条件』(中身を忘れた前作の方)を読みたいなあと思っている聖月様はアル中脱出を図るため、今週一週間は飲まないぞと決めたのことども。(20090215) ※とりあえず、ブコウスキー『町でいちばんの美女』『勝手に生きろ!』『くそったれ!少年時代』『パルプ』あたりが気になるかな。(書評No863) 書評一覧 ↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら
by kotodomo
| 2009-02-17 08:52
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