「本のことども」by聖月

kotodomo.exblog.jp
ブログトップ
2004年 11月 20日

◎「図書館の神様」 瀬尾まいこ マガジンハウス 1260円 2003/12

b0037682_11375349.jpg 評者が家庭内でどういうパパをやっているのかちょこっというと、まず仕事の話を家でしない。しないようにしているわけではなく、しても詮無いのでしない。だから、嫁さんも子供もパパの仕事の内容を訊かれても人に説明ができないことがあるようで、たまに困っているようだ、ははは。逆に、子供の習い事とか、嫁さんのやりたいことに口を出すこともしない。ただ、子供のことは成長を見守る責任はあるので、大きな舵取りだけはするようにしている。今のとこ嫁さんに子供の習い事で言っていることはただひとつ。「英語以外は何習わせても反対はしないよ。だけど、習いたいって子供たちが言ったのだけ習わせなさい」と。評者は、6年生のときバアチャンに無理矢理剣道を習いに行かされた以外は、習い事の経験がないので、「無理矢理」は排除したく、「ご自由に」がモットーである。ついでに言うなら、英語教育だけは子供の習い事程度で将来に影響はほとんど及ぼさないと悟っているので反対している。英語を喋れる子供を夢に描く母親は多いが(嫁さんもそう)、喋れるかどうかは将来的な出会いであるので、教室が楽しいとか、親しむとかいう目的であれば、英語の教室に代わるものはいくらでもあると思っている。で、今のところ、上の娘はピアノと算盤のみ。これはよい習い事である。自転車に乗れるというのと一緒で、たとえ今やめて全然接しなくなったとしても、将来的に身についたものであり、いくらか役に立つ日がくるであろう。付け加えておけば、パパ評者は子供が習い事をやめたいと言ったら、いつでもやめていいよというスタンスなのだが、未だにそういうことはない。

 で、最近、嫁さんと上の娘が、来年度の5年生あたりから、進学塾に行くかどうか迷っているらしい。娘のほうはお勉強好き好き人間なので相当行きたいらしいが、嫁さんはお金のことで悩んでいる。そしてパパ評者なのだが、わからないところで大きな舵を取って、いかせないようにしようかと思っている。夏季講習とか、公開試験とかには反対しない。塾で他人と同じ時間を共有し、同じだけ時間を費やすのが勿体無いと思っているのである。他人との時間の共有は大切なことなのだけど、それは学校教育で充分。詰め込み教育も大賛成。ボロボロ零れ落ちていくことを前提に、詰め込まれていけば、それでもあるレベルにはなるということを、自分の体験でわかっている。いけないのは、他人と同じ空間を共有しながら、同じ時間をかけるということ。一人でやれば、半分以下の時間で済むので勿体無いのである。

 じゃあ、空いた時間で何をやらせたいのと言えば、それは本人どうぞご自由にである。でも、自分の反省からすると、是非多くの文学を読むことに時間を使ってほしいと思っている。評者は、習い事もせず、時間を自由に使っていたが、今となっての反省点は、「世界文学全集」とか「日本文学全集」に載っているような名作たちをほとんど読まなかったことである。時間はあった。部活をしたり、本を読んだり、勉強したり、自由に使っていた。本は読んだが、自覚がなく、星新一とか、太宰治とか、個人的な選択に頼っていた。だから、じぇ~んじぇん、名作たちを読んでいなく、そのことが悔やまれるのである。えっ?今からでも間に合う?そうだが、そうではない。おおよその作品を読むのには今からでも充分な時間があろうが、読むべきときは若き日で、そこで足腰を鍛えて社会に溶け込んでいくべきなのである。だから、やっぱり読まない、キッパリ(笑)。だから、やっぱり娘には若いうちに読んでほしい。そう思うのである。図書館の本を全部読むくらい読んでほしいのである。

 本書『図書館の神様』の圧巻は、ただ一人の文芸部員、垣内君の素敵な描写である。それでは今日の活動を開始します、みたいな感じで、文芸部の活動時間になると集合場所の図書館に来て、黙々と本を読み出す。集合場所に来るもう一人は、顧問の女性主人公。非常勤の私は、本当はスポーツ関係の顧問をしたかったのだが、結局は部員一人の文芸部の顧問に就任。その二人の図書館でのやりとりが素敵なのである。二人しかいないのに、垣内君が、きょうは会議をしましょうとか、今年の予算はどうしましょうか、などと部活らしく振舞い、文学に対する造詣を私に語ってくれるわけで、それでいて爽やかでスポーツもできる男の子なのが、主人公の私にとっても素敵なのである。だから、この物語も素敵なのである。

 個人的に欠点を感じるのが、背景に主人公の不倫関係があること。不倫は文化などではなく、評者に言わせれば悪である。なぜ、こういう素敵な物語の中に悪を持ち込むのか。爽やかで何気ない悪を描きたかったのか?人と人とのいくつかの関係を描きたかったのだろうとは思うのだが、悪を持ち込む必要はない。単なる片思いとか、別れ行く二人の関係みたいなのを持ち込むだけで済んだと思うのだが。評者は不倫話は好きくないので、自然に◎◎の評価かなと思っていたものが、◎に落ち着いてしまう。
 あとひとつ、欠点じゃないのだけれど題名の『図書館の神様』。素敵な題名なのだが、物語内での神様の象徴が、なんか名は体を表していないような感じがあって、今ひとつ腑に落ちない感が・・・まあ、いいか。

 我が娘にも、是非にお勉強もスポーツも頑張っていただいて、それでも図書館で過ごす無駄に見える素敵な時間を、そういうものを大切にする人間になってほしいなあ、とパパ評者は思うのである。以上、ご清聴ありがとうございました。(20041117)

※当然、図書館で借りた。我が荒川区図書館には、神様はいないが、ネット環境が整備されているので、サイバーの神様はいるやもしれん。(書評No433)

書評一覧
↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら
[PR]

by kotodomo | 2004-11-20 11:38 | 書評 | Trackback(6) | Comments(9)
トラックバックURL : http://kotodomo.exblog.jp/tb/1077346
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Tracked from どこまで行ったらお茶の時間 at 2004-11-23 10:59
タイトル : 瀬尾まいこ『図書館の神様』
図書館の神様 瀬尾 まいこ サクサク読めそうだったので、帰宅してすぐに一気読み。 読み終わって「さぶ」と「夢十夜」がたまらなく読みたくなった単純な私(笑)。 不注意な言葉が原因で、ある少女を自殺に追いやった(らしい)過去を持つ清。 その一件で清を取り巻く環境は一変したし、また自らの性格までも変えてしまう程の 大きな傷を心に残すことになる。 故郷から離れた海辺の町の、国語講師として潜り込んだ高校で、 ひょんなことから文芸部の顧問となる清。 たった一人しか部員(垣内クン)がい...... more
Tracked from 瀬尾まいこ応援BLOG! at 2005-01-15 13:32
タイトル : 瀬尾さん情報(エッセイ他)
ご存知の方も多いと思いますが、朝日新聞社系のサイト“よつ葉びより”に月に一回程度エッセイを書かれています。 小説の瀬尾さんではなく、もっと素顔に近い瀬尾さんに接することが出来ます。 現在アップされてる 記事の目次を作りました。 是非お読みいただけたら... more
Tracked from 瀬尾まいこ応援BLOG! at 2005-02-13 01:43
タイトル : 今年期待される作家に・・・
小学館の“WEBきらら”にて全国書店員さん座談会という特集を毎月行っている。 今月号(2月号)の特集として“「新ベストセラー発信地」関西地区の書店員さんが語る今年来そうな小説家”というテーマで関西の書店員3人の座談会を掲載しているのだが、瀬尾さんが冒頭で... more
Tracked from 読んだモノの感想をわりと.. at 2005-05-13 12:47
タイトル : 図書館の神様 (瀬尾まいこ)
《警告》 ボコボコに酷評してます。瀬尾まいこファンの方はご注意を! 読んでて一番イライラするのはディテールに次々と違和感が湧いてくる小説。これはそんな小説でした。 たとえば・・・(ネタバレ) 料理教室での指導方法について真剣に悩んでいる不倫相手に対して、その欠点を分かっていながらアドバイスしないことが正しさとして描かれています。こういう微妙な価値観があちこちに。 たとえば・・・(ネタバレ) 弟の底抜けな優しさの例といいながら、優しさとは関係なさそうな、主人公の性格的な欠点を遠まわ...... more
Tracked from 歯医者さんを探せ! at 2005-05-30 07:59
タイトル : 『図書館の神様』
● 表紙の印象           装画は『卵の緒』と同じく、スズキエミ氏。本作には私の一番好きなシーンが描かれている。氏もそうだったのかな?それにしてもバスケットボールが二つ並んじゃったりしたら、もう個性を感じずにはいられない。並んでいない方が自然...... more
Tracked from 本を読む女。改訂版 at 2005-06-27 23:59
タイトル : 「図書館の神様」瀬尾まいこ
図書館の神様posted with 簡単リンクくん at 2005. 6.27瀬尾 まいこ / 瀬尾 まいこ著マガジンハウス (2003.12)通常24時間以内に発送します。オンライン書店ビーケーワンで詳細を見る 友達に「きよ」って呼ばれている子がいたんです。今も友達ですが。 1行目読んで主人公の名前が「清」だったんで、 その友達にこの本を贈ってやりました。なんとなく「センセイの鞄」も同封しました。 つうかその子誕生日でもなんでもないんだけどさ。贈りたくなって。 なんていうか、好...... more
Commented by でこぽん at 2004-11-20 14:37 x
教育パパでない聖月さんの持論がお聴きできて楽しかったです。
塾!いいじゃないですか。しかも進学塾!憧れますね。
私は家庭教師はするのもされるのも経験がありますが、塾はないです。行きたかったなあ~塾。聖月も家庭教師の経験があるんじゃないですか。
家庭教師は当たり外れがありますよね。
高校の夏休みに、友達のにいちゃんがどうしても家庭教師をさせてほしいと言うのでさせてあげたことがありました。九大生に数学、京大生に英語。…つかえねェー。数学は私が教えてあげたし、京大生は彼女の話をして帰って行きました。

ピアノも算盤もものすごい才能と聞き及んでいるので(聖月さんから)続けたいでしょうね。だけど、進学塾に通うようになったら、やっぱり続けていくのは無理があるように思います。たまに習い事と塾を両立させている子もいますがかなり負担になっているようです。
読書のほうはどうでしょう? 
そんなすごい才能を持った彼女の読書体験を是非お聞きしたいです。
やはりもう文学全集は読破されているのかしら。

そうそう、『図書館の神様』の話でしたね。
不倫は私も好きくないです。
これがなければ満点でした。
Commented by 聖月 at 2004-11-20 21:00 x
塾!どうでもいいんですけど。右に舵とろうとして、娘が左に大きく引っ張ろうとするなら、方針転換もありで(^^ゞただ、時間は勿体無い。学問やお稽古ではなく鍛錬ですから、個人的な時間差というのは勿体無いんですよね。

学生時代、塾の先生やっていましたよ。担当は英語。喋れませんよ(笑)。でも受験英語は得意でしたから。その頃のことは少しだけ『4TEEN』http://jaddo.com/book/back35.htm#2の書評内に書いてあります。

上の娘の読書は、私と一緒で今のとこ行き当たりばったりです。流行のハリポタ、ダレンシャンは全部読んでいますね。あと知識系が好きですね。“宇宙の誕生の秘密”みたいな。それと偉人伝。
Commented by 聖月 at 2004-11-20 21:00 x
続き

でも素敵なのはですね、面白いといってハリポタなんかも何度も何度も読み返すところでしょうね。それと“面白いよ♪パパも読んだら♪”って、親子で共有しようとするところですかね。初めての共有本がハリポタ1。あと柏葉幸子の『ブレーメンバス』http://jaddo.com/book/back27.htm#10なんか、実際作品の中身について話し合ったり(^.^)

あとですね『ちゃお』少女雑誌。あれを1年前から買い始めたのかな。なんか本人、それで大人になった気分になっているようです。大人だと勘違いして接していると、そういう子供な部分が出てきて、パパとしてもおかしくなるのです。

文学全集は、まだ意識外のようです。
Commented by でこぽん at 2004-11-22 00:45 x
聖月様、ごめんちゃい。また敬称忘れていましたね。
聖月様の書評UPが速すぎてコメントが追いつきません。
と、忘れていました。とってもお綺麗なお嬢様ですね(はぁと)
『ブレーメンバス』の面白さが判るお嬢様に脱帽です。
その下に書いてあったゴダーゴの『石に刻まれた時間』ですが、是非お嬢様に読んでいただいて解説していただきたいものです。
私の読書ノートに「何がなんだかワケワカランがとにかく読了できて良かった。ぐっばい」と書いてありました。聖月様の書評を拝見して安心いたしました。私だけじゃなかったのね。
『さよならは言わないで』もワクワク感もムカッも楽しみましたが、最後の最後で茫然自失となって終わりました。ゴダーゴは私には合いません。バイバイです。
この続きは『その名にちなんで』で。
Commented by 聖月 at 2004-11-22 07:33 x
でこぽんさん おはようございます
はい、「呼び捨て」(笑)気付いていましたが、大人なので(笑)

ゴダード『石に刻まれた時間』なんか、このミス対策で読んだような。海外物、少しはランクインしそうなやつ読んでおきたくて、ゴダードは押さえかなと思ったのですが、全然だったの覚えています。
ランクも内容も。続きはあちらで(^.^)
Commented by notaro_hinemojira at 2005-05-13 12:48
ボコボコに酷評したので遠慮しようかとも思いましたが、せっかくなので(?)TBさせてもらいました。
Commented by 聖月 at 2005-05-13 12:54 x
他人の評価は、お薦めした本じゃない限り、あまり気にしませんから(^.^)
それにTBって、私はこう思うみたいなやつですから(^.^)
Commented by notaro_hinemojira at 2005-05-13 23:22
でしょ。だから誰にもお薦めされないように注意してます(笑)。こっそり参考にさせていただくということで。
Commented by 聖月 at 2005-05-13 23:58 x
です。そいでもって、薦めていないけど、読ませる(^^)v


<< ◎◎「その名にちなんで」 ジュ...      日曜日に図書館に取りに行く予約本 >>