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「本のことども」by聖月

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2009年 09月 23日

◎◎「船に乗れ!Ⅱ 独奏」 藤谷治 ジャイブ 1680円 2009/7

◎◎「船に乗れ!Ⅱ 独奏」 藤谷治 ジャイブ 1680円 2009/7_b0037682_6141359.jpg 評者はこのシリーズを藤谷治版『DIVE!!』(森絵都)だ!と、前作を読んだとき言いきったわけで、そう考えるとシリーズが何作まで続くのかが気になるところである。

 『DIVE!!』と同じく4作くらいが妥当だと思うし、ただ前作で高校1年での生活を、本作で高校2年での葛藤を描いたことからすると、3年を描いてシリーズが3作で終わることも考えられるし、現在の主人公が昔の自分を語るスタイル(此岸から彼岸を眺めるような視点)から推測するに、大学編とか社会人編とかフリーター編とか耳偏とか獣偏とか20作くらい続くのかもしれない(とは思わない(-。-)y-゜゜゜)。評者の気持ちとしては、5作くらいは続いてほしい楽しみなシリーズである。

 ところで、シリーズの第一作(前作)の副題が、“合奏と協奏”。音楽科の高校で主人公たちが集い、音楽を通じて高め合い成長していく、そんな意味での副題かと思う。シリーズ2作目の今回の副題は“独奏”。中々言いえて妙な副題といえよう。前半は、前作と同様のテイストで進行していくのだが、後半は一転、主人公の孤独な葛藤を中心に描かれるわけで、そういう意味で独奏なのである。特に本書の終盤あたりは、前作で考えられなかったようなノワール感が広がるので、今後の話がどういう展開になっていくのかが楽しみである。

 『DIVE!!』のシリーズを考えたときに、シリーズ各編で明と暗、挫折と栄光、そんな色合いに分けることが出来るだろう。本シリーズの場合にも、そういう暗転と陽転のタペストリーが考えられるし、暗転、暗黒、破滅への道が続くのかもしれない。というのも、どうも昔を語る現在の主人公の語り口が、苦い過去を振り返るような、そんな印象なのである。評者としては、楽しい学園ライフを、もっともっと描いてほしいのだが。

 前作を読んだとき、“これって青春小説の傑作!音楽小説の傑作!良書読みの押さえ本!である”と評した評者なのだが、もしかすると青春小説だとか、音楽小説だとか、そんな範囲に収まらないシリーズが展開されるのかもしれない。(20090919)

※未だに題名の“船に乗れ”の意味がわからないので、それがわかったあたりで、物語は収束するのかもしれない。(書評No914)

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by kotodomo | 2009-09-23 06:15 | 書評 | Trackback | Comments(0)


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