やはりこの作家は今後も追いかけていかねばと思った佳作でした。基本、純文学路線、いや単に文学路線か、それにいつもどこか心温まる日常の切り取り、いいですね。どういうお話かといえば、長期バイトに出向く弟のせいで、弟の仮り住まいに自分が仮り住まいして嫌いな蛇を飼うはめになった男の話。どこか可笑しい取り巻くキャラたち。なかでも、職場の変わり者上司、田村のおっさんは最高である。オタクなのか自己チュウなのかつかみどころがないのだが、中々芯があって面白い。巻末に「夜の住人たち」という小品も収められているが、まあ付録だな。