「本のことども」by聖月

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2012年 07月 01日

2012年6月に読んだ本のことども

6月の読書メーター
読んだ本の数:17冊
読んだページ数:4626ページ
ナイス数:146ナイス

川三部作 泥の河・螢川・道頓堀川 (ちくま文庫)川三部作 泥の河・螢川・道頓堀川 (ちくま文庫)
◎◎宮本輝の原点というより、小説の原点がここにありって感じの小説、川三部作。いや、全然別個の小説で、独立し、部分ではないので、三部作とは言い難いが作者も三部作と言っているのだから、まあいいか。個人的には「泥の川」のガヤガヤとした熱気が好きなのだけど、「蛍の川」の青年期的な青臭さも好きだし、「道頓堀川」の一人ひとりの個性の描き方も巧いなあと唸らされるし、とにかく良い読書のための良い小説たちなんだな。ただただ小説で在り続けるための小説たち。ミステリも意外性もサスペンスも何もなくても、小説は小説であることの見本
読了日:06月30日 著者:宮本 輝
ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち (メディアワークス文庫)ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち (メディアワークス文庫)
〇それなりに面白いのだが、主人公の「本の読めない体質」っていうのには、かなり無理があるし、連作短編の最初の2編も、物語の構造的に随分と無理があって、とにかく安楽椅子探偵を構築しようとする著者があがいた作品のような感じがする。でも論理学入門は、シンプルではあるが、キャラが立った佳作だし、晩年で色んな伏線を収斂させるやり方は中々に面白い。確か実家にあった太宰の晩年。文庫本だけど、今度読み返してみましょう。あと、自分でも感じていた、新潮文庫にだけ、紐の栞=スピンが付いているのは、やはり今では新潮文庫だけなんだ。
読了日:06月24日 著者:三上 延
キネマの神様キネマの神様
◎普段映画は観ないのだが、本書を読むとやはり映画を観たいななんて思うわけで、「フィールド・オブ・ドリームス」なんかは、まだ色々と映画を観ていた若い時期に観たわけで、何気なくシーンを憶えていて、そうしたら、本書に出てくるその他の映画も観たくなってくるわけだ。まあ、どういう話かっていうと、映画に関わるお仕事の女性主人公。映画キチガイだけどギャンブル狂いのその父親。そんな二人の関係に、ベタな周りのドラマが動き始め、そして結末もなんとなくベタなんだけど、やはり巧い作家が描くと面白いのである。題名はベタ過ぎるけど。
読了日:06月22日 著者:原田 マハ
日本全国津々うりゃうりゃ日本全国津々うりゃうりゃ
◎毎度お馴染みの脱力系エッセイ。今回は日本の迷所廻り。初っ端の名古屋編を読んだときには、笑いどころもなく、ただふざけた文章を読むだけの退屈さに放り投げようかとも思ったが、次の秋山郷を読んでオモロ。結局全体にオモロイ旅エッセイでした。笑かせるだけなので、特にその場所に行きたいとは思わないのだが、唯一行ってみたいなと思ったのが、しまなみ海道。瀬戸内の満潮干潮が作りだす海の流れの妙。観てみたいものである。テレメンテイコ女史にも会いたいものである。しかし、この作者を読んだことのない読者だったら初読には向かないか。
読了日:06月22日 著者:宮田 珠己
花々花々
〇「カフーを待ちわびて」の他人主人公サイドストーリー。明青も幸もカフーも名前は出てくるが・・・ただねえ、傑作は傑作だけで終わらせたほうが良かったような気がするなあ。花をモチーフにした短編集で、それぞれに味わいはあるのだけど、カフーに寄るところも大きく、カフー未読の人にはどうなんだろう。そして、最後に語られるニュース。やっぱりいらないような気がするなあ。「千と一枚のハンカチ」・・千と一枚っていうのが、この作者の感性のウォーミングなところだろう。あと「鳳仙花」「ねむの花デイゴの花」「さがり花」「花だより」収録
読了日:06月17日 著者:原田 マハ
バイ貝バイ貝
◎◎ようやっと「きれぎれ」「夫婦茶碗」の町田康が帰ってきた感じで、日本語の操りも町田らしくキレがあり、最近の短編集のような手抜き感がない。じゃあ、どんだけ面白いのかというと、基本的には思弁的な男が家の中で野菜炒め作って写真を撮るだけ、要するにいつもの作品と同様、色々述べたけど結局は何もないよ、みたいな作品なので、まあ町田康初心者は、先述の二作あたりを読んで好悪を判断してから読みましょう。文章や言葉を舐めるように読んだが、それに耐えられる新しい日本語の表現のオンパレード。結局、題名の意味はわからなかったが。
読了日:06月17日 著者:町田 康
スナフキンの午睡スナフキンの午睡
〇ユートピア文学賞の佳作「愛しき日々」と翌年の入選作「りふれいん」という短編が2編と、そしてその後大賞を受賞した中編の表題作が収められた中短編集。この作家、最初の頃は、人情物を描いていたのですね。そして「スナフキンの午睡」でユーモア小説の作法が花開き、近著「雨宮経理課長の憂鬱」で炸裂したわけですね。しかし、これだけいい作品を描くのに、名前が売れていないのは、幸福の科学の文学賞で、幸福の科学出版だから?とにかく未読の方は、まず「雨宮経理課長の憂鬱」を読むべし。そして、今後の活躍に期待すべし!
読了日:06月16日 著者:麦生 郁
クリティカル進化(シンカー)論―「OL進化論」で学ぶ思考の技法クリティカル進化(シンカー)論―「OL進化論」で学ぶ思考の技法
◎◎道田泰司氏の「最強のクリィティカルシンキング・マップ」を入手。その前にと、10年ぶりくらいの再読。今あらためて読むと、中々難しいことが書いてあるし、それをわかりやすく伝えているのもわかるし、秋月りすがほとんど描き下ろしをしていないこともわかった(笑)。論理は非常にわかりやすく、でもそれをわかりやすいと支えているのは、やはり漫画の力かな。未読の方は是非読むべし。永続的な理論なので、色褪せないし、今後の思考方法の一助にもなる。
読了日:06月16日 著者:道田 泰司,宮元 博章,秋月 りす
地下の鳩地下の鳩
〇飲み屋街が題材なだけに、猥雑で切ない感じが拭えないが、まあわかったことは西加奈子は巧いということ。あのチーフ。生真面目で結局辞めちゃったけど、話の本筋には全くと言っていいほど影響力を持たないキャラの配置に技量が伺える。表題作と「タイムカプセル」という中編が2本収められた本書。2作品ともに舞台や登場人物が重なり、どこか頽廃的な生活を送っている人々を描いた文芸作品で、評価云々ではなく、西加奈子の本を図書館で見かけたら、とにかく借りるし、面白くないときは返せばいいわけで、評者はそのくらいには著者のファンである
読了日:06月14日 著者:西 加奈子
花のようする (一般書)花のようする (一般書)
◎久々の藤谷治による安定感のあるそこはか恋愛小説。色んな小説描いて、時々大外れを出す作家だけど、今回は安定度抜群。それなりに世の中がわかっている男女の恋愛なので、ハラハラもドギマギもしないところが、安心して読めるところ。投資世界の寵児と、若き時代は過ぎても、今でも安定して女優業を続けている二人の、出逢いから今まで。少し不思議な世界(予言的な力や夢の中のセールスマン)も織り交ぜて、少し人生哲学も織り交ぜて、結局のところ普通に楽しめる恋愛小説の出来上がりといったところ。最後は、バラと昔の映画のオンパレで終了。
読了日:06月14日 著者:藤谷治
田中慎弥の掌劇場田中慎弥の掌劇場
◎◎ほとんどの作品が3頁という、文芸の真剣勝負というしかない掌品集。雰囲気で読ませるもの、ちゃんとしたオチのあるもの、ニヤリとさせるもの、色んなタイプの作品が収められているが、共通して言えるのはどれも手抜きがなく、一つの言葉、一つの文章、一つの表現が全て大事に描かれている。「男たち」には笑ったし、後書きを読んで「怪物」が東日本大震災を扱った作品とわかったときには、唸るしかなかった。初めての田中慎弥。中々、ユーモア、想像力に溢れていることを知ったわけで、こりゃあ、デビュー作から読もうと思うのである。読むべし
読了日:06月12日 著者:田中 慎弥
公共事業が日本を救う (文春新書)公共事業が日本を救う (文春新書)
▲著者の講演をたまたま聴いて、主張の正当性は別にして、その斬って捨てるような主張に興味を持ったので読んでみたのだが・・・結局、傍証ばかりで、「公共事業が日本を救う」という主張が届かない。公共工事批判の批判までは理解できるのだが、どういう風に救うのかは、今一つ説得力がない。まあ、公共工事が救うかどうかは別にして、ITとか革新産業にお金を投じても末端は潤わず、やはり単純労働、肉体労働、そんなところにお金を落とさないと隅々までお金は行き渡らないので、公共工事は必要だが、それがコンクリートである必要はないと思う。
読了日:06月07日 著者:藤井 聡
あんぽん 孫正義伝あんぽん 孫正義伝
△著者の佐野眞一の「俺の孫正義伝は他の孫正義伝とは一味も二味も違うぜ」という趣向が鼻についてしょうがない。孫を取り巻く先祖家族、生まれ育った鳥栖時代など、溝を深く掘り下げてはいるが、読者が読みたいのは孫正義という生きざまであって、特に評者のように時代の寵児にナチュラルに臨む者にとって、本書は汲むところがない。結局、偉業なのかどうかの検証もされないし、存在の意義を掘り下げない。著者が、伝記の人物に迎合しない姿勢は悪くはないと思うが、読者の期待には迎合してほしいものである。東日本大震災への貢献まで描かれた近著
読了日:06月07日 著者:佐野 眞一
雨宮経理課長の憂鬱雨宮経理課長の憂鬱
◎◎滅茶苦茶面白い!2010年幸福の科学ユートピア文学賞特別賞受賞作。はっきり言って完璧な、完全無欠なユーモア小説。小物だけど、口だけは大物の雨宮経理課長のキャラも抜群。最初は鼻につく小物ぶりが、物語の最後には本当は大物なんじゃないのなんて思えてくるから不思議。その課長の部下の女性社員が主人公。気は強いけど、最後は結局他人に譲るような彼女のキャラも、婚活キャピキャピ娘も、新たに配属されてきたスーパーサラリーマンも、とにかく全てのキャラが立ちまくり。頁を繰る手が止まらないとは、この物語に相応しい。読むべし!
読了日:06月06日 著者:麦生 郁
仙台ぐらし仙台ぐらし
◎◎毎日を楽しく考え、心配性の自分を憂えるエッセイ集。「タクシーが多すぎる」などは、まるで永六輔が「タクシードライバー名語録」を編纂したような面白さ。後半は、仙台に住む著者が描いた、震災に思うことと、それを題材にした掌編。読みながら思ったのだけど、今描かれている多くの震災関係のフィクションやノンフィクションは、後世、読まれるには堪えられないんじゃないかな?ということ。今の日本人全員が体感したから、説明抜きで構成できるわけで、30年後、30歳の読者が読んでも地震のことは知っていても、描写がピンとこないかも。
読了日:06月03日 著者:伊坂 幸太郎
カフーを待ちわびて (宝島社文庫)カフーを待ちわびて (宝島社文庫)
◎◎「第一回日本ラブストーリー大賞」受賞作。いやあ、ハートウォーミングでワクワクする展開に読書中温かい涙もチラリの中年評者。シーンがいいんだよね。あのシーン、このシーン、切り撮れるようなシーンが。南の島で何気なく生活しているいい歳こいた主人公のところへ、今日からお世話になりますと白いワンピースの女性が転がり込んでくる・・・中年男性読者にはたまらない設定から入るも、そこにある人々の機微の描写が秀逸なのだなあ。カフーとは、果報、幸の意味。そして主人公の飼う犬の名前・・・いやあ、いい小説を読ませていただきました
読了日:06月02日 著者:原田 マハ
カッコウの卵は誰のものカッコウの卵は誰のもの
△ミステリーではない。ベタな推理小説である。まるで、二時間ドラマのようなベタな設定のオンパレード作品なのである。多分、このミスに応募しても選考で落とされるだろうなあ(笑)。まあ東野君もそんなの覚悟で、一応自分が題材にしたものを詰め込んでみたかったのだろう。赤ちゃん誘拐、実の親子じゃないことが判明、隠された病名・・・結局、理解不能なことも多かったし。死んだ母親の自殺の心的理由や、建設親子の考えや行動・・・真相を相手に見せられた写真で気付く手法なんて、古いなあ。松本清張か宮部みゆきしか使わないと思っていたけど
読了日:06月02日 著者:東野 圭吾

2012年6月の読書メーターまとめ詳細
読書メーター

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by kotodomo | 2012-07-01 09:43 | 読書メーター | Trackback | Comments(0)
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