1666年の英国の田舎を襲った疫病の顛末を、主人公女性の目を通して描かれただけの小説なのだが、小説とは何か、小説にできることは何か、そして作家という役割は何かを考えさせてくれる良書である。簡単に言えば、こんな題材で書いてもベストセラーになるわけではなく、作家とはベストセラーとは無縁な、業としての宿命を全うすべき存在なのである。常人が紡げない物語を紡ぎ、常人が繋げない物語を繋げるのである。主人公と牧師とその妻の宿命の物語。人間の強さと弱さと狂気と歓喜の物語。そして最後におまけの物語。良書読むべし読書人よ。