綿矢りさ姫の作品の中では、随分と黒い。形而上的な作品は他にもあるけれど、結構突き抜けていたり、描写に程よさがあり、黒さは感じない中で、本書は黒い。主人公の女子高生の清楚な感じの淡い恋心の抱き初めし書き出しから始まるのだが、ノアール的な狂気を孕みながら、好きな彼氏を、彼氏と付き合っている同級生を、破壊しようとしていくのは、これ黒いのである。微笑と嘘の愛情を滲ませ、自分の悪気を止められない、一言で転落物とも片付けられない不純な物語。まるで作者が、最近、黒い嶽本野ばら読みました、影響されました、そんな感じの黒さ。