「本のことども」by聖月

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2012年 09月 03日

2012年8月に読んだ本のことども

8月の読書メーター
読んだ本の数:12冊
読んだページ数:3754ページ
ナイス数:130ナイス

餓鬼道巡行餓鬼道巡行
〇町田康の作品には、町田ファンでなくても楽しめるものと、町田ファンだから楽しめるものと、町田ファンでも楽しめない作品と大きく3つにわけることができるが、本書は真ん中のやつ。別の言い方すると、町田ファンじゃない読者は、多分楽しめないでしょう。評者はファンなので、中々楽しめたけど、少し冗長な部分が無きにしも非ず。思弁的な町田節健在で、物語としては結局何も進まず、主人公のダダ漏れの思弁が、ただただ脳天気にグルグルと廻るばかり。中身は説明もつかないが、主人公がメシについて、あれこれ思弁するといえばいいのかな???
読了日:08月31日 著者:町田 康
検死審問ふたたび (創元推理文庫)検死審問ふたたび (創元推理文庫)
◎やはり、この作家の作品は面白い。ある物書きが焼死。果たして、自殺か事故か他殺かってな感じで検死審問が行われる。そこで証言する、なんとものんびりした人物たち。ミステリー的には、真相が後出しジャンケンみたいな形で提示されるのだが(最初で推理しても到底無理)、その後出しの内容がユーモラスで心地よいのである。1942年の作品なんだけど、現代でも問題なく通用するユーモアミステリーなのである。はっきり言って、登場人物たちはみんな馬鹿馬鹿しいのだけど、愛嬌があって憎めない人たちばかりなのである。暇な一日文庫を楽しめ!
読了日:08月28日 著者:パーシヴァル ワイルド
叫びと祈り (ミステリ・フロンティア)叫びと祈り (ミステリ・フロンティア)
▲2011年版このミス3位。世界を取材するジャーナリストが主人公のミステリー。なぜ、世界が舞台かというと、読者の日常じゃない設定じゃないと成り立たない蓋然性を論拠とするから・・・ということで、こういう種明かしものは、評者の年齢的にはもう向いていないのかも。トリック以外に読ませる物語がないとどうも飽き飽きなのである。ただ、冒頭の「砂漠を走る船の道」には騙されました。いわゆる〇〇トリックというやつで、子供でも人を殺すことはあるんじゃないのと思って読んでいたら・・・驚愕ではないのだけど、ああそういうことかと。
読了日:08月19日 著者:梓崎 優
にぎやかな天地 上にぎやかな天地 上
〇上巻では、意外に発酵食品を掘り下げることはなく、どちらかと言えば、発酵食品を題材に扱ったというより、阪神淡路大震災へのレクイエムのほうが強いかな。あと、この作者の本をまだ多くは読んでいないのだが、主人公が意外に優柔不断で人間らしい描かれ方をしていることに気付く。誰にも迷いはあるわけで、この作者はそういった逡巡もしっかり描きこんでいるといえるのじゃないかな。美食、謎の造本、親や祖母の秘密、いろんなことがてんこ盛りで、まさしく賑やかなんだけど、結局、題名のにぎやかの意味には触れずに下巻へ。発酵の賑やかさ?
読了日:08月15日 著者:宮本 輝
花のさくら通り花のさくら通り
▲最近の荻原浩、ちょっと冗漫で合わなくなって避けていたのだが、あの小鳩組の続編で、評価を見ると「早苗が可愛い」というので読んでみたが・・・未読の方。早苗は出てこないも一緒です。だから早苗には期待しないように。早苗が出てくるまで我慢して読もうって頑張っていたら、最後にちょこっと。でも、あれですなあ。その昔、小鳩組を読んだとき、自分の娘たち小さかったけど、本書ではまだ早苗8歳で、自分の娘たちは随分と大きくなってしまって隔世の感ありですね。小さな娘を持つ父親の気持ちで読めていたのが、そんな頃もあったに変化したよ
読了日:08月15日 著者:荻原 浩
神様のカルテ神様のカルテ
◎本屋大賞の2位には首肯。読みやすく、筋立ての姿勢がよい。なるほど、書店員が薦めたくなるわけだ。ただ、中身についての情報を全く知らなかったので、まずコミカルな文章であることにビックリ。それと、なんというか、重篤な病に侵されながらも、最後はどこか救いのある物語なんだろうなあと予想していたのだが、そんな話ではなかった(笑)。だって、題名がさあ。ひとつ気になったのが、作者が二日の出張期間を、数日と表現しているところ。現代語としては使用可能だけど、不特定多数を相手にする文章なら、ちょっと単位としては不可かなあ。
読了日:08月12日 著者:夏川 草介
将棋の子将棋の子
◎◎「聖の青春」に続いて10年ぶりの再読。奨励会を退会せざるを得なかった男の、その後の軌跡を辿るノンフィクション。しかし、羽生たちの世代と重なった、将棋の普通の天才たちは、本当に可哀そうな時代に遭遇したわけで、羽生が10勝すれば誰かが10敗を負うわけで、先崎が10勝すれば誰かが・・・。将棋の天才たちも、奨励会を退会すれば、社会人としては普通以下。バイト、転職、借金、放浪・・・。将棋を知らなくても胸を打つ世界。それを作者が透明な筆致で綴る。沁みる物語がここにある。読むべし、読むべしの一冊である。読むべし!
読了日:08月10日 著者:大崎 善生
ダブルトーンダブルトーン
▲時空トラベル物は、結局のところ主人公の視点からはデュアルワールドだし、その他大勢からしたらパラレルワールドなわけで、その主人公が時空の異なる人物のどちらの意識にも同化できるとなると、最終的にデュアルもパラレルも成り立たず、パラドックスが生じて、本書のような着地になり、読者は、その読後の立ち位置に違和感を感じざるを得ないのである。そういう意味で、作者ももう少し構成を練るべきだったかな。朝目覚めると、既婚子持ちの裕美か、独身貴族の由巳のどちらかの意識下にある主人公。二つのデュアルパラレルワールドで起こるお話
読了日:08月08日 著者:梶尾 真治
クエーサーと13番目の柱クエーサーと13番目の柱
▲自分が初めて読んだ阿部作品『インディヴィジュアル・プロジェクション』の頃と比較したとき、作風も変わってきているし、何より世の中が変わってきているわけで、当時のモチーフはサリンだ拉致だなんてアナログだったのだけど、今回の作品はスマホにヴォーカロイド、またスレッドによるリアルな進行なんて、当時では考えられなかった小道具が作り上げるオタクな世界なのである。パパラッチに追いかけられたプリンセスを下敷きに、私的芸能情報収集に萌える金持ちオタクと、それに雇われる主人公たちの一部始終。結局、最後まで入り込めなかった感
読了日:08月07日 著者:阿部 和重
夜の国のクーパー夜の国のクーパー
△長過ぎて、結局中身がない。まあ寓話というものは、えてしてそういうものなんだろうけど、とにかく、読書中が退屈で、ついPCを触ったり、つい飲み物を用意したりと、頁を繰る手が止まらないいつもの伊坂作品とはまったく逆の行動をとってしまうのである。とにかく最後まで話が展開せず、伏線を上手に置いているのを読まされているのかな?なんて思っていたら、意外に伏線の数なんて少なく、なんざんしょ?ただ、あとがきで『同時代ゲーム』に触れているのは嬉しかったかな。自分は大江作品はあまり読んでいないが、伊坂に影響を与えたんだなあと
読了日:08月07日 著者:伊坂 幸太郎
ひらいてひらいて
〇綿矢りさ姫の作品の中では、随分と黒い。形而上的な作品は他にもあるけれど、結構突き抜けていたり、描写に程よさがあり、黒さは感じない中で、本書は黒い。主人公の女子高生の清楚な感じの淡い恋心の抱き初めし書き出しから始まるのだが、ノアール的な狂気を孕みながら、好きな彼氏を、彼氏と付き合っている同級生を、破壊しようとしていくのは、これ黒いのである。微笑と嘘の愛情を滲ませ、自分の悪気を止められない、一言で転落物とも片付けられない不純な物語。まるで作者が、最近、黒い嶽本野ばら読みました、影響されました、そんな感じの黒
読了日:08月03日 著者:綿矢 りさ
英雄はそこにいる英雄はそこにいる
○島田雅彦には珍しい現代エンタメ小説。それぞれ別件とみられていた未解決事件。その裏側には共通の目的があり、そしてその犯人のDNAは現代日本人にはありえないような種類であった!なんて、大風呂敷を広げて、それが物語の本筋に関係ないのが可笑しい。広げた風呂敷を畳めない、前半の設定だけわくわくさせる本宮ひろ志みたいな感じ。あと人の心の向こう側を読める少年も探偵役の一人。これも設定としては面白いのだが、話の辻褄を合わせるための役目でしかないのが可笑しい。でも、このミス的読者に読ませれば、ランクインもおかしくない作品
読了日:08月03日 著者:島田 雅彦

2012年8月の読書メーターまとめ詳細
読書メーター

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by kotodomo | 2012-09-03 18:24 | 読書メーター | Trackback | Comments(0)
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