2005年 03月 04日
旅歌さんの「Good Day to Die」の欄外にあるちょっとした感想記事が気になって手に取った本書である。それ以外は全然情報なし。どんな本なのかも深く考えず、題名や巻末の大石英司作品群の題名を眺めて、殺伐とした冒険物なのかな?くらいのつもりで読み始めたのだが・・・これが拾い物!読んでよかった(^O^)/あなたも読むべし(^.^)。 比べるにはテイストが余りにも違いすぎるのだが、大まかな設定だけを書くと、みんなあの作品を想起するんじゃないだろうか。その設定とは、機体の残骸は見つからなかった10年前の飛行機事故の乗客68名とその乗組員が、突如出現し羽田空港に着陸する。時は8月12日。しかし、その突然の帰還を予想していた人物によれば、8月15日にはその全員がまた別の時空へと戻っていくという。たった3泊4日の懐かしい邂逅。そう、設定だけをとれば ○「いま、会いにゆきます」市川拓司を彷彿とさせるが、ところがところが本書の中身は濃くて多面的でミステリーでラブロマンスで親子愛でクライムで・・・読んでる途中は、こりゃ面白い!◎だべ!と思っていた評者も、中盤のコミカルタッチでニヤリとし、ラストのハートウォームな筆致で・・・涙を流したとなれば、これはもう◎◎なのである。序盤は○、中盤は◎、最後には◎◎。そこのあなた、読むべし。最後の最後でふんわりとした暖かさに包まれたいあなた・・・読むべし、読むべし、べし、べし、べし!なのである。 評者は、月に一回程度の頻度で家族の住む鹿児島と、出稼ぎ先の東京とを往復しているのだが、最近どうも臆病になって、乗る都度に益々飛行機が怖くなってきている。“気流の関係で当機は揺れておりますが、当機の飛行に問題は・・・”なんてアナウンスがよくあるのだが、こんなにジェットコースターみたいにガクンガクンで、信じれというのは無理。半分信じてはいるが、半分妄想が・・・怖い!だって、このアナウンスしているオナゴ、多分本当に異常な状態のときも、お客を落ち着かせるために、同じことしか言わないだろうし、今がその状態なのかどうなのか、だからわからなくて怖いのである。そう思いながらも毎回無事に着陸しているから今があるのだが・・・で、またしても無事に鹿児島に到着したら、どうも様子がおかしい。結論から言うと、自分が乗ったはずの時期から10年の歳月が過ぎており、評者の嫁さんと二人の娘は10年前に評者が死んだものと思っていたが、ただある教授が発表した理論により、もしかしたら10年後の帰還がとも心のどこかで思っていたらしい。お互いに、この邂逅は3泊4日とわかっている評者と嫁さんと二人の娘。その期間をどう過ごすことだろう。嫁さんが10歳老けているのは別にしても、上の娘は20歳、下の娘も高校二年生。みんなでドライブかな。温泉なんか行って思い出作るのが精一杯かもね。これまでの10年間の話聞いてあげて、食事をして、景色を見て、思い出作って、そいでもってドライブの運転手は免許をとった上の娘だったりして・・・最後の夜は成人した娘との最初で最後の乾杯。そのぐらいでいいや。それで幸せだ(^.^)うん、うん。おーい、家族(^O^)/そのくらいの過ごし方でいいからなあ(^O^)/ 本書の特長として、タイムパラドックス物なのに、時空を飛び越えた人々の困惑に筆をあまり割いていないということがある。これは珍しい。珍しいがそこがいい。上手く書いてあればいいが、いかにも想像通りの展開を読まされるよりは、もっと別の描写、新たなる展開のほうに筆を割いているほうが、結果的にワクワクして読めるのである。そして、どういう現象が起こるのかも最初で明らかにされているので、安心して読めるのである。安心して読めるのだが・・・泣いた。涙が頬を伝った。良い読書であった。読むべし、である。(20050304) ※図書館本だったので、評者の借りた本には表紙絵のようなコピーつき帯がついていなかったよ(書評No485) 書評一覧 ↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら
by kotodomo
| 2005-03-04 21:56
| 書評
|
Trackback(4)
|
Comments(4)
Tracked
from コバコバ日記
at 2005-03-09 22:29
Tracked
from Good Day to ..
at 2005-03-11 13:17
Tracked
from でこぽんの読書日記
at 2005-04-18 02:51
タイトル : [読書]神はサイコロを振らない/大石英司
ISBN:4120035948:detail★★★★ 「本のことども」聖月さんの書評を拝見したらどうしても読みたくなって読んだ作品です。 http://kotodomo.exblog.jp/2180975 このカバー付きのでっかい画像にやられちゃいました。 この一人ひとりの写真がドラマです。 事故で亡くなったと思っていた人が十年ぶり還ってきます。私ならどうするだろう。混乱して恨み辛みを言うかもしれない。泣き喚くかもしれない。 本書の人々はどうだったのだろう。 1994年8月15日に消息を絶った旅客機が...... more
Tracked
from IN MY BOOK b..
at 2006-05-02 01:06
タイトル : ■ 神はサイコロを振らない 大石英司
神はサイコロを振らない大石 英司 中央公論新社 2004-12by G-Tools , 2006/05/01 かつて忽然と消息を絶った旅客機が、今、還ってきた。しかし68名の乗員乗客にとって、時計の針は10年前を指したまま。歳月を超えて実現した奇跡の再会、そして旅立ちの物語。 「BOOK」データベースより 連続ドラマを見たあとで再読しました。でも初読の時には、そんなに印象が強くありませんでした。 ドラマを見たのは、ピアニストの役をやった成海璃子ちゃんの大ファンだから。原作ではピ...... more
Commented
by
すみこた
at 2005-03-05 12:52
x
わしもこれはなかなか良かったです。ちょっとバタバタしすぎな感もありましたが、ドラマ的というか映画的ですね。
0
中盤、そういう意味で◎かなあと思っていたんですけどね。
最後のドラマシーンはやはり◎◎だったのです。泣いたのです。42歳です。
聖月さん、コメントとトラックバックありがとうございました。
途中が同じパターンで話が展開するので、少し飽きてしまって星の数を減らしましたが、最後はやっぱりジーンときてやられちゃいましたね。 それに一番受けたのは、おたくの婦警です。あの記述には眼が点になって思わず笑っちゃいましたよ。大石さん、詳しいですよね(笑)。
あのオネエチャンの登場で、話に香辛料がふりかかりましたね。(^.^)
うんうん、最初はこれってオモロない話かもなんて印象あったんですが、オネエチャンの登場から最後のほうにかけて、素敵な流れになってよかったですね。 でこぽんさんも詳しいみたいで(^.^) |
アバウト
カテゴリ
ことどもカテゴリ
意外と書評が揃っているかもしれない「作家のことども」
ポール・アルテのことども アゴタ・クリストフのことども ジェフリー・ディーヴァーのことども ロバート・B・パーカーのことども アントニイ・バークリーのことども レジナルド・ヒルのことども ジョー・R・ランズデールのことども デニス・レヘインのことども パーシヴァル・ワイルドのことども 阿部和重のことども 荒山徹のことども 飯嶋和一のことども 五十嵐貴久のことども 伊坂幸太郎のことども 伊集院静『海峡』三部作のことども 絲山秋子のことども 稲見一良のことども 逢坂剛のことども 大崎善生のことども 小川洋子のことども 荻原浩のことども 奥泉光のことども 奥田英朗のことども 香納諒一のことども 北森鴻:冬狐堂シリーズのことども 京極夏彦のことども 桐野夏生のことども 久坂部羊のことども 黒川博行・疫病神シリーズのことども 古処誠二(大戦末期物)のことども 朔立木のことども さくら剛のことども 佐藤正午のことども 沢井鯨のことども 柴田よしきのことども 島田荘司のことども 清水義範のことども 殊能将之のことども 翔田寛のことども 白石一文のことども 真保裕一のことども 瀬尾まいこのことども 高村薫のことども 嶽本野ばらのことども 恒川光太郎のことども 長嶋有のことども 西加奈子のことども 野沢尚:龍時のことども ハセベバクシンオー様のことども 初野晴のことども 花村萬月のことども 原りょうのことども 東野圭吾のことども 樋口有介のことども 深町秋生のことども 『深町秋生の新人日記』リンク 藤谷治のことども 藤原伊織のことども 古川日出男のことども 舞城王太郎のことども 町田康のことども 道田泰司大先生のクリシンなことども 三羽省吾のことども 村上春樹のことども 室積光のことども 森絵都:DIVEのことなど 森巣博のことども 森雅裕のことども 横山秀夫のことども 米村圭伍のことども 綿矢りさ姫のことども このミス大賞のことども ノンフィクションのことども その他全書評一覧 最新のコメント
最新のトラックバック
|
ファン申請 |
||