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「本のことども」by聖月

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2005年 03月 20日

〇「斜め屋敷の犯罪」 島田荘司 講談社文庫 650円 1988/7

〇「斜め屋敷の犯罪」 島田荘司 講談社文庫 650円 1988/7_b0037682_15514853.jpg 出版社名と価格があやふやで不明なのは、なんでかいな?手元に島田荘司著作リストまであるのに、なんでかいな?実は、評者は本書を鹿児島県立図書館で借りてきたのだが、書庫の奥からリクエストに答えて出てきた本書『斜め屋敷の犯罪』は、1988年出版の講談社ハードカバーであった。こんな装丁の本、今じゃどこにも売ってないよ、みたいな、子供騙しのような表紙絵。

 多分、島田荘司の『斜め屋敷の犯罪』を読んだよ、という方でも、あまりこの本は見かけたことがないのではと推察する。古書店を廻る評者も、へえ、こんな装丁の島田荘司の本があったのかと、びっくらこいたのである。何がびっくらこいたかというと、やはり表紙絵で、小学校の図書館に置いてあった怪人二十面相の本などを連想させるような安っぽい絵なのである。

 まあ、それはさておき、本書『斜め屋敷の犯罪』の初出年は1982年講談社ノベルスから。21年前の作品である。おう、評者がハタチのときだ。その後、先述の通り、ハードカバーで出たり、光文社文庫になったり、講談社文庫になったりと、お座敷からお呼びの止まない芸者みたいな状態なのである。まあ、一番ポピュラーな講談社文庫1992/7出版619円あたりを、古書店で100円以下で購入するのがベターかと思う。
読みたいならね(笑)。読めとはいわないからね。

 評者の好きくない本格推理物である。密室物である。題名の『斜め屋敷の犯罪』から、どこか山の傾斜地に建てられた屋敷で、傾斜に沿って斜めに建っていることから「斜め屋敷」と呼ばれている、そんな場所での事件かと想像していた評者。母屋と離れが、その位置関係から斜めに廊下が渡してあり、そんなことから「斜め屋敷」と呼ばれている、そんな場所での事件かと想像していた評者。

 ところが、本書の屋敷は、床が斜めになるように建てられた少し大きなペンションくらいの建物なのである。床を斜めに建てるな!と評者は主張したい。そんなもの建てたら、床が斜めなのをトリックに利用した犯罪が起こるのは必然だ!と評者は主張したい。

 おまけに、部屋数が10を超えるこのお屋敷には、外側からしか出入りできない部屋が2つある。要するに家の玄関から入っても、辿り着けない部屋があるのだ。その部屋に行くには、一旦屋敷の外へ出てからでないと行くことができないのである。そんな部屋作るな!と評者は主張したい。そんな部屋作ると密室殺人が起きるのは必然だ!と評者は主張したい。だから、本格は好きくないのだ。

 場所は北海道、周りには何もないところに斜め屋敷は建つ。クリスマスのお呼ばれで、登場人物たちが集う。周囲は雪。雪に閉ざされた山荘事件みたいな雰囲気。ここで島田荘司は、前作『占星術殺人事件』でもこだわった雪の上の足跡トリックにまたしても手をつける。

 しつこい。とにかく、複数の殺人が起きて、誰が犯人だ?というお話なのである。評者には、トリックはわからず(面倒なので考えもしなかった)とも、犯人はわかってしまい、また、最初の方で出てくる謎の絵も、見たまんま"なんじゃ、○○の絵じゃん"と思っていたら結局その通りで、まったくもって面白くない。

 じゃあ、なぜ評価が○と意外にも高評価なのかというと、今回の御手洗潔の言動はなかなか楽しい。このノリは、バークリイ書くところの探偵シェリンガムと似ている。陽気で饒舌、脳天気で煩わしいくらいだ。加えて、全体の描写もライトでコミカルで、筆の遊びも面白い部分が散見され、読んでいて嫌じゃないので評価○。

 しかし、あれだ。読書人には読み尽くされた感のある島田荘司を、今ごろ古い作品引っ張り出して読んでいる最近の評者は、島田荘司未読の方の羅針盤と言ってもいいのではないだろうか(笑)。でも、順繰り読んでいくのが面倒になってきたので…次回の島田作品を予告しておくと『セント・ニコラスの、ダイヤモンドの靴』である、多分。(20030815)

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by kotodomo | 2005-03-20 20:47 | 書評 | Trackback(3) | Comments(0)
Tracked from AOCHAN-Blog at 2006-09-21 13:04
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