2005年 03月 20日
一応、定規を充ててみたのだが、大体15センチ×15センチ、奥行き2センチといったところか。いや、この本の大きさの話。小さい子供のためのハードカバー絵本とかがちょっと厚めといったところかな。内容がクリスマス絡み。出版月がクリスマス絡み。まあ、クリスマス装丁といったとこか。本好きの彼女に、綺麗に包装して、リボン結んで、その大きさからしてチョコかしら?その重さから一体なんなのかしら?と思わせておいて、開けてみたら意外にも本、へえこんな大きさの本あったんだ、おまけに私の好きな島田荘司だわ、わあ、嬉しい、チュッって、メリー・クリスマス。 季刊『島田荘司03』に掲載された『セント・ニコラスの、ダイヤモンドの靴』に、書き下ろしの枕話「シアルヴィ館のクリスマス」を付け足しての二編の話からなるが、「シアルヴィ館~」のほうは、本編導入のための部分なので、ひとつの作品の二つの章と見なしたほうがよいであろう。 話は、御手洗潔の昔の事件の回顧録。既評『占星術殺人事件』の直後のお話。占星術の事件で少し評判になった御手洗の元へ、人目顔を拝もうと野次馬が絶えない時期に老女が尋ねてくる。事件の依頼かと思って聴いている御手洗なのだが、お喋り好きな老女、しばらく無駄話をしたら"あら、いけない、もうこんな時間、行かなきゃ"と席を立とうとする。どうやら、この老女も顔を拝みに来るのが目的だったらしい。去ろうとする老女に御手洗が言う。"今の話。あなたは世間話だと思っておられるようですが、それれっきとした事件が絡んでいますよ" ミステリーとしては日常の謎を題材にした部類である。日常の中に事件。北村薫から始まり、若竹七海等女流作家も踏襲し、最近の秀作は加納朋子『螺旋階段のアリス』など、その系譜の延長線上にあるような題材である。しかし、日常の謎であろうが、刑事事件の謎であろうが、面白いかどうかは作者の腕。そういう意味では、まあそこそこの作品である。しかし…。 しかし、後半にかけて、ある少女を中心に話が進むが、この部分の筋は◎かな。評者は、娘二人の親ということもあって、愛らしい少女が出てくると感情移入して堪らない。この少女の両親がとんでもないやつ等なのだ。少女に暴力振るうとか、そんな親ではない。御手洗が少女を遊園地に連れ出したりするのだが、遊園地は初めてだという。子供の楽しみ、子供との触れ合いに全然気を配らない駄目親なのである。そういう話に、評者は少女を可愛そうに思い、自分だったらもっともっといろんなところに連れていってあげるのに、と思ってしまうのはいいが、結局、本ばかり読んで、休みの朝から一人原稿書いている自分は何なのだ?と自家撞着。 本書『セント・ニコラスの、ダイヤモンドの靴』は、御手洗潔の人情話である。御手洗自身は情けとかに特に固執して行動しているようではないのだが、今回は謎の解き方に人情まで絡んでいるのは事実で、へえ、御手洗ってこういう心の部分も持ち合わせているんだと、感心した評者なのであった。御手洗潔の人情話に興味あるなら読みの一冊。(20030824) 書評一覧 ↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら
by kotodomo
| 2005-03-20 21:09
| 書評
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Comments(2)
Tracked
from アン・バランス・ダイアリー
at 2005-03-27 20:40
タイトル : 『セント・ニコラスのダイヤモンドの靴』 島田荘司 原書房
セント・ニコラスの、ダイヤモンドの靴 この本、何年か前に買っていたのですが、何故か積んだままになっていました。クリスマスの時期に読まねば!と思いつつ、いざその時期になるといろいろ忙しくてタイミングを失い・・・ということを繰り返していたようで。こん... more
聖月さんはこれ、後半が◎なんですね~
御手洗さんの優しさが感じられるいい話でした。 私はやっぱり御手洗&石岡コンビが好きです~
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数字錠の人情話は、そんなのもあり、程度の受け止め方でしたが、やはり少女と大人の関係が出てくると放っておけない。
読書する側の環境や心の中っていうのは、やはり受け止め方に影響しますね。 そういう意味で、『ナラタージュ』なんか女性に評判いいのに、薩摩男児には全然わからんかったでゴワス(笑)。 |
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