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「本のことども」by聖月

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2005年 03月 25日

▲「スプートニクの恋人」 村上春樹 講談社文庫 600円 1999/4

▲「スプートニクの恋人」 村上春樹 講談社文庫 600円 1999/4_b0037682_12561329.jpg 『海辺のカフカ』で村上春樹を初めて読んでその語り口に新鮮さを感じ、続いて『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の物語性に引き込まれラストの切なさに感じ入り、デビュー作『風の歌を聴け』でイカシタ小説に痺れた評者なのである。少し村上春樹情報なるものがわかってくると、『ノルウェイの森』は好悪がわかれているという。それを知り"自分だったら、多分すべての村上春樹の作品が気に入るだろう。多分『ノルウェイの森』も"と思っていたのだが、本書『スプートニクの恋人』を読んで、その考えが少し変わってしまった。本書には村上春樹が不在である。あまり村上春樹を知っているといえるほどの段階ではないが、少なくとも評者の求めている村上春樹はここには存在しないのである。同じようなことが『ノルウェイの森』でもいえるのかよくわからないが。

 デビュー作を読んだあと、二作目に行かず本書を手にとったのは、扉を開けたところにスプートニクと一緒に空の旅に出発したライカ犬のことが書いてあったからである。昔観た映画で、少年が空へ飛び立ったまま回収されることのなかったライカ犬に思いを馳せる部分があり、それが非常に印象に残っていたので興味を動かされたのである。しかし、ライカ犬の記述は以降出てこず、評者の好きくない同性が同性を好きになる話が展開していく。評者は同性が同性を好きになる題材は好きくないのである。認めないという訳ではなく、小説たちは材料としての同性愛を簡単に使いすぎていて、評者は飽き飽きしているのである。世の中の同性愛者の比率より、小説たちの中での同性愛者の比率は異様に高いような気がするのである。

 若い女性が、熟年の女性に恋をする。僕は若い女性のことが好きなのだが、じっと見守る。二人の女性はいつか仕事のパートナーとなっていくのだが、商用先の外国の地で事件が起き、僕はその地に赴かざるをえない状況に。他に僕の仕事が学校の先生であったり、その教え子の母親と関係があったりもする、そんな物語なのである。あまりにも物語性を押し殺し、形而上的な文学寄りの姿勢で"こちら"と"あちら"を書こうとする本書には、評者が好きな村上春樹が存在しない。そういう意味で『海辺のカフカ』で村上春樹が戻ってきたことは、従来からのファンにとっては嬉しいことであったのであろう。

ちなみに、本書の単行本のほうは、1999/7発行である。(20031112)

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by kotodomo | 2005-03-25 12:57 | 書評 | Trackback(2) | Comments(0)
Tracked from Carpe Diem at 2006-04-03 23:03
タイトル : スプートニクの恋人
久しぶりの村上春樹作品ですね。 周りからの意見はあまり良くないものでしたが・・・ 自分的には可も不可もない作品でしたね。 ちょっと「ノルウェイの森」にも似ていた感じでもあり、また「海辺のカフカ」の感じもあって、時期的にはそれらの間に出された作....... more
Tracked from "やぎっちょ"のベストブ.. at 2008-02-17 17:34
タイトル : スプートニクの恋人 村上春樹
スプートニクの恋人 ■やぎっちょ書評 以前のお仕事の仲間と数年ぶりに顔合わせをして飲みに行きました。なんか楽しかった。それで帰る時になってそのうちの1人が「村上春樹の話をしたかったなぁ」と言ってびっくり。まずこのブログ読んでいることにびっくり。 んで、その...... more


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