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「本のことども」by聖月

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2014年 12月 01日

2014年11月に読んだ本のことども

2014年11月の読書メーター
読んだ本の数:6冊
読んだページ数:2082ページ
ナイス数:118ナイス

私を知らないで (集英社文庫)私を知らないで (集英社文庫)感想
◎◎「今日は楽しかった。でも、あなたのことは嫌い。これ以上私を知らないで」そんなことを言われるような恋もしてみたいものだが、主人公たちは中学生なのに、そんな恋をやってのける。文章はライトな感じでも、芯はハードボイルド。軽い論理の裏側には、作者が周到に咀嚼した物事の理が垣間見えて、とにかく読んでいて楽しいのである。転校の多い主人公少年は、転入先の学校の空気を読みながら、馴染まないように馴染んでいく。そこへ、空気を読めない新たな転校生が登場。そして、クラスで浮いている少女の謎。チープな設定ながら読ませるのだ。
読了日:11月21日 著者:白河三兎
沈むフランシス沈むフランシス感想
ただの恋愛小説でした。前作「火山のふもとで」を読んだとき、こんな小説を描けるのは凄いと感じたが、本作は、こんな小説なら自分も書けそうな(実際は書けませんが)そんな感じであった。最新作に期待しましょう。
読了日:11月13日 著者:松家仁之
火山のふもとで火山のふもとで感想
◎◎気品が漂う静かな小説。普通デビュー作というのは素人が書いたプロ一歩手前の作品と位置付けられるのだが、編集者だった作者の経歴から考えると、最初から手練れの作品。建築家としての自分を作った最初の一年を描き、書かれなかった後の30年後と呼応する。家具、音楽、乗り物、食事、どれを取っても洗練された、避暑地での出来事。設計事務所ごと、夏は避暑地に移動するのである。この作家。村上春樹読者かな?とも思うが、編集者なので多くの作風を吸収してきた結果なのでしょう。遅咲きのデビューながら、追うべき作家が一人増えました。
読了日:11月13日 著者:松家仁之
エヴリシング・フロウズエヴリシング・フロウズ感想
◎◎いやあ、巧くて読ませる。350頁足らずの物語なのだが、操られる日本語を細かく読んでしまうので、頁を繰る手がいい意味で遅くなる。この作家の作品は全部読まねばである。中三の主人公少年の、一年間、交友関係を通しての普通の風景を描いたものだが、中三と言ってもそこは逆に細やかな心の動きがあるわけで、そこの微妙な揺れの描き方が抜群なのである。こう言った方がいいかと思いながら言葉を飲みこむ思春期。反面、ユーモア小説でもある。知りたいことはすべて学校新聞に書いてあったり、イケアが面白い使われ方をしていたり。出会い本。
読了日:11月9日 著者:津村記久子
ハリー・クバート事件 下ハリー・クバート事件 下感想
◎◎最後まで飽きさせない面白さ。でも、最終盤は少しごちゃごちゃしたかな。上巻で、描写の薄い謎の人物の正体は、薄々気づいてはいたのだが、それが事件とどう絡むのか、真犯人は誰なのか。結局、被害にあった少女は純心かそうでなかったのか。しかしなあ、上巻の感想でも書いたが、主人公の電話向こうのママの会話が快調。あと、2回くらい主人公とのやりとりを盛り込んでほしかったかな。今年の本で一番面白い海外物はこれで決まり。色んなジャンルで1位にふさわしい本なんだけど、読者数はAmazonでもメーターでも多くないのが残念です。
読了日:11月3日 著者:ジョエル・ディケール
ハリー・クバート事件 上ハリー・クバート事件 上感想
◎◎読んでいて滅茶苦茶楽しい。ミステリーとしての面白さ以外にも、人物たちのキャラが紡がれ、話の展開が進まなくても楽しくて仕方ない。特に、主人公のおせっかいな母親。電話の向こう側にしか存在しないのだが、こうるさくても憎めない、ワハハは母親である。刑事も嫌な奴なんだけど、この人も憎めない。話としては、失踪少女の死体が、作家の恩師の庭で掘り返され、その身の潔白を主人公が晴らそうという、単純な構造なんだけど。いやはや、傑作。作家が作家を描く作品は、数多く読んできたが、これが一番面白い。題名が、少しイマイチだけど。
読了日:11月2日 著者:ジョエル・ディケール

読書メーター


by kotodomo | 2014-12-01 12:06 | 読書メーター


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