2015年 08月 02日
2015年7月の読書メーター 読んだ本の数:5冊 読んだページ数:1826ページ ナイス数:75ナイス ポトスライムの舟の感想 〇「十二月の窓辺」は、面白く可笑しく巧い。芥川賞を受賞した「ポトスライムの舟」はぬるい。その後の津村作品に親しんだ人には、瑞々しい感性の不在に残念だろう。でも、先に、その残念作品から読み、「十二月の窓辺」を読んだら、読書としては満足じゃないかな。話は変わるが、ポトスライムって、メタルスライムとかそういうのを想像して、中々ダメージは与えられないけど、会心の一撃なんかでスパーンといくと、経験値たくさんもらえるし、とかドラクエのことに想像が行ったのは、私だけじゃないだろう。私だけかな。キングスライムとかさあ。 読了日:7月21日 著者:津村記久子 淵の王の感想 ◎◎舞城は天才である。でも、その紡ぐ先が狂気と紙一重なので、読み手の評価も分かれそう。でも、例えば本書に収められた中編3編、舞城以外には描けないのは明らかで、反射神経だけで積み重ねて、畳みかけていく。最初は、語り手の正体は何?と訝りながらも、最後には、もうそんなのもどうでもよくなって、最後の話なんか、猫の死体の意味も置いてきぼりを喰らって、それでも全体傑作なのだから、どうでもよくなってしまう。ひとつだけ注文。私は鹿児島在住である。桜島の火山灰の話や、それに対する人々の会話は、外国の教科書に書かれた日本だ。 読了日:7月20日 著者:舞城王太郎 流の感想 〇この人の同様の作品なら「さよなら的レボリューション」のほうが、ずっと面白かったかな。本作は、良くも悪くも大人しくまとまっていて、まあ、それが直木賞の受賞へも繋がったんだろうけど。中森明菜の「セカンドラブ」。よく流れていたし、歌詞も少しは覚えていたんだけど、その意味を解釈しようと思ったことはなく、そういう意味の歌だったことを、初めて知りました。台湾を主な舞台に、日本、中国も多少、そして色んな事件が起こるんだけど、それらはすべて流れのなかに消えていく。消えてしまわないのは、爺ちゃん殺しと、ファーストラブ。 読了日:7月19日 著者:東山彰良 ウエストウイングの感想 ◎◎この作家、二作目の読書だけど巧いなあ。この作家の作品、全部読まなきゃと思ってしまう。前回読んだのも少年が出てくる話。今回も少年が出てくるということで手にとったのだが、少年のパート、OLのパート、ダメな感じのする男性会社員のパート、3視点から描かれる、あるビルの西棟の物語。塾も入っていれば、事務所もあれば、喫茶もあれば、居酒屋もあるという、どこにでもありそうなビル。そこの空き部屋に出入りする三人。お互いの痕跡は感じるが、出入りする時間帯が別なのでどんな人が出入りしているのかはわからない。そして大雨に。 読了日:7月10日 著者:津村記久子 カクテル・ウェイトレス (新潮文庫)の感想 1977年に亡くなった作家の埋もれた作品。わかりやすく面白いじゃないか。訳者がリメイクしてくれた、古い題材の映画を観るようで。この作家の代表作は「郵便配達は二度ベルを鳴らす」。とはまた別の風味の読み物で、若い未亡人が、カクテルバー勤務から大邸宅で暮らすことになるまでの、その勢いある流れのお話。ただ、読者を選ぶキーワードがあって、途中で出てくる薬の名前を知っているか否かで、結末の見え方は違ってくる。自分の場合、水俣病、ヒ素ミルク、そんな言葉と同じ時期に吸収した言葉である。サリドマイド。未来は誰もわからない。 読了日:7月4日 著者:ジェームズ・M.ケイン 読書メーター
by kotodomo
| 2015-08-02 06:51
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