2005年 04月 17日
今年2005年を終わったときに、本書『告白』は振り返って語られる作品であり、町田康を語るとき必ず持ち出されるべき時局的な集大成であり、文壇のこれまでとこれからを語るとき未来永劫語り継がれるべきビートルズナンバーの位置を占めるであろう。町田康が肌に合う人も合わぬ人も読んでおくべし!べし、べし、べし! 本書を読みながらずっと付きまとっていた感覚は、淋しさであり、物悲しさである。読みながら昔話『泣いた赤鬼』を思い出した評者なのである。心優しい赤鬼は、近所の童子たちに遊びにきてもらいたいのに、鬼は怖ろし乱暴者と思われ誤解され、“お茶とお菓子を準備して待っています♪”と音符つきの立て札を立てても遊びにきてもらえず、淋しく切ない。友人の青鬼が、演技すべしと童子たちに乱暴働き、合図よろしく正義の味方赤鬼登場で、赤鬼君の信頼度はグングン上昇、童子たちが遊びにくる環境に。毎日楽しく過ごしましたとさとなればよかったのだけど、友人の青鬼君の音沙汰がプツリ。訪ねてみれば置手紙“僕とキミが仲良くしているのを童子たちが見たら、バレバレやんけやんけやんけ。だから僕はこの地を去ることにしたのさ。バイチャ”結局、最後まで切なく淋しく物悲しい物語なのである。このお話から教訓を得ようとすれば、作者が伝承者が何を言いたかったのかと深読みすれば、読み手はそこでパラドックス。 だから本書『告白』も、じゃあ作者はなんでこれを描いたのか、何を表現したかったのかと考えても無意味なのである。十人斬りの必然性を自らの筆で生み出し、自己の持つ感覚を発露してみせたかっただけなのさ、そんなところで留めるべしなのである。本書と同様の位置を占める阿部和重の大作◎◎『シンセミア』も然り。描かれるために描かれた小説には、その意味するところなど最早無意味という意味しか存在しないのである。 粗筋は書かない。ただ、今年はこの本を読んでおかないと語れないとだけ言っておこう。町田康ファンは読むべし、読むべし、べし、べし、べし。そうでない方も読んでおくべし、べし、べし、べし。(20050417) ※このへんで、「町田康のことども」を作らななあ。(書評No509) 書評一覧 ↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら
by kotodomo
| 2005-04-17 11:55
| 書評
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Comments(22)
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from いっちゃんの日々
at 2005-04-20 00:03
タイトル : 朝日新聞「文芸3点」奥泉光
朝日の夕刊に月1で連載されいている文芸時評「文芸3点」、今月の評者の一人は奥泉さんでした。 「物語と衝突 言葉の推進力」との見出しを附された記事を、奥泉さんは以下のように書き出しています。(改行挿入はボク。本来は以下でひとつの段落です。) >> 一篇の小説には、これを推進していく、つまり前へ前へと進めていく力があって、この力には様々なものが知られている。代表的なものは物語=ストーリーであって、つまり話それ自体が時間軸に沿って前へ進む。しかし物語がそのまま小説であるわけではない。 「泣...... more
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from 読書日記★PNU屋★出張版
at 2005-04-25 10:04
タイトル : [2005.3]町田康「告白」
告白中央公論新社¥1,995 河内十人斬りを起こすに至った熊太郎の人生を幼少より丹念に 書き起こす!内面描写がリアルかつすさまじい衝撃の文学。 かのクラシックミステリ「八つ墓村」の元ネタである 岡山三十人殺しは知っていたけれど、 寡聞にして河内十人斬りは知らぬ私であった。 こんな事件が実在し、河内音頭にまで唄われているとは。 なんだかマザー・グーズになったリジー・ボーデン事件みたいね。 この河内十人斬り、動機だけから見ると金と女という まことに陳腐なありふれた理由で起こったらしいのだが、...... more
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from 日々のちょろいも
at 2005-05-20 22:40
タイトル : 『告白』読了。
しばらく感想を書くパワーが燃え尽きてしまって、溜まるに任せていたら10日も経ってしまった…あかんではないか。しばらくはちょっと頑張って未アップ分を消化していこう! 数えてみたら8作分も溜まってるよ…きゃー。一気に頑張ろうという気が萎えてきたわ(苦笑).... more
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from + ChiekoaLib..
at 2005-07-16 13:25
タイトル : 告白 [町田康]
告白町田 康中央公論新社 2005-03-25 舞台となるのは明治初期、河内地方の小さな村。明治26年5月に河内国赤阪水分村で実際に起こった殺人事件をモデルに描かれた小説だそうです。物語の中で克明につづられるのは、主人公・熊太郎がこの村に生まれ、育ち、そして事件を起こすに至るまでの人生。彼の考え、彼の思い。 なぜ熊太郎はこんな事件を起こしたのか?―「人はなぜ人を殺すのか」。 どこまでが現実で、どこからが小説なのか、そんな境界すらあいまいになるような、すごい迫力でした。人が頭の中で考えている...... more
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from (非公認)読者大賞blog
at 2005-07-28 23:29
タイトル : [新刊本]「告白」町田康
告白posted with 簡単リンクくん at 2005. 7.28町田/康??著中央公論新社 (2005.3)通常24時間以内に発送します。オンライン書店ビーケーワンで詳細を見る 本のことどもの聖月さんからのエントリです。 ... more
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from 本を読む女。改訂版
at 2005-08-12 20:02
タイトル : 「告白」町田康
告白posted with 簡単リンクくん at 2005. 8.12町田/康??著中央公論新社 (2005.3)通常24時間以内に発送します。オンライン書店ビーケーワンで詳細を見る この本は河内十人斬りをテーマにしてるらしいんやけども、河内十人斬り?なんやそれ、知らんがな。私大阪出身やけどもな、盆踊りの歌詞?覚えてるわけあるかい。有名なんかそれ。と思った私は河内長野出身者と堺市在住者に聞いてみたんやけども、「しらんわ」とあしらわれたり、「そんなもん、河内家菊水丸に聞きいや」と言われたりしてとん...... more
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from af_blog
at 2005-10-26 10:23
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from 図書館で本を借りよう!〜..
at 2005-11-13 16:54
タイトル : 「告白」町田康
「告白」町田康(2005)☆☆☆☆★ ※[913]、国内、近代、明治、小説、河内十人斬り、河内音頭 町田康に最初に出会った小説がこれだったら、過日あまり評価できなった同氏の短編集「浄土」 [http://blogs.yahoo.co.jp/snowkids1965/14257991.html] の印象はもっと違ったものになっていただろう。多くのネット評者が語る「町田節」というものはこの作品だけではよくわからないが、読ませる文章、読ませる内容。強いて下手な関西弁で言えば、たぶんそれが一...... more
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from AOCHAN-Blog
at 2005-12-23 12:47
タイトル : 「告白」町田康
タイトル:告白 著者 :町田康 出版社 :中央公論新社 読書期間:2005/11/29 - 2005/12/07 お勧め度:★★★★ [ Amazon | bk1 | 楽天ブックス ] 人はなぜ人を殺すのか−−河内音頭のスタンダードナンバーで実際に起きた大量殺人事件をモチーフに、永遠のテーマに迫る渾身の長編小説。殺人者の声なき声を聴け!明治時代に実際にあった「河内十人斬り」がモチーフ。なぜに主人公・城戸熊太郎が弟分・谷弥五郎と組んで殺人を犯し、自決するにいたったかが町田節を持って事細...... more
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from ぱんどら日記
at 2006-01-10 16:30
タイトル : 町田康【告白】
すごく面白いんです。 だけど好き嫌いは分かれるだろうな。 というか、この小説を思いっきりの笑顔で「だ〜いすき♪」と言える人は、かなり少ないかも。 主人公の「熊太郎」に対しては、なんかもう……感情移入とか、思いいれとか、エールを贈るとかいうよりも....... more
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from 読んだモノの感想をぶっき..
at 2006-02-06 16:05
タイトル : 告白 (町田康)
これは渾身の作品なんでしょうね。主人公の熊太郎がかなりデフォルメされているとしても、ここまで踏み込んで描けるのは、町田康自身がいろんな意味で熊太郎と被っているからだろうし、落語風の笑える語り口に紛らわされているけれど、熊太郎の心を容赦なく切り刻む作者の手元から執念が臭い立ってくるようで、本質的には自虐的なまでに己を追い詰めた果ての作品と感じます。 斯く言うわたし自身、多分に熊太郎的特質を持ち合わせていて、後半はさすがにそのアホッぷりに呆れたけれど、確かに個々のエピソードはお馬鹿だけれど、そこで描き出...... more
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from 読んだモノの感想をぶっき..
at 2006-02-14 07:49
タイトル : 読者の精神的な成熟度
最近アップした町田康『告白』にわたしはいたく感情移入したのだけど、一方で馬鹿者を描いただけの作品、と断じる読者がいる。好みの違いと切って捨てるのも芸がないので、ちょっと考えてみた。 精神的な成熟度を研究する学問があるようで、門外漢なので付け焼刃の知識だけど、発達心理学というのがこれに当たるみたい。著名な発達心理学者にエリクソンという人がいて、この人のライフサイクル理論では、精神の成長プロセスが8つの段階に分けて説明されている。 これによると、『告白』の主人公熊太郎は、乳児期~早期児童期(0~3...... more
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from 本のある生活
at 2006-02-27 22:27
タイトル : 「告白」町田康
告白 なんだか、すごいものを読んでしまった・・・という気がします。町田さんの文章は時として読むのが辛いときがあるのだけれど、これは大丈夫!言葉に勢いがあってどんどん読めました。くどいとは思うのですが、アクの強い河内弁のリズムに自然と乗ってしまい、ラスト....... more
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from 活字中毒者の小冒険2:本..
at 2006-04-19 01:34
タイトル : 町田康 告白 (4/2006) ☆☆☆☆
告白町田 康 中央公論新社 2005-03-25売り上げランキング : 1,481Amazonで詳しく見る by G-Tools アマゾン http://tinyurl.com/7hpbv 楽天 http://www.geocities.jp/hidebookjp/bookstore/kokuhaku.htm 本屋大賞ノミネートの最後の作品になる。 不思議な時代小説だ。 主..... more
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from ひなたでゆるり
at 2006-05-03 16:37
タイトル : 『告白』町田康
告白町田 康中央公論新社2005-03-25by G-Tools 人はなぜ人を殺すのか――河内音頭のスタンダードナンバーで実際に起きた大量殺人事件<河内十人斬り>をモチーフに、永遠のテーマに迫る渾身の長編小説。殺人者の声なき声を聴け! 明治26年、河内水分で実際に起きた「河内十人斬り」を題材に書かれた作品。 とにかく時間を費やしてこの作品と付き合ったこの数日はたぶん忘れられないだろう。圧巻である。秀逸である。 題材が人殺しであるため、暗く陰気なイメージを持った作品ではあるが、これを彩るものは...... more
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shou20031 at 2005-04-17 16:26
こんにちは。ふむ。むふ。ここはいつ来ても勉強になります。
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shou20031さん 創作活動をされている方にも、ひとつの教本として面白いと思いますよ(^.^)
読んだらもっと勉強に。
聖月さん、エントリありがとうございます。
記事をたてておきましたので、再度しつこくトラックバックいただければ嬉しいです。 聖月さんがこの本を持ってやってくるのを待っておりました(笑) 私ももうすぐ図書館から届きます。楽しみすぎます。 余談ですが今古川日出男氏「サウンドトラック」読んでます。 分厚いけどもう夢中です。全身全霊ガールです。ところでガールって何歳までだろう。 それはともかく、古川氏を薦めてもらってありがとうございます。
ざれこさん おはござ(^.^)
私、投票行動に関して慎重派ですので、思いつく都度に本を携えてやってまります(^.^) 『告白』はもうもう力作。あとは読者ののめりこみ度ですね。 『サウンドトラック』時々文章に遊びが見られて、大作ながら読みやすい。 でもあの世界観が最終的にはいまひとつ乗り切れなかったかな。舞踏という部分。 ガールは清楚に制服を着こなしたという条件付で、高校3年生までです(キッパリ)。そうでない場合はギャルとかギャルピーで、女子高生という立場は職業になります。
うわ、ガールは高校3年までですか・・・私なんかが使ったらいけないんですね・・・冗談でも・・・
しかも清楚な制服限定ですか。スカート丈までしっかり決まってそうですね(笑) 「サウンドトラック」まだ途中ですが、女子校のメンバーがいいですよね。なんか好きです、連中。
ガールは高校3年生までと今朝決めました(^^)v勝手に(^^ゞ
服装的には『阿修羅ガール』舞城表紙の服装が見本です。 だから、あれもガールなのです。 なんか彼女を預かっている中年オヤジの心の描写なんかがオモロカッタ記憶があります。 あといつも読みながら印象に残るのが動物たち。カラスとか猫ちゃんとか。
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すの
at 2005-11-13 12:36
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読了しました!いやぁ、ごっつうええ話でした。町田康の最初に出会った作品がこれだったら、「浄土」の印象も変わったかも。たあ、このスタイルって、どっかにいませんでしたっけ?花村萬月あたりが怪しいのですが・・?
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あおちゃん
at 2005-12-23 14:03
x
あおちゃんさん こんにちは
お!今年の押さえ本、読まれましたか(^.^) 本当に「圧倒」という言葉が、感想に似合う本ですよね。 そろそろ聖月永遠の押さえ本荒山徹もよろしくお願いいたしますm(__)m
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by
あおちゃん
at 2005-12-23 18:24
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おっと、そうですね。買ったのにそのままおきっぱなしになっていました。
では、新春第一弾ってことにしたいと思います。
新春第一弾じゃなくても、休みのときにじっくり出会うのが荒山徹作品にはいいかも知れません。
確か、最初読んだとき、これ、俺って最後まで読めるの?なんて自問したような。で、途中からメッチャおもろくて、うくく。
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notaro_hinemojira at 2006-02-14 07:52
こちらにTB返させていただきました。
いい意味で後をひく本でした。作品を超えて、人間として迫ってくるものがあって、素晴らしい作家ですね!
なんかもう、圧倒されました。今頭の中は、妙な河内弁でぐるぐるしてます。
juneさん こんな本があるから読書はオモロ。
私は今、佐倉のアルコールがぐるぐるしています、うくく。
聖月さん、こんにちは!
TBありがとうございました。 聖月さんが強く強くべし、べし、べしとおっしゃっていた「告白」、 圧巻でした。何だかもうぐるぐる~となってしまって未だ呆けております。 ものすごく化けものみたいな本に出会ってしまったようです。 町田さん実は「告白」が初だったので、是非是非他作品も 体感してみようと思っていますー。聖月さんのリスト参考にさせていただきますね!
リサさん こんにちは。
はい、読むべし印の押さえ本印ですね。 なんか、なにが凄いって、言葉も出ないようなそんな物語ですね。 町田康、多分、最初の作品から読んでいけば、作品ごとに好悪がわかれそうな気がします。ダメな人はダメみたいで。 あと、万人向けは『パンク侍、斬られて候』かと。
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na_mi
at 2006-07-09 23:42
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ようやく読み終わりますと、『泣いた赤鬼』の話を思い出しました。まったく面白いのに、哀しい。深刻なことは陽気に伝えるべき、ですが、ただの阿呆と感じる人もいるでしょう。漢字が(正しく)読めなくて、イライラしたけども、それは自分の劣るところであり、著作は賞賛に値すると思いました。
はい、泣いた赤鬼ですね。切なく淋しい。
町田康は読みにくい漢字多用しますが、使う漢字はいつも同じパターンなので、一旦覚えてしまえば楽ですよ。拵える(こしらえる)とか(^.^) 本当にこの本は、傑作中の傑作だと思います。 筆圧があります。 |
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