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「本のことども」by聖月

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2005年 06月 07日

〇「風流冷飯伝」 米村圭伍 新潮社 1575円 1999/6

〇「風流冷飯伝」 米村圭伍 新潮社 1575円 1999/6_b0037682_1353352.jpg のっけから面白い。江戸流れの幇間(たいこもち)一八(いっぱち)が、初めて訪れた四国讃岐の小藩の、城下をひょいひょいと歩いているところから物語は始まる。江戸の幇間(←「よっ旦那、今日もマゲが決まってますね」「お前も当たり前のことをズケズケ誉めるね。でも今日は、俺もいいことがあったから一緒にいっぱいやるか」などということを生業にする江戸時代のヨイショ男)だから、桜色の衣装を羽織っていたりするので、目立つことは目立つのだが、それにしても行き交う人すべてが、変な目でジロジロ見るのは合点がいかない、妙なもんだと考え始める。

 最初に話をすることとなった数馬という若武家から、その理由を教えてもらえるのだが、その数馬も出会ったときは、動き回るニワトリの数を数えているのだから、これも妙なもんだと考える。

 実は、表題の「冷飯」とは、長男としては生まれず、そのため御家代代の藩の禄もない、もっと簡単に言えば、仕事のない次男武士達のことである。仕事が無く収入もないから、冷飯をわけてもらうような立場である。仕事が無いとはいえ、家でゴロゴロできる立場でもないので、自分の居場所を探さなければいけない。先の数馬は、ニワトリを数えることで時間を費やしているところだったのである。この冷飯たち、1日中釣り糸を垂れてる者、凧揚げに精を出す者等それぞれの居場所を持っているのだが、暢気な外見の裏側で、心の内に覚悟を持っている。それが、この物語の底流をなしている。

 そういった冷飯たちの生活を読み進めていくうちに、果たしてこの物語は何処へいくのだろうという疑問が湧いてくる。この疑問は、藩を挙げての将棋大会が開かれるくだりで得心へと変わるのだが。

 それにしても、この物語、題名の通り風流であり、長閑(のどか)である。説明しがたい味がある。滑稽本と紹介している新聞記事もあったが、それもやはり違う。読んで感じてくれとしか言いようがない。

 さて、評価の〇に騙されてはいけない。説明しがたい味があるので、最低でも〇は保証しようというものである。読む人によっては、◎だったり、◎◎だったりするはずである。評者としては、ちょっと態度保留。2作目にあたる「退屈姫君伝」で、再評価することにしよう。

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by kotodomo | 2005-06-07 13:08 | 書評 | Trackback(5) | Comments(2)
Tracked from 合気道!大好き at 2005-12-26 12:57
タイトル : 米村圭伍 退屈姫君伝
畠中 恵の「しゃばけ」がとってもよかったので↓ http://blog.so-net.ne.jp/loveaikido/2005-12-07 江戸時代の楽しい物語が読みたいなぁと思って手に取った本です。 (ジャケットの絵も一緒でしたし・・・) いままでは、江戸時代といえば、司馬遼太郎といった時代小説を イメージしていました。でも、このシリーズは、ぜんぜん違います。 じゃじゃ馬で美人のお姫様、究極の暇人である武家の次男坊(冷飯食い)、 ハンサムな忍者、...... more
Tracked from たりぃの読書三昧な日々 at 2006-02-03 20:36
タイトル : 「風流冷飯伝」(米村圭伍著)
 今回は 「風流冷飯伝」 米村 圭伍著 です。この本は第5回小説新潮長篇新人賞受賞作ですね。... more
Tracked from 本を読む女。改訂版 at 2006-07-20 01:42
タイトル : 「風流冷飯伝」米村圭伍
風流冷飯伝発売元: 新潮社価格: ¥ 540発売日: 2002/03売上ランキング: 14003おすすめ度 posted with Socialtunes at 2006/07/20 積読削減のためにこんな記事「積読削減プロジェクト」を立ち上げ、 自らを奮い立たせている(わりに図書館でいまだに借りてくるんだなあ。 引き続きご協力をお願いします)んだけど、 積読のリストにこの本を挙げていたらrocketさんが、「これだけは読むな」と。 「面白いから、シリーズ全部読みたくなるから」と。 「...... more
Tracked from AOCHAN-Blog at 2006-11-06 15:27
タイトル : 「風流冷飯伝」米村圭吾
タイトル:風流冷飯伝 著者  :米村圭吾 出版社 :新潮文庫 読書期間:2006/10/12 - 2006/10/13 お勧め度:★★★★ [ Amazon | bk1 | 楽天ブックス ] 四国は讃岐の吹けば飛ぶよな小藩が、この法螺噺の舞台です。ご案内役は、お江戸で鳴らした幇間。相方を務めますは、お武家の次男、俗に申します冷飯ぐい。でも、この男、暇のつぶし方が、なんだか飄々としております。藩のしきたりも、すこぶる妙です。そんな冷飯ぐいどもが、何の因果か、藩の命運を背負うことになったか...... more
Tracked from 時代小説県歴史小説村 at 2007-04-28 00:13
タイトル : 米村圭伍 風流冷飯伝
【覚書】★★★★★★★★☆☆ 軽妙洒脱な文体のおかげで肩肘張らずに読め、読後感...... more
Commented by 三四郎 at 2005-12-26 13:00 x
はじめまして!退屈姫シリーズ、とっても面白いですよね。
独特の、ほのぼのした感じが大好きです。
まだ3冊しか読んでいないので、望月さんのブログを参考に、
読みすすんでいきたいと思います!宜しくお願いします。
Commented by 聖月 at 2005-12-26 19:08 x
三四郎さん はじめまして(^.^)
いいですよね。やはり風流冷飯伝がベースにあって、この人の作品が流れていくという雰囲気がいいですね。
めだか姫、かあいいしい(^.^)
参考になれば幸いですが、馬鹿なことばっか書いていますので(^^ゞ
でも退屈姫君シリーズはそこまで馬鹿書いていないかな(^.^)


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