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「本のことども」by聖月

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2005年 06月 08日

◎「人生上達の術」 畑正憲 マガジンハウス 1,500円 1998/4


 勿論「ムツゴロウとゆかいな仲間たち」が、テレビで放映されていたのは知っていた。観てはいなかったが、動物が好きな人物であることもわかっていた。観てはいなくても、何か映像で見た覚えがあり、きたならしい変なおっさんだと、好ましくない印象を持っていた。だから、雑誌ダカーポで"ムツゴロウの人生豊頬術"という連載が始まっても、最初のうちは、読み飛ばすコラムのうちのひとつでしかなかった。ところが、ある時ある号で初めて読んでみると、これが非常に面白い。これは!と思い、部屋の隅に置いてあった過去のダカーポから、それまでの分を拾い読みしていったら、やたらめったら面白い。

 この本は、1994年から1997年まで続いた連載を、ちょっと分野ごとに整理し改題して出版されたものである。内容は人生豊頬(ほうきょう)術なのだが、豊頬の字を読んでもらえなかったり、意味を汲んでもらえなかったりするといけないから、現題になったのであろう。改題は、個人的には残念な気もするが。

 著者は、東大卒の作家であるが、麻雀のタイトル戦も複数制覇、草競馬でも優勝した騎手であり、映画監督であり、イラストレーターでありと様々な顔を持つ。その理由は、何事においても、いざ始めると、トコトンやるからである。なるほど、あの動物に対する映像も、尋常ではないのはそのためかと納得する。本書は、人生をふっくらと(豊頬)させてくれるアウトドア・海外旅行・食・ギャンブルほか趣味についての、心構え的指南書である。著者自信が、極めているから奥が深い。

 釣りの章。ルアーしかやらない釣り人、渓流釣りにしか興味のない人を著者は否定しない。否定しないけれども残念だと感じる。極論すれば魚と人間との関係であり、淡水か海水か疑似餌かどうかこだわるというのは、ゴルフはやるけどパターしかしませんというのと同じだという。また、著者は探究心旺盛だから、実際に自分が垂れた釣り針の様子を見に、わざわざ素潜りをして、魚から見えないようにところに隠れ観察する。そして、釣り人が感じる感触が、実際には違った魚の行動であることを発見する。

 他に"ナイフのことども"という題で、ナイフに対する熱い思いを記述している章もある。そう"本のことども"という書評コーナーの題名は、この本に対する敬意なのである。

 評者は釣りをしない。でも、釣りをしたくなるし、した気になる。競馬もしない。でも、競馬をしたくなるし、した気になる。グルメも、ペットも、囲碁もそう。

 人生を気持ち豊かに過ごすことを考える、良いきっかけになる良書である。

※本になったのを知ってインターネットで購入。古書店では2回ほど遭遇。

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by kotodomo | 2005-06-08 21:13 | 書評 | Trackback | Comments(0)


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