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「本のことども」by聖月

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2005年 06月 08日

▲「一万年の旅路」 ポーラ・アンダーウッド 翔泳社 2,500円 1998/5


 あなたは、あなたの家系の系譜をどこまでご存知だろうか。評者は、4代前が鹿児島県坊津町の出身であることまでしか知らない。なかには、先祖代々の家系図が、家宝のような形で伝わっているご家庭もあるかも知れない。仮にそれが戦国時代から伝わっているものであれば、400~500年前まで出自を遡れることになる。4代前で100年ちょっと。戦国時代からの家系図でも500年。たったの、500年。

 本書の副題は"ネイティブ・アメリカンの口承史"。原題は"THE WALKING PEOPLE"である。アメリカインディアン・イロコイ族の一万年以上の歴史が代々語り継がれ、その系譜をひく著者が著したものである。

 この一族の出身は、驚くなかれ、物語が語られ始めた出発地点を考えると、サウジアラビア=シナイ半島=地中海沿岸のあたりである。地中海からカザフ高原、モンゴル、アジア、アリューシャン列島、アメリカ西海岸、五大湖へと歩いて移り住んだ歴史の物語である。そう、"歩く民"の壮大な歴史なのである。どうやって、アリューシャン列島を越えたのかって?昔、氷河期が来ると、今の海面より、100~150メートル海は後退していた。そう、二つの大陸が地続きの時代があったのである。小学生の頃、インディアンはアジアの血を引いていると聞いたことがある。確かに顔は似ているが、そんなはずはないだろうと思っていた。場所は離れているし、海が隔てている。しかし、本書を読んで確信した。

 彼らは"歩く民"であり、"学ぶ民"であり、"平和な民"であった。子供が何故生まれるのかわからなかった。男女のグループを1年間別々に居住させる実験をする。出生の端緒について学ぶ。移動中に"水を渡る民"と出会う。何故、海の上、川の上を渡れるのか、じっと観察する。その方法を理解するが、自分たちは"歩く民"だから、無闇に海に出て行ったりしない。最後に、オンタリオ湖に行き着くが、そこには先住民がいる。空いている土地に住まわせてくれと言っても、先住民は同意してくれない。戦が始まる。捕虜となった先住民の民には、ご馳走を施し、時期が来たら豊富な土産を持たして帰らせる。そういった方法で理解を得、現在の居住区へ定住する。

 本書では、いろんな智恵、学びが語られており、非常に興味深い。歴史や、学術に興味がある方は、必読の本である。一気読みである。しかし。

 しかしである。普通の読者の方には、毎日コツコツ30ページくらい読み進めることをオススメする。全部で550ページ。評者も、読む日、読まない日あったが、50日くらいかけて読んだ。原始の目で語られる本書は、ミステリーなどと違って、起伏がない。つまり、読み疲れする可能性がある。でも、少しずつ読むと、智恵や学びというものが浸透してくる。枕もとに置いて、睡眠薬の代わりに読むのがいいだろう。先人の智恵や教えに考えさせられる。聖書のような本である。

※インターネットで購入。このような本は、図書館で借りるより、一家に一冊置いておきたい。そう、聖書のように。

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by kotodomo | 2005-06-08 21:27 | 書評 | Trackback(1) | Comments(0)
Tracked from 知的クーデターをめざして at 2005-08-15 11:52
タイトル : 一万年の旅路 イロコイ族の知恵
一万年の旅路 それはアフリカ大陸からアメリカまでのはるかな距離を 1万年かけて移動した一族の口承史です。 彼らは自然と戦い、知恵を常に学びながら 移動していきます。 その知恵は現代を生きるわれわれにも多くの気付きを 与えてくれます。 5つの知恵を紹介します。 1.われらの中に十分知恵のあるものがいないときは。多くのものが心をひとつにすれば、確かな道を見出せるかもしれない。 2.常に人に従うものが学ぶのは。他人の背中の形だけである。 3.選び方はたくさんあるが、多くの場合すばやく選ぶことが最善...... more


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