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「本のことども」by聖月

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2005年 06月 19日

◎◎「少女達がいた街」 柴田よしき 角川文庫 724円 1999/4

◎◎「少女達がいた街」 柴田よしき 角川文庫 724円 1999/4_b0037682_1714478.jpg 大きく2部構成に分かれた本格推理物である。前半は、1975年の少女達がいた東京は渋谷、新宿を舞台にしたお話。主人公の高校一年生の少女は、寝たきりの祖父と二人暮し。日常の面倒は家政婦さんがみてくれるので、ほとんど一人で暮らしているような感じである。授業が終わるとロック喫茶に出入りし、愛称でしか呼び合わない仲間や、バンドの連中と付き合う。少女自体は決してすれっからしではなく、お小遣いの範囲で、コンサートに出かけたり、そのための衣装を買ったりする。年上の男性への恋心、年上の女性への憧れ、いかにもその年代の少女らしい思いの中で物語は進行していく。そして、事件が起こるのだが。

 ところで、少女の両親は事故でこの世にもういない。父母ともに一人っ子であったことから、当然叔父叔母にあたる親戚はおらず、直系の祖父のもとで暮らしている。そこでふと、評者は思い至る。中国の一人っ子政策。一人っ子が二代続くと、いとこのいない世代が出現する話は知っていたが、それ以前に両親に何かあったときに頼れる傍系の親族が存在しないことに気づかされたのである。核家族化した世の中の行く末が、少し不安になる。

 後半は、約20年後の現代。前半の最後で起こった事件の全容が、次第次第に明らかになっていくのであるが、これが見事である。ああそうなの、ああそういうことだったの、と、ふんふん読み進めていくと、ええっ!そうだったのか!と謎のピースがガチッとはまってくるのである。

 評価は◎◎か◎か迷った評者であるが、『ハサミ男』を◎◎で評価したならば、やっぱり◎◎なのである。(20030101)


※ 単行本は1997/2発刊。クイーン、ディープパープルの名前を懐かしく思う人が読んでみたら、さらに面白い本書である。評者にも当然懐かしかった(^o^)

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by kotodomo | 2005-06-19 16:57 | 書評 | Trackback | Comments(0)


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