2005年 06月 20日
乱歩賞を受賞したデビュー作『13階段』は映画にまでなったのだが、この高野和明という作家は、元々Vシネマとか映画の映像・脚本出身の作家であり、そういった意味で前作『グレイヴディッガー』もノンストップなハリウッド型の映像の世界を意識して作られていたのだと思う。そして本書『K・Nの悲劇』も映像の臭いがプンプンする。それも火曜サスペンス特別版2時間25分スペシャルみたいな(笑)。 本書は図書館で借りた本なのだが、最近では図書館の本も扉を開くと“書評”というのが貼ってある。要するに、書店だったら帯の惹句でその内容を伝えることができるが、図書館の本は表紙カバーのみで、帯は当然はずしてある。そこで、内容の参考としてそういうものが貼ってあるのである。まあ、鹿児島市立図書館のほうのみのお話で、県立のほうは相変わらず、念力もしくは超能力を使って内容を把握したまえとの方針で、特に“書評”なるものは貼っていないが。その“書評”、参考のため引用しよう。“妊娠中絶を決めた妻に次々と起こる怪奇現象。妻は霊にとり憑かれてしまったのか。恐怖と愛情に心が引き裂かれそうになる若き夫を助け、一人の精神科医が戦いを始める。戦慄に満ちた愛の物語”どうだろう?どうやら書評というより粗筋紹介のようだが。というより、火曜サスペンス特別版2時間25分スペシャルのテレビ番組欄の惹句みたいでもある(笑)。 不妊の問題。中絶の問題。堕胎の問題。いろいろなパターンが盛り込まれた本書である。たとえば、まだ結婚していないカップルに子供ができた場合どうすべきかとか、いろいろな問題がテンコ盛なのだが、本書の主題には異を称えたい。結婚している二人に図らずも子供が出来た場合には、何も難しいことは考えず、祝福して産むべきであると。まあ、世の中難しいことが多くて、評者がこんなに簡単にかたずけちゃうと、いや問題の根底にある様々な具体例をあなたは理解していない等々叱られそうだが、少なくともこの主人公夫婦の場合には評者は異を唱えたい。結婚してんだから、喜んで産みなさいと。だから、幽霊だか憑依だか、問題が起きちゃったんだぞ、と。 ところで、本書を読んでいると、途中から疑問が湧いてくる。果たしてこの本は、一体どういうジャンルの本なのだろうと。『パラサイトイヴ』みたいなホラー系なやつなんだろうか。それとも科学的な説明がつく、ミステリーなのだろうか?それとも東野圭吾『秘密』のように、SFとミステリーの境界を越えたジャンルなのだろうかと。 読後、評者も考えた。どういうジャンルだろうと。結局、これはジャンルの決めのない火曜サスペンス特別版2時間25分スペシャルであるというのが、評者の結論である(笑)。エピローグの、仕切りなおし後の説明的かつ牧歌的な描写なんか典型なのである。(20030412) ※鹿児島県立図書館で借りる。 書評一覧 ↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら
by kotodomo
| 2005-06-20 08:08
| 書評
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from たこの感想文
at 2005-07-19 18:24
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from 粗製♪濫読
at 2006-02-19 12:16
タイトル : 『K・Nの悲劇』 タイムリミット・幽霊・サスペンス
著者:高野和明 書名: K・Nの悲劇 発行:講談社(文庫) 娯楽度:★★★★☆ 「13階段」の高野氏の三作目。 夏樹果波は幸せの絶頂にあった。フリーライターの夫の本がベストセラーになり、高級マンションに引っ越すことになったからだ。しかし、ここで果波は妊娠してしまう。夫の修平は、経済的理由から中絶を望んだ。するとその後から、果波にもう一人の人格が現れてそれを拒むようになった。これは精神疾患か、それとも憑依現象か?修平はその解明を、精神科医の磯貝に依頼した。 相変わらずリーダビリ...... more
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bibliophage at 2006-02-19 12:20
聖月さん、こんにちは。
「火曜サスペンス」と言われれば、確かにそうですね。 似た系統では、「症例A」の方がインパクトは強いかもしれません。
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bibliophageさん こんにちは。
高野和明、最近読んでないけど、新作はどうなのかな? 出たのかな?まだ出ていないのかな? 今、自分の書評もどきを読んでも、粗筋がいっこうに思い出せません(^^ゞ だから、自分の書評は後日参考にならん。 火曜ワイドスペシャル的なのだけ、わかりました。 『症例A』そうですかφ(..)メモメモ |
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