2005年 06月 26日
最初に書いておくと、前作のデビュー作◎◎『影踏み鬼』が、類を見ない傑作である。だから、本書『消えた山高帽子』が東京創元社◎ミステリ・フロンティアの叢書(あの『アヒルと鴨のコインロッカー』の伊坂幸太郎と同じ叢書)だから面白そうと思って先に手にとるなかれ。作品の前後は関係ないが、先に完成度の高い『影踏み鬼』で翔田寛という作家の才能を堪能してもらって、本書『消えた山高帽子』で、まあまあだけど次に期待しようぐらいの読み方をお願いしたい。そうでないと、先に本書を読んじゃうと、この作家の才能が完全に発揮されておらず、名作、傑作の『影踏み鬼』にまで、手を伸ばしてみようかという読者は少ないと憂慮するからなのである。まあ、本書も上手なのだけどねえ。 副題が「チャールズ・ワーグナーの事件簿」。明治6年、横浜の山下居留地に滞在しているニュース特派員が遭遇した事件簿を集めた連作短編集なのである。幽霊事件の真相、ハラキリ事件が自害なのか殺人なのか、山高帽子はなぜ消えたのか、心の狂った姉の謎、聖堂での殺人事件の真相、そういうものに迫ったミステリーである。 前作『影踏み鬼』で見せた二段落ちの手法が消えたわけではない。ある事件が起こる。その事件が解決へ近づくと、主人公が本国へしたためた電文記事が紹介される。なるほど事件の真相はこうだったのか!と思っていると後日談が入ってきて・・・。でも、前作のようなキレを今回は感じない。そこのところが、今回の評者の評価にもなった次第である。 それでも、翔田寛、読むべし、読むべし、べし、べし、べし。まずはデビュー作『影踏み鬼』から読むべし、べし。(20040818) ※評者の個人的評価は別にしても、今年のこのミスでは、この作品のランクインもあるんじゃないかと思っている評者なのである。 書評一覧 ↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら
by kotodomo
| 2005-06-26 22:57
| 書評
|
Trackback
|
Comments(0)
|
アバウト
カテゴリ
ことどもカテゴリ
意外と書評が揃っているかもしれない「作家のことども」
ポール・アルテのことども アゴタ・クリストフのことども ジェフリー・ディーヴァーのことども ロバート・B・パーカーのことども アントニイ・バークリーのことども レジナルド・ヒルのことども ジョー・R・ランズデールのことども デニス・レヘインのことども パーシヴァル・ワイルドのことども 阿部和重のことども 荒山徹のことども 飯嶋和一のことども 五十嵐貴久のことども 伊坂幸太郎のことども 伊集院静『海峡』三部作のことども 絲山秋子のことども 稲見一良のことども 逢坂剛のことども 大崎善生のことども 小川洋子のことども 荻原浩のことども 奥泉光のことども 奥田英朗のことども 香納諒一のことども 北森鴻:冬狐堂シリーズのことども 京極夏彦のことども 桐野夏生のことども 久坂部羊のことども 黒川博行・疫病神シリーズのことども 古処誠二(大戦末期物)のことども 朔立木のことども さくら剛のことども 佐藤正午のことども 沢井鯨のことども 柴田よしきのことども 島田荘司のことども 清水義範のことども 殊能将之のことども 翔田寛のことども 白石一文のことども 真保裕一のことども 瀬尾まいこのことども 高村薫のことども 嶽本野ばらのことども 恒川光太郎のことども 長嶋有のことども 西加奈子のことども 野沢尚:龍時のことども ハセベバクシンオー様のことども 初野晴のことども 花村萬月のことども 原りょうのことども 東野圭吾のことども 樋口有介のことども 深町秋生のことども 『深町秋生の新人日記』リンク 藤谷治のことども 藤原伊織のことども 古川日出男のことども 舞城王太郎のことども 町田康のことども 道田泰司大先生のクリシンなことども 三羽省吾のことども 村上春樹のことども 室積光のことども 森絵都:DIVEのことなど 森巣博のことども 森雅裕のことども 横山秀夫のことども 米村圭伍のことども 綿矢りさ姫のことども このミス大賞のことども ノンフィクションのことども その他全書評一覧 最新のコメント
最新のトラックバック
|
ファン申請 |
||