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「本のことども」by聖月

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2005年 06月 26日

◎◎「ロジャー・シェリンガムとヴェィンの謎」 アントニイ・バークリー 晶文社 2000円 2003/4


 ありゃ、これは面白いわ、というのが率直な感想。いつものように、読め!とか読むべし!とかいう気はない。こりゃ面白いわ、こりゃ◎◎の評価だわという純粋にただそれだけの読後感なのである。

 既にバークリーの探偵シェリンガム物は『第二の銃声』『ジャンピング・ジェニイ』と読んでいた評者。ここへきてシリーズ第一作『レイトン・コートの謎』第二作『ウィッチフォード毒殺事件』が刊行され、『レイトン・コートの謎』は読んで既評済みなのだが、あまり面白さを感じず、第二作目は手に取らなかった経緯にある。図書館へ出向いたら、新刊コーナーに第三作目にあたる本書『ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎』が置いてあったので、借りてきて読み始めると…こりゃ、面白いわ、読んでいて楽しいわ、こりゃあ、第二作目も借りなきゃね、と思った次第なのである。

 ある女性が海に落ちて死ぬ。自殺か事故と思っていたら、どうやら警察が動き出したらしいということで、新聞社も取材に行かねば、それじゃあ記事はシェリンガムに頼んじゃえということで、従弟と旅に出ようとしていたシェリンガムは勝手に旅行を取りやめ、従弟と一緒に現地へ赴く。

 皮肉とユーモア、機知とウィットに富んだ素敵な作品である。多分、訳に負うところも多いのだろうが、行間やセリフ回しが読んでいて楽しい。ニヤッとして、他の読者もこの部分の面白さがわかるかな、俺はわかったぞ、なんて悦。なにより、こういう小説は登場人物が少ないほど読みやすく、場所も極力限られた場所であるほどわかりやすい。本書はその王道である。

 『第二の銃声』ほどにはその内容に深味はないが、逆にそのライトな感覚が小説の楽しみを教えてくれる作品である。とてもとても、大昔の作家が書いた作品とは思えないほど、今でも新鮮な小説である。ラスト一行のセリフまでグッド。(20030809)


※わけのわからん新本格、新トリックなど読むより、面白いぞ。今年のこのミス第5位予定(笑)

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by kotodomo | 2005-06-26 20:52 | 書評 | Trackback | Comments(0)


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