2005年 06月 26日
ありゃ、これは面白いわ、というのが率直な感想。いつものように、読め!とか読むべし!とかいう気はない。こりゃ面白いわ、こりゃ◎◎の評価だわという純粋にただそれだけの読後感なのである。 既にバークリーの探偵シェリンガム物は『第二の銃声』『ジャンピング・ジェニイ』と読んでいた評者。ここへきてシリーズ第一作『レイトン・コートの謎』第二作『ウィッチフォード毒殺事件』が刊行され、『レイトン・コートの謎』は読んで既評済みなのだが、あまり面白さを感じず、第二作目は手に取らなかった経緯にある。図書館へ出向いたら、新刊コーナーに第三作目にあたる本書『ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎』が置いてあったので、借りてきて読み始めると…こりゃ、面白いわ、読んでいて楽しいわ、こりゃあ、第二作目も借りなきゃね、と思った次第なのである。 ある女性が海に落ちて死ぬ。自殺か事故と思っていたら、どうやら警察が動き出したらしいということで、新聞社も取材に行かねば、それじゃあ記事はシェリンガムに頼んじゃえということで、従弟と旅に出ようとしていたシェリンガムは勝手に旅行を取りやめ、従弟と一緒に現地へ赴く。 皮肉とユーモア、機知とウィットに富んだ素敵な作品である。多分、訳に負うところも多いのだろうが、行間やセリフ回しが読んでいて楽しい。ニヤッとして、他の読者もこの部分の面白さがわかるかな、俺はわかったぞ、なんて悦。なにより、こういう小説は登場人物が少ないほど読みやすく、場所も極力限られた場所であるほどわかりやすい。本書はその王道である。 『第二の銃声』ほどにはその内容に深味はないが、逆にそのライトな感覚が小説の楽しみを教えてくれる作品である。とてもとても、大昔の作家が書いた作品とは思えないほど、今でも新鮮な小説である。ラスト一行のセリフまでグッド。(20030809) ※わけのわからん新本格、新トリックなど読むより、面白いぞ。今年のこのミス第5位予定(笑) 書評一覧 ↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら
by kotodomo
| 2005-06-26 20:52
| 書評
|
Trackback
|
Comments(0)
|
アバウト
カテゴリ
ことどもカテゴリ
意外と書評が揃っているかもしれない「作家のことども」
ポール・アルテのことども アゴタ・クリストフのことども ジェフリー・ディーヴァーのことども ロバート・B・パーカーのことども アントニイ・バークリーのことども レジナルド・ヒルのことども ジョー・R・ランズデールのことども デニス・レヘインのことども パーシヴァル・ワイルドのことども 阿部和重のことども 荒山徹のことども 飯嶋和一のことども 五十嵐貴久のことども 伊坂幸太郎のことども 伊集院静『海峡』三部作のことども 絲山秋子のことども 稲見一良のことども 逢坂剛のことども 大崎善生のことども 小川洋子のことども 荻原浩のことども 奥泉光のことども 奥田英朗のことども 香納諒一のことども 北森鴻:冬狐堂シリーズのことども 京極夏彦のことども 桐野夏生のことども 久坂部羊のことども 黒川博行・疫病神シリーズのことども 古処誠二(大戦末期物)のことども 朔立木のことども さくら剛のことども 佐藤正午のことども 沢井鯨のことども 柴田よしきのことども 島田荘司のことども 清水義範のことども 殊能将之のことども 翔田寛のことども 白石一文のことども 真保裕一のことども 瀬尾まいこのことども 高村薫のことども 嶽本野ばらのことども 恒川光太郎のことども 長嶋有のことども 西加奈子のことども 野沢尚:龍時のことども ハセベバクシンオー様のことども 初野晴のことども 花村萬月のことども 原りょうのことども 東野圭吾のことども 樋口有介のことども 深町秋生のことども 『深町秋生の新人日記』リンク 藤谷治のことども 藤原伊織のことども 古川日出男のことども 舞城王太郎のことども 町田康のことども 道田泰司大先生のクリシンなことども 三羽省吾のことども 村上春樹のことども 室積光のことども 森絵都:DIVEのことなど 森巣博のことども 森雅裕のことども 横山秀夫のことども 米村圭伍のことども 綿矢りさ姫のことども このミス大賞のことども ノンフィクションのことども その他全書評一覧 最新のコメント
最新のトラックバック
|
ファン申請 |
||