2005年 06月 28日
国内物も翻訳物もわけへだてなく読むつもりでいる評者なのだが、結局国内物の作品へのアンテナの方がビビビ!と感度がよいので、ついつい読書としては国内物が多くなってしまう。そういう評者も、昨年2002年は結構翻訳物のアンテナの感度がよく、このミス2003年版の発表前に、結構ランクイン作品を読んでいた。1位『飛蝗の農場』ジェレミー・ドロンフィールド、4位『第四の扉』ポール・アルテ、6位『壜の中の手記』ジェラルド・カーシュ、13位『ボトムズ』ジョー・R・ランズデール、18位『著者略歴』ジョン・コラピント、27位『被告の女性に関しては』フランシス・アイルズ。少ない翻訳物読書生活から考えると、随分とアンテナの感度がよかった昨年である。ところが、今年はその翻訳物アンテナが全然機能していない。唯一『昏き目の暗殺者』マーガレット・アトウッドあたりが面白そうだなと思ったくらいで、それも借りてきたのはいいが、少し趣味に合わない気がして図書館に返してしまった。別にランクイン作品を前もって読むことに意味を見出しているわけではないが、このままでは2003年の翻訳物新作を一冊も読まないまま年末を迎えそうなので(と書いていて『甦る男』イアン・ランキンを読んでいたのを思い出した)、これではいけないと安心印ロバート・ゴダードの作品を手にとった次第なのである。安心印と書いたが、これが評者の初ゴダードでもある。 のっけから主人公の妻が死んでしまう。新しく引っ越しをした先で、これから新しい生活に慣れようという矢先、主人公が外出先から帰ってくると妻は不在。帰りが遅いなと思っていると、崖から転落死の知らせが。子供もいない二人だけの生活。妻の妹は、主人公の旧来の友人と結婚している。二人からの誘いもあって、妹夫婦の家へしばらく身を寄せようというのが、短い序章の話。妻の死因が、自殺か、事故か、他殺かはさておいて、その妻の死に、この物語の結末をどうやって結びつけるつもりなのかい?ゴダード?というのが、評者の読書中の興味であったが、なるほど稀代のストリーテイラーと言われるだけのことはある、なるほどね、あまり合点はいかなかったけど、上手いは上手いやな、この作者。 物語の前半は、少し文学的で暗い。展開にスピード感がない。妹夫婦の屋敷や、その周りの住人の描写を読み進めることとなる。ところが、中盤から終盤にきて、俄然スピード感が増すのである。そのスピードに乗って、一気に最後まで読み終えた評者。なんと、最後の最後で、肝腎なあの事が!!!って、その意味が全然わからなかった。自分はアホなんだろうか?おお!これは凄い落ちがあるぞ!と期待して読んだ評者。間違いなくあった驚愕の事実=落ち。でも、その意味がわからんのだ??自分は多分、アホなんだろう。最後に編集部付記として、その落ちに関する解説がついているのだが、それでもワカランヤッタ(;_;) まっ、いいや。次行ってみよう(^o^)/と、巻末の作品リストを眺めた評者。おお、デビュー作は『千尋の闇』なんだけど、日本では二作目『リオノーラの肖像』と五作目の『さよならは言わないで』が先に訳されたわけだ。じゃあ、デビュー作『千尋の闇』を図書館から借りて…いやいや、確か積読本の中にゴダードがあったような…な~んだ『千尋の闇』『リオノーラの肖像』『永遠に去りぬ』『日輪の果て』『惜別の賦』は、持ってるじゃないか、ハハハ。安心印作家として、過去に結構買ってるんじゃないか。買いっぱなしじゃねえか、ハハハ。(20031005) ※巻末よりロバート・ゴダード作品リスト 『千尋の闇』1986年 創元推理文庫 『リオノーラの肖像』1988年 文春文庫 『闇に浮かぶ絵』1989年 文春文庫 『蒼穹のかなたへ』1990年 文春文庫 『さよならは言わないで』1991年 扶桑社ミステリー 『鉄の絆』1992年 創元推理文庫 『閉じられた輪』1993年 講談社文庫 『永遠に去りぬ』1995年 創元推理文庫 『日輪の果て』1996年 文春文庫 『蒼穹のかなたへ』の続編 『惜別の賦』1997年 創元推理文庫 『一瞬の光の中で』1998年 扶桑社ミステリー 『石に刻まれた時間』1999年 本書 『今ふたたびの海』2000年 講談社文庫 そういえば、今年もう、その後の作品が出版されたような…調べるのが面倒じゃ。おやすみ。 書評一覧 ↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら
by kotodomo
| 2005-06-28 07:51
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