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「本のことども」by聖月

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2005年 06月 30日

×「東京湾景」 吉田修一 新潮社 1400円 2003/10


 今年の春先、初めてゆりかもめに乗って、お台場ってところまで行って、対岸の港区、品川区を眺めた評者なのであった。レイボーブリッジや海浜公園やフジテレビ、そんな東京湾景の物語である本書。そういえば、東京生活の長かった評者も、東京湾にはあまり縁がなく、イメージ東京地図(要するに評者の脳みその中の地図)の中には東京湾ていうのがなかったはずである。当時、何度も羽田空港を利用していた評者。ある日ある時地図で羽田空港の場所を確認して、“空港ってこんな南にあったの!!知らなんだ。浜松町沖にあるかと思ってたど!!”と驚愕したくらいの東京湾認識なのである。

 そういう風景は中々いいのだが…久しぶりに面白くない小説を読んだというのが素直な感想である。普通、評者の評価は悪くても、まあ読む人によってはなんて譲歩するのだが、本書に対しては譲歩しない。はっきり、面白くな~い。

 「小説新潮」で断続的に書いていた続き物小説を、一緒にまとめた小説が本書『東京湾景』である。2002/9に初出の第1章「東京モノレール」。携帯の出会い系サイトで知り合った女性と待ち合わせするところまでこぎつけた肉体港湾労働者青年主人公。待ち合わせ場所は、羽田空港。なんで?彼女の勤務先が浜松町。でも未だにモノレールに乗ったことがないという。乗ってみたいという。そして待ち合わせ場所に来た女性は、素敵な女性。二人は一緒にモノレールに乗って…第1章は終わる。多分、著者が思いついたのは、この思わせぶりな最初の部分だけだったのではないかな。あとの話は、なんかとってつけたような話で、ワシでも書けそ、みたいな。結局は恋愛小説なのだが、なぜ彼女は最初のデートをああいうシテュエーションにしたのか、途中ででてくる女流作家の位置付けがなんなのか、いろんなことがそのままの小説なのである。

 結局吉田修一『日曜日たち』は読むべし、『東京湾景』面白くな~いで1勝1敗でタイでイーブンな評者なのである。(20031220)


※鹿児島市立図書館で借りる。表紙の写真がなかなかよい(お台場を知っていれば。評者は知っている、エヘン)。

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by kotodomo | 2005-06-30 15:32 | 書評 | Trackback(1) | Comments(0)
Tracked from くまのブログ at 2006-08-28 23:27
タイトル : 東京湾景(吉田 修一)
★★★★☆ 秀作というほどではないけど、なかなかよかった。 吉田修一らしい作品。 賞を取るレベルにはないけど、吉田修一が読みたい!という人の期待は裏切っていない。 もう少し、言葉がきれいだったらいいような気もするんだけど、下手にきれいにすると嘘くさくなるから..... more


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