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2005年 07月 01日
“終わりなき無限の書を作る”はてさて、そんなことができるのだろうか?いや、終わりなき物語であれば、体裁は別にしても色んなアイディアは出てくるだろう。「僕は歩く」と帯に書いて、メビウスの環状にすれば、僕が無限に歩きつづける物語の完成。歌詞みたいに、文末に「くりかえす」「冒頭へ戻る」とか入れれば、これも無限。でも、こんなのじゃ単なる理屈であって、書かれた物の面白さ度外視の屁理屈なのである。 ただ、現在の媒体の発達を利用すれば、面白く無限な小説というのはある意味存在させることができる。ネットの世界を通じて。「むかしむかし、おじいさんとおばあさんが住んでいました」こういう書き出しだけ設定して、あとは書き込み自由参加型の続き物小説としておくのである。サイトとしての人気さえあれば、物語は永遠に続いていくし、分岐を生かすツリー形式にすれば、最初は一本の幹から発生した話も、枝葉があっちこっち自由に伸びていくように、いくつもの違った話の展開が伸びていくだろう。ただし、条件はつけなければならない。決して話を終わらせようとしないことという。我が家の下の娘みたいに“パパ、パパ、お話してあげる。むかしむかし、桃太郎が生まれませんでした。はい、おしまい♪”などと、話を無理に切り上げてしまうことに喜びを感じてしまう人も多いだろうから。(笑) しかし、本書『サラマンダー -無限の書-』の主人公は、本という体裁の中だけでそれを実現しようとする。要するに、紙とインクとそのための活字などのみに頼って。時は、時は、時は…???いつだっけ?評者の手元には、もうこの本がない。図書館に返してしまった。評者の知っている唯一の世界史の年号が1789(火縄くすぶるじゃ)年のフランス革命。確かこれより前だったな。フランス革命勃発より前の、カナダ発、ヨーロッパ経由、アジア経由、イギリス着、世界一周船の旅付き、無限の書をめぐる物語なのである。えっ?何言ってるかわかんない?じゃあ、丁寧に… 無限の書を作りたいという主に招かれ、イギリスからその館を訪れた主人公。構成から活字組み、製本まで一人でやらなければならない、フランス革命前(しつこい?)、グーテンベルグより後の中世のヨーロッパが舞台。ところが訪れた館は、奇妙な機械仕掛けの館。ベッドも食堂も書庫も、それぞれが屋敷内を移動しており、その位置関係もわからなくなってしまう主人公。簡単な印刷補助のロボットまでいるこの小説世界は、少し幻想的、SF的。そんな中で、館の主の娘と意見交換しながら、なんとか無限の書を作ろうとする主人公。話は、こんな調子で最後まで進んでいくんだろうと思っていた評者(実は表紙カバー内側にそれ以上の粗筋が書いてあるのだが、評者は読まないようにしているのだ)。ところが、話は一転、主人公と仲間たちの船の旅、冒険の旅へと変わっていくのである。一粒で二度おいしい構造の物語なのである。途中、いきなりパイカという少女が登場する。この登場の仕方が評者は好きであり、印象に残った部分でもある。まあ、読んでみてちょ。 航海の途中でシナ(中国)にも寄るが、相当な距離を踏破する人形伝言ロボットみたいなのも登場。そんなのこの当時にあるわけないわけで、そういう著者の独特の世界に馴染めるかどうかが、読み手としてのポイントかもしれない。 “無限の書とは”ということで哲学してみたい方、不思議な世界を船旅で冒険してみたい方、どちらか一方の興味があれば是非御一読を。(20040209) ※鹿児島市立図書館で借りる。 書評一覧 ↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら |
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