2005年 07月 01日
悪徳刑事禿鷹シリーズ第3弾。禿鷹Ⅱが面白かったので、それと比べるとやや単調。しかし、シリーズをⅡまで読み進めてきた読者にはそこそこ面白いし、必読かと。逆にⅠもⅡも読んでいない読者がいきなりこの作品から読んだとしたら、禿鷹の人物描写とかに説明不足を感じてイマイチ消化不良じゃないのかな。 シリーズを知らない方のために説明すると、舞台は渋谷。二つの日本の暴力組織に、南米系の暴力組織がぶつかる構図。この三つの組織のパワーの綱引きに、神宮署の一匹狼刑事:通称ハゲタカが絡んでの、闇世界、裏世界、暴力世界をサラリとマッタリと書いた物語なのである。この禿鷹という刑事が悪い。悪の世界を仕切っている輩を、それを上回る悪で仕切る。心底悪いやつなのだが、服装のセンスはいいし、セリフは的を射ていて頭のキレを伺わせるし、とにかく強くてしょうがないし、なんか凄い悪い心を持ったゴルゴ13が刑事をやっているようで、嫌なやつなんだけど主人公でもまあいいか、といった具合である。 今回の物語は、よくよく考えてみると可笑しい。読後、よく設定を考えてみると可笑しい。シリーズⅠやⅡでは、暴力組織の抗争や利権があり、そこに乗じて悪を働いた禿鷹の活躍?の物語であった。ところが本書では、暴力組織の人々は、平和に平和に過ごしている。裏の世界の金を吸い上げるようなシノギの構図は変わらないが、組織どうしが抗争を起こすとかいう動きもなく、オトナシクオトナシク過ごしている。火の気もなく煙も立たないような平和の中に、禿鷹が勝手に火の粉を撒き散らし、まるで暴力の放火魔となった禿鷹のせいで、渋谷の街には疑心暗鬼の薄闇がかかる。そう、今回は禿鷹が一人で事件を起こして、一人で悪を支配し、一人で活躍するので可笑しいのである。暴力組織の人々はオトナシクしているのに、悪徳刑事が一人でハシャイデいるのが、なんか可笑しいのである。 これまでと違い、暴力組織どうしの難しい利権とか、海外からの殺し屋参上とか、そういう特別な設定は本書には一切ない。ただ、禿鷹が一人でハシャイデ終わる物語なのである。興味のある方は、どうぞご笑覧あれかし。(20040217) ※シリーズ中、Ⅱは必見。ただし、やはりⅠがあってのⅡなので、読んでみたいかたは二冊セットで読まれればいいかも知れない。Ⅲはその延長線上で。 書評一覧 ↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら
by kotodomo
| 2005-07-01 09:43
| 書評
|
Trackback
|
Comments(0)
|
アバウト
カテゴリ
ことどもカテゴリ
意外と書評が揃っているかもしれない「作家のことども」
ポール・アルテのことども アゴタ・クリストフのことども ジェフリー・ディーヴァーのことども ロバート・B・パーカーのことども アントニイ・バークリーのことども レジナルド・ヒルのことども ジョー・R・ランズデールのことども デニス・レヘインのことども パーシヴァル・ワイルドのことども 阿部和重のことども 荒山徹のことども 飯嶋和一のことども 五十嵐貴久のことども 伊坂幸太郎のことども 伊集院静『海峡』三部作のことども 絲山秋子のことども 稲見一良のことども 逢坂剛のことども 大崎善生のことども 小川洋子のことども 荻原浩のことども 奥泉光のことども 奥田英朗のことども 香納諒一のことども 北森鴻:冬狐堂シリーズのことども 京極夏彦のことども 桐野夏生のことども 久坂部羊のことども 黒川博行・疫病神シリーズのことども 古処誠二(大戦末期物)のことども 朔立木のことども さくら剛のことども 佐藤正午のことども 沢井鯨のことども 柴田よしきのことども 島田荘司のことども 清水義範のことども 殊能将之のことども 翔田寛のことども 白石一文のことども 真保裕一のことども 瀬尾まいこのことども 高村薫のことども 嶽本野ばらのことども 恒川光太郎のことども 長嶋有のことども 西加奈子のことども 野沢尚:龍時のことども ハセベバクシンオー様のことども 初野晴のことども 花村萬月のことども 原りょうのことども 東野圭吾のことども 樋口有介のことども 深町秋生のことども 『深町秋生の新人日記』リンク 藤谷治のことども 藤原伊織のことども 古川日出男のことども 舞城王太郎のことども 町田康のことども 道田泰司大先生のクリシンなことども 三羽省吾のことども 村上春樹のことども 室積光のことども 森絵都:DIVEのことなど 森巣博のことども 森雅裕のことども 横山秀夫のことども 米村圭伍のことども 綿矢りさ姫のことども このミス大賞のことども ノンフィクションのことども その他全書評一覧 最新のコメント
最新のトラックバック
|
ファン申請 |
||