2005年 07月 01日
毎週一回、週始めに更新するのが最近の国民の総意になりつつあるという「本のことども」。先週、更新しなかったばかりに、寝込む人、メールで抗議や励ましのお便りをくれる人、夫婦喧嘩をする人、トルコに亡命しようとする人、色んな反応があった一週間であった。 ところで何ゆえに更新しなかったのかというと… 評者は、書評は書くが、サイトの維持管理者ではない。毎回、ワードで適当に書いた文章を管理人さんにメールで送って、更新してもらっているわけなのである。これまでは、日曜に書いて、月曜日に会社のパソコンからメールで送るのがパターンであった。 ところが、4月30日をもってそれまでの会社を退職し、5月10日に東京に単身進出し、世界をまたにかける仕事を始めることと相成ったため、それができなくなってしまったのである。えっ?家がオンラインになったんだから、そこから原稿送ればいいじゃんって?いや、ことはそんなに簡単ではない。評者の書斎に古い形式のPCがあって、これがいわゆる執筆用のオフラインPCである。そしてお茶の間に“ヤマダオリジナル”のデスクトップ49,800円のPCがあって、こちらは光ファイバーでオンラインPCである。さすが49,800円とお安いだけあって、キーボードのタッチは今ふたつみっつよっつってな感じ。 タッチというよりボタンを押すような感覚である。おまけにお茶の間にあるので、環境的にもゆっくりこのPCで文章を書く気になれない。それで、書斎のPCでワード文章を書いて、フロッピーに落として、これまでそれを会社のPCに入れてメールしていたのを、お茶の間から送ればいいのにと思うかもしれないが、さすが49,800円の最新式格安機だけあって、標準でフロッピーに対応していないのでダメなのである。CDはRWなのだが、書斎の古いPCのほうがCDに書き込むことができないので、これもまたダメなのである。だから、次の原稿は東京の新しい事務所のPCから送ることにして、一回休みを決め込んだのである。以上がハード的事情。 そいでもって、5月1日から9日まで一応表面上は9連休なので、上京のいろんな準備なんかあるけど本がたくさん読めると思っていたら…初日パチンコに行ったのがいけなかった。いや、勝ったのである。勝って家族を連れて焼き肉を食いに行った。翌日のお昼は下の娘とウナギ屋でデートの約束を果たした後、一応パチンコに出向いて…また勝ってしまった。仕方がないので、家族を連れて寿司を食べに行った。翌日、家族で公園に遊びにいって、その後性懲りもなくパチンコに行って、また勝ってしまって家族でファミレスに。とにかくそんなこんなで5月に入ってからパチンコ負けなしで、結局5月5日なんかは、もう連れていく店も思いつけず、パチンコの帰りに大きなケーキを2個買って“ほい、子供の日と、ちと早い母の日”なんて所作に出て、まあそれはどうでもいいのだけど、結局パチンコと家族のために時間を費やし、全然本なんか読まなかったのである。ハハハのハ。 で、とりあえず紹介するのが、4月29日に読了したままホッタラカシニしていた本書『猟犬探偵』稲見一良(いつら)である。今から3年くらい前、よしたくさん本を読むぞと大いなる決意をし、とりあえず過去の“このミステリーがすごい!”でどんな作品がランクインしていたのか、そんなとこから取り掛かったときに…稲見一良?誰じゃ、それ?と目にとまったのがこの作家との出会いである。このミス91年版で『ソー・ザップ!』が15位にランクイン、92年版で既評『ダック・コール』が3位に、94年版で『セント・メリーのリボン』が3位に、そして95年版で本書『猟犬探偵』と『男は籏』がともに5位にランクインして、その後はこのミスに名前が出てこないのである。実は、この『猟犬探偵』が出た年に、闘病も力尽き癌に負けて亡くなっているのである。そこまでわかったところでとりあえず『ダック・コール』を読んだ評者…いやあ、泣けました、沁みました、心が洗われました。当時の評者の清々しい心中を知りたい方は、是非、既評『ダック・コール』の書評を読んでくんなまし。その後『セント・メリーのリボン』『男は籏』『花見川のハック』などの秀作を読み進めた評者なのだが、これらの作品は書評にしたのは、確か『花見川のハック』くらいのもんだったか。 そいでもって本書『猟犬探偵』は古書店で100円で買ったまま、積読中だったのである。そして先に述べたような理由で、あまりにも本を消化していない最近であったので、あっさりと読めるだろうと本書を手にとったのである。あっさりと読んだけど、実にかっこいい。男の美学が素敵である。ワイルドなハードボイルドが心地良い。猟犬探偵とは、探偵が猟犬ってわけじゃないし、猟犬を使って探偵をするというのともちょっと違う。評者もよく知らなかったのだが、犬を連れて猟に出て、獲物を追ったままその猟犬が帰ってこないことがあるらしい。猪みたいな獲物に傷つけられたのか、どっかの谷に落ちたのか、そういういなくなった猟犬を、愛犬ジョーと一緒になって探す探偵がこの主人公なのである。極めてクールでカッコイイ。 ただ、ネットで調べてみると、本書は品切れ重版未定と表記されるので、1994/5発行の単行本か1997/7発行の文庫本を古書店、もしくは図書館でっていうのが妥当なところかな。そうそう、実は先に出された『セント・メリーのリボン』の表題作が、この猟犬探偵の初登場作品なので、是非そちらを読んでから連作短編集である本書を読んで欲しい。結構『セント・メリーのリボン』での出来事が引き合いに出されたりしているので、面白味が倍増すること請け合いだ。いいねえ、タフガイなハードボイルドは。(20040429) ※『男は籏』以外、今回紹介した作品群はすべて短編集なので、お気軽にどうぞ。 書評一覧 ↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら
by kotodomo
| 2005-07-01 11:23
| 書評
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Comments(2)
Tracked
from たりぃの好きなもの
at 2005-07-26 23:59
少し前にTB戴いていましたが、パソコンが壊れていたため返せませんでした。
しかし、今日パソコン直って来たため遅まきながらTB返させてもらいますね。
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