2005年 07月 01日
この2、3年、娘二人は夏になるとプールばかり所望するので、以前のように一緒に海に行っていない評者の家族なのである。娘二人の理由は、海にはウォータースライダーがないのでプールがいいというものである。嫁さんも海よりはプールのほうがいいという。こちらの理由は、海にはロクなシャワー施設がないという、なんだかどうでもいいような理由である。そんなこと言えば、今度家族で行く予定の東京ディズニーランド&シーにもシャワー施設なんかないぞ!と、関係ないことを心の裡で呟く評者。咳をしても一人。 評者だけは、プールよりも海が好き。いつも家族で行っていた海は、鹿児島は吹上浜。遠浅ながら海流が不規則で、外国船による拉致のシンボルマーク的海岸なので、キャンプのメッカではあるのだが、遊泳場としては整備されていない。だから、簡単なシャワー設備しかないんだけど。そいでもって、チョロチョロとしか出ないシャワーの下に、小ネズミの死骸かなんかあったりするんだけど。それでも評者は海が好き。防砂林の松林を抜けると、眩しい白浜が広がる。その途中に「不審な船舶を見たら・・・」の立看板があったりするのだけど。それでも評者は海が好き。海岸で貝をひらう、娘たち。バケツに集めて持って帰るんだと。持って帰っても、どうせ邪魔になるとは経験豊かな評者は知っているのだけど、そんなことは海の前ではシーッ!の内緒の話。海では好きなことをすればいいのである。小さなカニを見て喜び、ヤドカリをツンツンして、海につかって足に何か当たったぞ!と急いで岸に逃げてみたり。漂流物か小魚か?いやいや、小さなサメかも知れん。 ひとしきり遊んで、さあ帰ろうか。チョロチョロのシャワーを浴びて、洋服に着替えて、さあ、帰ろうか。帰りにファミレス寄って帰ろうか。"ねえ、パパ♪後始末しなくていいの?"後始末ちゃんとしたよ。ほらゴミも片付けたし。"ううん、パパ。海の後始末。海にフタして帰んなくてもいいの?" 本書『海のふた』は、作家よしもとばななと版画家名嘉睦稔のコラボレート作品である。小説と版画の奏でる風景に身を寄せなさい、そういう雰囲気の作品である。主人公はカキ氷屋を自分で営む若い女性なのだが、粗筋がどうとか関係ない。主人公が見つめる風景に、鹿児島は坊津の風景を重ね、吹上浜の夕暮れを感じる。人それぞれに、自分が体験した風景を思い出さずにおれない、そういう作品なのである。版画を眺める。評者は美的センスがないのでよくわからない。よくわからないのだけど、116頁にある「愛する湾」は好きである。夕暮れにキラキラ光る湾。どこで見たんだろう?でも、どこか懐かしい。どこぞの映画で観た風景かも?でも、やっぱ懐かしい。 本当に粗筋なんて、あって無いようなものである。田舎の海で、カキ氷屋を始めた主人公。その彼女と、はじめちゃんという年下の少女とのひと夏の交流を、風景的に描いただけの作品。感じて、思い出す。懐かしく思い出す。そういための小説と版画の作品なのである。(20040911) ※「愛する湾」の名嘉睦稔のインターネット美術館内で検索閲覧できまっせ。よっぽど画像を持ってこようかと思ったけど、失礼にあたるのと、その他の作品もみてもらえるように。 書評一覧 ↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら
by kotodomo
| 2005-07-01 14:21
| 書評
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from 今日何読んだ?どうだった??
at 2005-08-07 22:55
タイトル : 「海のふた」 よしもとばなな
海のふたposted with 簡単リンクくん at 2005. 5.31吉本 ばなな / 吉本 ばなな〔著〕 / 吉本 ばなな〔著〕ロッキング・オン (2004.6)通常1~3週間以内に発送します。オンライン書店ビーケーワンで詳細を見る... more |
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