2005年 08月 10日
よくないことはわかっているのに、もうこんなことはやめなきゃ・・・というのは、飲酒の癖でもないし、小人閑居したときすぐに雑誌を取り出しズボンを下ろすことでもない。つまりインシュでもシュインでもない。ポール・アルテである。この作家の新刊を読んでも自分には面白く感じないことはわかっているのに、なぜか止められず読んでしまうのである。そして、面白くなかったと感想に書き、文句を垂れるのはもう止めようと思っているのに、なぜか読んでしまう。理由はひとつ。本邦デビュー作▲『第四の扉』をリアルタイムで読んでしまい、その後新作が出るたびに何気にコンプリしているだけの話である。 で、本書もダメだった評者。まったくもって、本格ミステリな本書。犯人として考えうる登場人物の数もほどほど、不可能と思われる殺害のトリックを考えるために用意される屋敷の構造もほどほど、実にお手本のような推理小説である。だから、結構評判がいいアルテなのだが、評者にはダメ。謎の向こうに深みがないからである。味わいとでも言おうか。逆に、本格物の好悪の判断で評者が大事にしている動機に必然性がないので、なんだかなあと思ってしまうのである。 一応の粗筋は・・・女性が殺され、頭皮が剥がされた状態で発見される。それを目撃したうら若き女性マージョリー。そしてマージョリーの下宿でも、同宿人が殺害される。実は75年前にも、この下宿で同様の状況(カーテンの陰)で殺害された人物がいるという。果たして、この3つの殺人事件の関係は?犯人は?方法は?動機は? で、動機が出てくるのだが・・・そんな動機じゃ人は人を殺さないって。たとえそういう人間がいたとしても、殺した上に頭皮まで剥ぐ、そこまでの動機の必然性がないって。それとついでに文句言わせてもらうと、被害にあった叔母の復讐を誓う甥・・・叔母が傷害の被害にあったからって言って、普通の甥は復讐誓わないって。評者の叔母が犯罪に巻き込まれたら色々と考えるところはあるかも知れないが、叔母の仇!なんて絶対思わんて。それと、本書の設定の礎にある、昔の事件。舞台女優が監督から役柄用として頭髪の美容液を預かり、それを美容師に施してもらったら、頭髪にとんでもないダメージが・・・っていうあの事件。その原因については、ホッタラカシ。なのに、それが元となって逆恨みっていう構図はちょっと乱暴。あと色々。何故に犯人は頭皮を投げ捨てるのか。何故に第一の殺人のとき犯人は現場に戻ってきたのか。そういったことが、ようわからんまま。 もう、読まない。ポール・アルテはもう新作が出ても読まない。面白い人には面白いのだろうけど、評者にはダメ。四作読んでやっとわかったバカヤロウ様の評者である。でも、やめようと思ってもなあ。中々なあ。インシュやシュインやアルテって、癖というか病みたいなもんだからなあ。(20050810) ※「ポール・アルテのことども」(書評No550) 書評一覧 ↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら
by kotodomo
| 2005-08-10 11:54
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