2005年 10月 30日
評者が幼き時分、両親が使っていたカーボン紙を自分も使用してみたくて仕方がなかったのだが、遊びに使っちゃ駄目と言われ、ああ僕ちゃんも早く大人になってカーボン紙を思い切り使って鉄腕アトムの双子絵をなんて夢想したものだったが、大人になってみたらカーボン紙なんて消えてしまった。領収書を中心に、今でもカーボン機能を持つ用紙は使わないこともないが、あの黒とか青とかのビラビラした紙じゃないし、鉄腕アトムの絵の描き方ももう忘れてしまっている。 じゃあ、カーボンを使うことはないのかというと、実は日常的に仕事で使っているわけで、これを読んでいるあなたも、私的にはあまり使うことはないにしても、仕事場の風景で使っている人は多いんじゃないかな。そう、メーラーのCC(カーボンコピー)やBCC(ブラインドカーボンコピー)の機能である。例えば、社長宛に直接報告書をメールする場合、上司にもこのように報告しましたという意味でCCの宛先に入れたり、また社長が上司に相談せず直接私に報告書をなんて言った場合、上司と仲良しこよしの間柄なら、一応BCCに上司の宛先を入れれば、社長にはそのコピーメールが上司まで回ったことは伏せることができるわけ。そう、メールのカーボンコピーという形で、評者も使っているわけだ。あの機能がないと・・・すっげえ大変だよな。 そういえば、その昔、米国の大物アーティストが来日して、あるファンがサイン貰うのに適当なものがなくて、ザウルス(電子手帳)にサイン貰ったらしいんだけど、見せびらかすたびに俺にもくれなんて言われて、ザウルス仲間でそのサインが広まって、結局デジタル世界ではオリジナルなサインがどれだっけ?みたいな話があったなあ。 本書『オルタード・カーボン』は、人間の精神のカーボンコピーが当たり前の世界のお話である。もし、あなたが自動車事故で亡くなっても、首に埋め込まれた装置が無事であれば、別の肉体に埋め込み、姿かたちは変わっても、再生できるという話。もしくは、お金持ちなら、そろそろ飽きたし変えようかしら、なんて感じで。 で、ある金持ちの人物が自殺するのだが、その装置は無傷。当然、その人物は再生して、自分には自殺する動機が見つからない、警察は自殺と断定したが、本当は他殺ではないのかと疑い、主人公にその調査を依頼するという話。中々に興味深い設定。加えて、どこまでも、古典的ハードボイルド。その精緻な描写が沁みてくる。はずだったのだが・・・。 例えば、右の桶から左の桶へ、ザルを使って水を移すようなそんな作業を思い浮かべた場合、右の桶が空っぽになっても、左の桶には少しの水。桶と桶の間は水浸し・・・そんな感じのする今回の評者の読書体験。なぜか、頭に入ってこないのである。しっかりした作り、興味深いSF設定、そしてミステリーとしてもしっかり構成されているのにだ。評者の好きなシックなハードボイルドなのにだ。理由はわからないが、なぜか今回の読書はそんなだったため、読むのがつらくて評価が下がってしまった。他所の書評みても、多くの人は面白いと書いているので、本書は多分、評者の評価記号以上に面白いはず。本書は多分、面白いはずだからねえ(^O^)/今回の評者の評価に惑わされないように(^O^)/ しかし、着せ替え人形みたいに自分の姿形を選べるのなら・・・キムタクは駄目。雰囲気はそれなりにカッコイイとは思うが、目が離れている自分というのは好みではない(ちなみに、下の娘に、キムタクって目が離れてるけど、ママ、あんなののどこがいいのかねえ?って言ったら、パパ♪人間はみんな右の目と左の目は離れているんだよ♪と言われたことがある)。ヨン様も駄目。肌がスベスベしている自分は好きくないダスミダ。よく考えると、自分は自分。今のままでないと、自分じゃないや。自分のままでいいよと思ってしまうわけで、そういう意味で、本書の中の人々は違和感とかないのかなあ。(20051030) ※多分、2回、3回と再読するほどに面白く感じる小説。その精緻さが浮かび上がってくるはず。評者は疲れたのでもう読まんが。(書評No584) 書評一覧 ↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら
by kotodomo
| 2005-10-30 06:33
| 書評
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Comments(2)
Tracked
from M's BOOKcaSe
at 2005-11-20 20:15
タイトル : 興奮っ!のエンタメ。《オルタード・カーボン》
「オルタード・カーボン」リチャード・モーガン ♪♪♪ これぞ、一流エンターテインメント! たいていこの感想に異論はないんじゃないかなぁ。最高! 表紙も素晴らしく目を惹きましたよー。 ここに出ているのはカバーで、中に上下巻が入ってるんですけど そっちもやっぱり..... more
こんばんは。また来てしまいましたっ。
聖月さんが読んだ多くの書評と同じく、ワタクシも面白かったです…^^ というか、表紙が気に入ってしまうと大抵は物語も好きになってしまうという 単純きわまりない脳みそなんですけども。 「今のままが自分」に うん、うん。って頷いてしまいました。 トラックバックさせていただきました。
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MOWさん こんばんび いつでも 一日何回でも来てくださいまし。
いやね、本当はね、こんなカッコイイ感じ、みたいなのもいいんですが、とにかく自分を磨かなけりゃですね。最近、ダブダブだし(^^ゞ とにかく、実感のない自分は想像できないですね。 私もTB(^^)v |
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