2005年 11月 25日

『告白』も『告白』も買わなかったという告白


仕事の相棒の誕生日に『告白』町田康をプレゼントすると言っていた聖月っち。
誕生日はもう過ぎているのだが、ご本人、今山に籠もっているので不在。
日曜日に、久々顔を会せるので、その時に渡そうと本日本屋に行った次第。

なんと『告白』町田康、あの大傑作が書棚にないではないか。
店員に訊こうかと思ったけど、
あの蘇我入鹿か馬子の旦那様が書いた逃亡米兵日記の『告白』
あれが大々的にディスプレイされているのを見ると、
店員に“ああ、あれですね”と大きく勘違いされることを想像してしまい・・・
結局、『告白』をプレするとのコミットメントは反古に。

だから別の本を買ったのであるのことよ私は・・・
色々と読んで欲しい本候補作はたくさんあるからさ。

さて何買ったのかなあ?聖月っちは?





 ページを繰る手が止まらない一気読みの一冊である。大傑作である。主人公に悩みの種はないわけじゃないけれど、冒険して成長してどこかボケっとしていて、そして読む者の心を弾ませてくれる。久々の快読。心地良い読書タイム。◎◎『雨にもまけず粗茶一服』松村栄子以来か・・・いやいや◎◎『逃亡くそたわけ』絲山秋子以来の快感読書だわなあ・・・とにかく、屈託なく楽しめる一冊!!!読むべし、読むべし、べし、べし、べし!!!

 前半は、東京の中野に住む小学6年生の男子主人公の、日常の冒険の物語。女風呂を覗いたり(評者は、6年生のとき女子の健康診断を覗いて大いに興奮した記憶がある。まだまだこれからっていうときに、友人が“もう帰るぞ”と言って、後ろ髪引かれながら帰った記憶がある。なぜ、あのとき、友人が急にああいうことを言い出したのか、今となってはわからない。好きな女の子の裸を覗くことに罪悪感でも覚えたのだろうか?評者の気持ちと恥骨はもっともっと見ようぜって感じだったのだが・・・今考えると、一緒に帰らなきゃよかった。もっと見ればよかった・・・)、初めての夢精に戸惑ったり(評者には小学6年生でこの経験はない。じゃあ、いつかというと19歳のときに人ん家の下宿で一回きり。それっきり。男数人雑魚寝の、夏の暑い早朝の六畳間。寝苦しくて、夢精・・・トホホ・・・最初で最後の体験)、下半身の毛が生えただのどうだの(評者はこれは早かった。修学旅行で比較したら、クラスで2番目に立派に生え揃っていたぞ!どや!)、そういう冒険なのだが、実はこういう思春期前の子供らしい日常の描写はまったくの肴のツマ。肝心なのは、主人公の日常には、生まれてこの方一緒に暮らしてきていた異常な父親と、初めて出会う中学生暴力野郎の異常な世界という、日常的であってほしくない日常が存在するのである。前半は、この二つの異常な世界が物語の読みどころ。

 中学生暴力野郎の話はいいとして、異常な父親の異常性が素晴らしい(笑)。学生運動から反体制運動を経てきた父親は、とにかく体制に反目する。学校も学校の先生も体制の手先なのだから、学校なんか通わなくていいと断言し(それでも主人公兄妹は通っている)、家庭訪問では若い先生に詰問を浴びせ、修学旅行の積立金を問題にして学校に乗り込む。子供にとっては迷惑な父親この上ない。評者も迷惑な父親(酔っ払いの世界チャンピオン、非常識人のプロ)を持つ身だったので、主人公の気持ちがよくわかる。よくわかるのだが、この父親、言うことが中々正論で楽しいのである。まあ、読んでみるべし。

 一転、後半は、家族で沖縄の西表島に移住してしまう話。ここで評者は昔観た「モスキート・コースト」というハリソン・フォード主演の映画を思い出す。文明の中で普通に暮らしていたアメリカ人親子。ところが、反体制ならぬ反文明主義の独善的な父親(ハリソン・フォード)の強引な発案で、いきなりアフリカのモスキート・コーストという未開の地に移り住む。冗談じゃねえよ!と思う子供たち。本書『サウスバウンド』の主人公兄妹もウソ?!と思いながら親の行動に従う。しかし、映画でも本書でも同じで、やはりこういうアホ親父には素敵な妻ありなので、子供たちもなんとかやっていくわけなのである。電気もない、ゲームもない、テレビもない、電話もない、本屋もない、とにかく何もないところでの子供たちの生活、アホ親父とよき妻の生活。そして島民たちとの融合・・・面白いぞお!読むべし!

 ところで、いきなり西表島に手ぶら同然で移り住んで生活どうすんの?と思っていた主人公だったのだが、実は島に行ってみるとアホ親父は伝説の血をひくセレブだったのである。断っておくが、セレブとは本来、金持ちでステータスが高いとかいう意味ではない。有名であるという事実だけで生活できる優雅な人々のことである。アホ親父も島に入ればセレブ。大有名人の血をひく大有名人。島のみんなが色々と世話面倒。これまさに、セレブの生活なのである。

 しかし、奥田英朗。デビュー作と伊良部シリーズしか読んでいなかったが、本当に上手いと深く感心した今回の作品。奥田節なんてものはない。重松清に重松節がないように、天性の売文作家たちは、作品によって節を変え、物語を紡いでいくのだ。同様の試みを多くの作家が行っているが、妙にベタに書いてみたり、肩の力を抜いて描いたつもりが手を抜いて描いたように映ったりと、中々こうは描けないものなのだが・・・こりゃあ、この作家、全作品読まなきゃと思わせた本書のパワーと完成度。

 次の本屋大賞は『逃亡くそたわけ』と予言していた評者であるが、予言撤回!本書『サウスバウンド』が次回の本屋大賞である。もしくは、同点同時受賞で両作品とも大賞受賞である。
まあ、評者のいい加減で当たりそうもない予言はいいから、黙って本書を読みなさい。読むべし!読んでおくべし!べし!べし!べし!(20050819)

※奥田英朗コンプリ宣言。全作品読むぞ(^O^)/(書評No553)
[PR]

by kotodomo | 2005-11-25 17:51 | メモる | Trackback | Comments(2)
トラックバックURL : http://kotodomo.exblog.jp/tb/3821395
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Commented by 仕事の相棒 at 2005-12-06 14:33 x
今日は12月6日です。久しぶりに聖月君の世界を覗いております。ここで、僕の誕生プレゼンの話した出てきました。ありがとうございました。聖月君。昔からいろいろ共有しましたね。星新一、武者小路、拓郎のレコード、君のお家、僕のお家、ウインドパーカー、○○さん・・・・。この本は正月休みに、じっくり堪能します。  と、いうような事をここに書けば、僕の今の墓標にもなるんだな。僕も墓標が欲しいよん♪欲しいよん♪
Commented by 聖月 at 2005-12-06 15:11 x
キミの墓標は、キミを取り巻く社員の家族の心の安寧にある。
キミの愛する奥様の、漣の・・・読めるか?サザナミ・・・小波の・・・読めるか?サザナミ・・・細波の・・・読めるか?サザナミ・・・もとい、
キミの愛する奥様の、淪のたたない日常にキミの墓標はあるのだよ。


<< スーパーサラリーマン スーパー...      結局 週末の図書館本は >>