2005年 12月 14日
「トカビの夜」「妖精生物」「摩訶不思議」「花まんま」「送りん婆」「凍蝶」と6つの短編が収められた、言わずと知れた直木賞受賞作品集である。言わずと知れているので、特にああだこうだと、粗筋や感想を書き連ねる気もないが、一言でいえば「トカビの夜」と表題作「花まんま」は評者的には、素敵な短編。その他の作品は、まあまあ。先の2編並の作品が揃っていたら、グリグリの◎◎、珠玉の作品集と言えたのかもしれない。それでも、全体的に良品集。ホラー出身の作家だけど、いいこともする、悪いこともする、そんな座敷童が出てくるような、どこか不思議な物語作品集である。ということで、具体的にどんな作品たちなのかは、自分で読んでみてくれ、他人の書評を覗いてくれ。評者は大いに気になった一点だけ書いておくに留めよう。 大いに気になった一点とは「トカビの夜」の中の描写。近所の男の子を邪険に扱った話が出てくる。その子は、たった今、病気でなくなった。で、ここからが問題なのだが、その子を邪険に扱ったというのが、おもちゃの貸し借りでの話。そのおもちゃを買ってもらったのが、その子がなくなる1ヶ月前だという。そのおもちゃの貸し借りの事件があったというのが数週間前だという・・・???・・・数週間前といえば、慣用句的には、また文語的には5~6週間前。1ヶ月前に買ってもらったおもちゃで、1ヵ月半前には遊んでいたという・・・それこそホラーである。 実は、この“数”、数人とか数個とかいうのを、ネットの辞書で調べると“2,3もしくは、5,6の数”と出てくる・・・4はどうしたの?可哀想じゃないかあ(^O^)/・・・というのはさておいて、元来この数個とかいうときの“数”は慣用句的には5~6の数字を表す。数分間待ってね、といえば5,6分待たなきゃいけないということである。2,3分ではない。じゃあ、2,3分待ってねというときは何て言うの?って、2,3分待ってねと言えばいいのである。現場で数人の若者を見たという目撃証言があれば、それは常識的には5,6人の若者である。えーと、確か若者がいたなあ、どのくらいだっけ、5人?いや6人?7人はいなかったような、いやいたかも、でも残像イメージ的には5人か6人だったような・・・そんな数である。 ところが、最近この“数”が誤って使われだしているのも現状。ダチと数人で夕べ飲みに行ってさあ、なんて若者が使う場合には、2,3人である。そして、この誤用が最近定着してきたので、辞書的にも2,3人の意味として使われる場合もあるよと表記するようになったのである。だから、ネット辞書でも2,3もしくは5,6の数と4が仲間外れなのである。4が可哀想なのである。 何が言いたいのかというと、2,3の数は2,3なのである。残像イメージ的には2とか3は2か3であって、あやふやに数個とかいう数ではないのである。だから、最近新しい意味が定着してきたからといって、こういう用語を新しい意味で小説内で使ってはいけないのである。もし、作者がずっと誤った意味で使ってきたとしても、編集者の段階で、ここは素直に2、3週間前という表記にしましょうよ、朱川さん、誤解を受ける人も多いからですね・・・なんて、あるべきなのである。数週間前を、2,3週間前に書き直すくらい作者はなんとも思わないはずである。とにかく、評者のような者にとっては、この部分の表記はおかしいのである。あれ?この作者、時系列間違ってけつかる!なのである。 もう一度言おう。“数”は5,6である。残像イメージ的に5,6なのである。だから、本当の数が7とか4でも、ちょっとした勘違いで許される数字であるが、それが3とか2だと、なんだ2,3じゃないか!数(個)じゃないじゃないか!と叱られることになるのである。“あんた、今日の日記はもう書いたの?”“数行は書いたけど・・・”“見せてご覧・・・なんだ数行も書いてないじゃない!たった2,3行じゃない!嘘言うんじゃないの。とにかく早く書いてはみがきしてうんこして早く寝なさい”こういう風景が正しい風景なのである。以上、ご清聴ありがとうございました。 ということで本書は、それ以外にはなんの文句もない素敵な短編集である。さすが直木賞である。読み終わって拍手した評者・・・数回パチパチと・・・はい、ちゃんとイメージしてね(^.^)(20051213) ※ふ~ん、花まんま、そういう意味だったのね・・・ 小さいとき、母ちゃんから数は6,7と聞いた記憶もあったような・・・まあ、5,6,7ということで(^^ゞ(書評No603) 書評一覧 ↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら
by kotodomo
| 2005-12-14 09:01
| 書評
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Comments(8)
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from 図書館で本を借りよう!〜..
at 2005-12-15 05:26
タイトル : 「花まんま」朱川湊人
「花まんま」朱川湊人(2005)☆☆☆★★ ※[913]、国内、現代、小説、短編集、ホラー、ファンタジー、ノスタルジー、第133回直木賞受賞 第133回直木賞受賞作「花まんま」含む短編集。各短編はそれぞれ独立しているものの、それぞれ今から丁度30年から40年ほど前のちょっと猥雑な大阪の下町を舞台に、当時小学生だった自分の姿を思い返し、日常の不思議を描くというスタイル。日常に入り込んだ不思議を描くという点ではファンタジーというジャンル、そしてその種類が怪異という点ではホラーにも属するか...... more
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from 粗製♪濫読
at 2005-12-15 18:33
タイトル : 『花まんま』 昔の大阪、そのまんま
著者:朱川湊人 書名:花まんま 発行:文芸春秋 形而上度:★★★★☆ 2002年オール読物推理新人賞を獲得してデビューした朱川氏の、あっという間の直木賞受賞作。東野圭吾はもうだめぽ…。 30年以上前の大阪の長屋街を舞台にした6編の奇妙な話。子供の地縛霊、前世を知る女の子、人を安楽死させる呪文、など。 朱川氏の子供時代の記憶に、心霊話をからめて構成されており、とても読みやすく面白い内容でした。関西生まれの私には「パルナスのケーキ」というのが、いたくなつかしく思えました。 朝鮮...... more
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from Ciel Bleu
at 2005-12-19 08:34
タイトル : 「花まんま」朱川湊人
[amazon] [bk1] 60年代の大阪の下町を舞台にした短編集。表題作「はなまんま」は133回直木賞受賞作。 一読して、「ああ、朱川さんらしいなあ」とい...... more
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from 本を読む女。改訂版
at 2006-01-06 01:10
タイトル : 「花まんま」朱川湊人
花まんま発売元: 文藝春秋価格: ¥ 1,650発売日: 2005/04/23売上ランキング: 5,222おすすめ度 posted with Socialtunes at 2006/01/05 この本を読んで洋菓子店パルナスのCM曲が懐かしくなった関西の方、 こちらで聞けますよ。 発見したときは嬉しかった〜。「トカビの夜」を読んでる最中 気になって仕方がなかったんで。 すいませんローカルネタで。 ・・・と、今パルナスのテーマを聞きながらこの感想を書いています。 知ってます?パルナ...... more
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from 活字中毒日記!
at 2006-03-31 01:43
タイトル : 『花まんま』 朱川湊人 (文藝春秋)
花まんま朱川 湊人 / 文藝春秋(2005/04/23)Amazonランキング:5,263位Amazonおすすめ度:透明で懐かしく、悲しく優しい。話の玉手箱Amazonで詳細を見るBooklogでレビューを見る by Booklog 前々作『都市伝説セピア』が直木賞の候補に上がった時、正直なところ大変驚ろかされたものである。 しかしながら、読んでみて“何か他の作家とは違う独特の郷愁感を醸し出した作家の誕生”に喜びの声を上げた読者も多かったことだろう。 ... more
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from 活字中毒日記!
at 2006-03-31 01:43
タイトル : 第4回新刊グランプリ加点投票&クイズ実施します。
みなさんに盛り上げていただいております第4回新刊グランプリ!(第3回の最終ランキングはこちら)現在525票ものご投票誠にありがとうございます。 現在までの加点前確定ランキングは次の通りです。 1 『死神の精度』 306点 2 『蒲公英草紙』 211点 3 『容疑者Xの献身』 180点 4 『サウスバウンド』 156点 5 『魔王』 139点 6 『その日のまえに』 130点 7 『犬はどこだ』 120点 8 『SPEED』 114点 ...... more
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dai_222 at 2005-12-14 10:30
なるほど〜。
ボクも数人といえば5〜6人と言うよりは、 むしろ2〜3人を連想してしまいます。 言われてみれば確かに2〜3人は2人か3人なのですね。 納得。 というより、全然知りませんでした。 別にどこかで教えてもらった覚えもなく、 自然にそう思っていたのですから、 イメージが正しい意味より普及してるんでしょうね。 不思議ですね〜。
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dai_222さん おはござです(^.^)
昨日ですね、仕事の相棒たちにもインタビューしてみたのですが、特に数にこだわって考えたことはないとの返事。 以前、嫁さんにインタビューしたときは、自分と同じ認識でした。 さすが我が嫁(^O^)/ でも、普及してしまっているんで、口語的には間違いとかじゃない世界になっていますね。 娘たちには伝承しとこうかな(^.^)
明け方、TBするも、ひどい頭痛でそのまま出社、結局、頭痛薬も効かず早退。平日の昼間は、ぼけるのにいいなぁ。
いよいよですか。聖月さん主催、招待のお江戸よさよなら、キャバクラオフの通知をいまや遅しと待っているのですが(笑 この作品、悪くはないのですが、ぼくにはうまく響かないいうか。ウルトラQあたりのノリですかね。
すのさん サボりですかあ、サボりですかあ、サボりですかあああああぁぁぁ!!!
私は職場で毎日サボっていますが(^^ゞ 上海料理オフですか?ちょっと待っていてくんなまし。 上手くて丁寧な作品だとは思います。あとは人それぞれですかね。 私たちの世代だと、小物が楽しく感じられるのですが、それ以外の世代なんかどうなんでしょうね?
へええ、数は5、6、7なんですか。知らなかった。
私の場合、特に具体的な数字をイメージするというのはなくて、 「少し」と「沢山」の間、はっきり分からない時とかぼかしたい時に 使うのかと… というのは今思っただけなので(笑) 本当に以前からそう思ってたかどうかは不明なんですが。あはは。 あ、でも今、オンラインの大辞林で調べてみたら、「数人」というのは 「二、三人から五、六人程度の人数」ですって。 大辞泉でも、「二、三か五、六ぐらいの人数」。 広辞苑はどうなってるのか、見てみたいな。
四季っぺ 今の辞書に2,3人が入っているのは、最近の用法を汲んでのことやで。
本来的には5以上なんや、法律で決まっておるんや(笑) 最近の辞書は「情けは人のためならず」も「人のためやない、自分に巡り巡ってくるんや」という従来の解釈に「情けをかえたら人のためにならんからかけたらあかん」という誤用まで正式に採用しとるんでおま。 時代は変わったなあ。昔の風景がセピア色やなあ。 |
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