「本のことども」by聖月

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2005年 12月 18日

◎◎「東京飄然」 町田康 中央公論新社 1890円 2005/10


 著者町田康が飄然と、東京もしくはその近郊を旅する話である。エッセイでも紀行文でもない。ただただ、町田節の垂れ流しである。冒頭、著者は日帰りの飄然とした旅を思い立ち、早稲田から都電荒川線に乗り・・・かくいう評者も、以前は飄然と旅したものである。

 大学時代、駒込から早稲田に通っていた評者は、通常は山手線なる国鉄だかE電だかジェイアールだかに乗ってこまして通学していたのだが、ときに西ヶ原なんとか丁目あたりから荒川線に乗ってこましたりもして、鹿児島稲門会というやくざの組織みたいな名前だが、その実は県人会にのみ属し、高田馬場でよく飲み、鹿児島県人の飲み会というのは必ず自己紹介イッキやそばイッキや鍋イッキやアタリメイッキや唐揚イッキなんてものをやって酔うて候、んで帰るわけで、一度など高田馬場から駒込まで山の手に乗ったら、お客さん起きんか、蛸!と車掌に起こされて、起きた駅は品川で、なんや、反対側の駅やないけ、引き返したろ、と思ったら、もう電車はなくて、確か高田馬場で乗ったのは10時半だったから2周半くらいしたのやろか、たくさん乗ったもんだなあ、でも料金は2周半分じゃないし儲け儲け、うふょほ、なんて場合じゃなくて、学生の分際で金なんかたいしてないわけで、駅前の当時深夜喫茶という名だったのか24時間喫茶という名だったのか忘れたが、そんなとこで始発待ちと、と思って駅の外に出てみても、んなものはなし。人もいない。今は昔の品川風情。咳をしても一人。仕方がないので、海に向かって歩き始めたら海浜公園みたいのあって、そこのベンチで野宿して、朝方起きて、ピーチネクター買って飲んだら五臓六腑に染み渡ったのはよう覚えておる。顔中、蚊に刺されダラダラだったのも覚えておる。そういう飄然とした旅は一回ではない。

 その後、町田康は友人と連れ立って鎌倉から江ノ島へ飄然と旅をするのだが・・・それだけの話で、自分の飄然とした旅を思い出した評者。その頃はもう社会人であったと当時を回顧する今の自分。勤め先が原宿で、世田谷の経堂に住んでいて、仕事がひけて飲んで、大いに飲んで電車に乗ったら、お客さん起きんか、ボケナス!なんて起こされた駅が、小田急線終点の江ノ島、サザン的な目覚め。そんときは、社会人で多少のお金があったんでビジネスホテルに泊まったなあ、飄然と。翌日は江ノ島から飄然と通勤。いやあ、昨日は寝過ごして江ノ島で起こされて泊まっちゃいましたよお、なんて、その晩も飲んで、大いに飲んで、憶えていなくて、起きたら新宿御苑で上着もなかったあの若さが眩しいなあ、飄然としていたなあ。

 その後、町田康は串カツで飄然とし、飄然を深く考え音楽に瞑想が迷走していくのだが、評者の飄然とした旅をまだまだ聞きたいか?そうか。あれも社会人になってから。当時は東京にはもう住んでおらず、たまたま東京の池袋に出張したときじゃったがなあ、って、爺になったらこんな話し方するのかなあ?知り合いと赤羽で飲んで、電車に乗って、お客さん起きんか、ボボゲ!なんて起こされたところが五反田駅。五反田駅?なんど?埼京線にあらず、京浜東北線にあらず、山の手に乗り換えた記憶もあらず、不思議な自分、僕、俺。夢遊病者のような感じでちゃんと山の手まで乗り換えられたの?自分、僕、俺チン。不思議な頭のまま、初めての白タクに乗った晩。はい、池袋方面おらん?おらん?はいはい乗った乗ったあで4人で一台相乗り。一人7000円。翌日タクシーの運ちゃんに訊いたら、タクシーも7000円くらいで走るとのこと。でも4人分28000円、坊主丸儲けやんけ、という飄然たる評者の旅路は語り尽くせない、騙り尽くせないのであった。

 話を本書に戻そう。とにかく町田康フリークの評者は、ングと笑った箇所が23箇所も(^.^)奇天烈やんけ、この日本語新鮮やなあで。でも、アッパーな店だとか、くんくんした野郎だとか、町田節がわからんやつにはわからんかもなあ。そのあたり、どうよ?(20051218)

※体裁は、写真&エッセイ集なり、飄然にしてうくくな作品集(書評No606)

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by kotodomo | 2005-12-18 23:26 | 書評 | Trackback(1) | Comments(2)
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Tracked from ぱんどら日記 at 2006-01-04 14:10
タイトル : 町田康【東京飄然】
表紙には 作家のとらえた 幻想的な東京 とあって、果たして本当に「幻想的」な内容かどうかは、よくわかりませんが……。 それはともかく、この本は作家の町田康が東京を飄然と旅して書いたエッセイ ――というよりも 小ネタ集 かなっ(笑....... more
Commented by ぱんどら at 2006-01-04 13:40 x
初めまして。そして新年明けましておめでとうございます。

こちらのブログを昨年から拝見していまして、本を購入する際の参考にしたり、トラックバックも何度かつけさせていただいたりしています。

「東京飄然」、こちらのブログを見て興味を持ち、買ってみましたが、とっても面白い本ですね。

またブログのほうを拝見させていただきます。では♪

Commented by 聖月 at 2006-01-05 07:32 x
ぱんどらさん あけおめはじめまして(^.^)

今、鹿児島で飄然としています。本も読まず、パチンコ屋に嫁さんに送ってもらって、飄然と勝ったり負けたりして、帰って飄然と焼酎を飲みながらパチンコ台のルパン三世のテーマを飄然と口ずさみ・・・鹿児島飄然中なのです。

町田康、人によりツボが違うと見えて、わからないという人も結構いますね。
私の中では、多分この作家が最初かな・・・節って呼ばれる作家は。町田節。好きだなあ、町田節です(^.^)

今後ともよろしくお願いします。


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