「本のことども」by聖月

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2006年 02月 05日

婆ちゃん明治43年生れが死んだら、僕は喪主の変わりにこの詩を読むことに決めている

もしものそのときは、内容は改変するけど・・・
せっかくだから、過去の書評リバイバル・・・
詩は最後に・・・


◎◎「雨にもまけず粗茶一服」 松村栄子 マガジンハウス 1995円 2004/7

 聖月“最期の10冊”に本書『雨にもまけず粗茶一服』をセレクトしよう(この、わけのわからない賞の正体は既評『海辺のカフカ』に登場するぞよ)。
 ついでに、今年の必読書にも入れておこう。ジャンルを細かくわければ、ユーモア侘び寂び小説部門の第一位!って、他にそんなジャンルの本はないか(笑)。じゃあ、いつものやつでいきましょうかねえ。本書『雨にもまけず粗茶一服』は、万人向けの面白小説の決定版。読むべし、読むべし、べし、べし、べしなのである。すこぶる痛快、すこぶるお気楽、すこぶる満悦、すこぶるいとおかし、そして最後にはどこかしんみり。味付けは、風情、風流、そこはかとなく。

 読む前に勘違いしていたのだが、表紙絵からユーモア時代物かと思っていた。ところが時代は、現代。でもしかし、舞台はおおよそ京都で、世界も茶道、武道、弓道なので、表紙絵とも違和感のない設定でもある。ちなみに表紙絵の一寸法師みたいなかわいい人物が持っているのは、櫂とか針とかつまようじとかではなく、どうやら茶杓らしい。茶道のときに使う道具のひとつである。

 大学受験に失敗した主人公青年19歳。なんだかんだで、家出する。彼の家は、茶道の家元。継ぐ気もない彼は、友人と京都へ。そしてそこで、居候みたいな住み込みみたいな生活が始まり、京都の文化や生活に馴染んでいくのだが、実は彼には隠し続ける秘密が!!お茶(お点前)が出来ることが、彼の隠し続ける秘密なのである(笑)。なんやそれ?と思うかも知れないが、この味付けが抜群に面白い。印籠を隠し続ける水戸黄門、身分を偽る王子と乞食、ローマの休日の王女、スーパーマン、自分を隠すという物語は、やはり面白いのである。唯一の持ち物が、家を出るとき弟に持たされた、その筋の道具屋に売ればいくらの値がつくかわからないという、家宝のような茶杓というのも、場面、場面の小道具としてグッド。いやあ、実に面白かった。読むべし。

 興味がなくても面白いのが、茶道独特の作法や、世界観。ただ、茶あ飲んでるだけやないのだ。例えば、畳との関係。茶道では位置の確認のために、畳の目が大切。例えば、掛け軸との関係。お茶会のお題に合わせ、軸を選び演出を大切にする。その他、お茶会の花やお菓子にも色んな意味づけがあるのである。
 そして、一番の味付けは、京都弁。京都独特の言い回し。そんな本好きやあらへんというあなたは、相当なイケズかもしれん(笑)

繰り返しになるが、読書の楽しみここにあり。読むべし、読むべし、いとおかし。(20041010)

※題名に使われている「雨にもまけず」。評者はこの言葉をかつてある人物に贈ろうと思っていたくらい好きである(結局、贈っていないが)。うろ覚えの方のために、以下に引用。結構、意味の深い作品かと。(書評No414)



雨にもまけず  宮沢 賢治

雨にもまけず
風にもまけず
雪にも夏の暑さにもまけぬ
丈夫なからだをもち
慾はなく
決して瞋らず
いつもしずかにわらっている
一日に玄米四合と
味噌と少しの野菜をたべ
あらゆることを
じぶんをかんじょうに入れずに
よくみききし わかり
そして わすれず
野原の松の林の蔭の
小さな萱ぶきの小屋にいて
東に病氣のこどもあれば
行って看病してやり
西につかれた母あれば
行ってその稻の束を負い
南に死にそうな人あれば
行って こわがらなくてもいいといい
北にけんかや そしょうがあれば
つまらないから やめろといい
ひでりのときは なみだをながし
さむさのなつは おろおろ あるき
みんなに でくのぼうとよばれ
ほめられもせず
くにもされず
そういうものに
わたしはなりたい
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by kotodomo | 2006-02-05 22:26 | メモる | Trackback | Comments(2)
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Commented by Bodenlose Tiefe at 2006-02-06 14:05 x
う~ん...やはりいいのか.....。
どっかのプログで見かけて読みたかった本。
何とか取り寄せねば...。

しかし宮沢賢治のこの詩を読むと井上陽水の「ワカンナイ」という歌を
思い出すのは私だけだろうか...。
Commented by 聖月 at 2006-02-06 16:08 x
Bodenlose Tiefeさん かなりいいです。随分いいです。
色んな意味で楽しく読めましたね。

陽水、私も昔は大ファンだったのですが、それも『招待状のショー』まで。
「ワカンナイ」はわかんないので、そちらのブログで勉強させていただきます。


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