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「本のことども」by聖月

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2006年 04月 12日

◎「クリスマスに少女は還る」 キャロル・オコンネル 創元推理文庫 1050円 1999/9


 5年ほど前に読みたくて古書店で買ったままの積読本だと、その背表紙を眺めるたびに思っていた評者なのだが、勘違い。いざいざ、やっと読もうと手にとって見れば、なんだ読みたくて読みたくて新刊で買った本であったのことよ(評者の場合、古書店で買った本は、値段シールを貼り付けたまんまにしているので、その違いがわかるのである)。

 なんで読みたかったのかといえば、本の紹介に困る本、内容を書こうとすればネタバレになる本、そんな記事を読んでサプライズを期待して買ったのである。そして、この手の本はどんよりとした暗い粗筋+サプライズみたいな構成の本だと勝手に想像していたのだが、ところが意外や意外、本書はハートウォーミングな粗筋に、サプライズというよりは、これもやはりハートウォーミングな真相に、いやあ、参った参ったなのである。ラストに繋がる展開や背景を考えたとき『消えた少年たち』オーソン・スコット・カードが少年版なら、本書は少女版と並列して位置づけられると思うのだが、前者と比較したとき、本書のほうがよりファンタジックな物語なのではないかな。

 原題は『JUDAS CHILD』=囮の子。少女誘拐事件の物語。なるほどなあと思ったのが、少女誘拐犯のパターンとして、ある少女に狙いを定めた場合、その子がお金持ちのガードの固い家庭の娘なら、誘拐の実行は中々困難。ゆえに、犯人は仲良しの少女を先に誘拐し、直後にその子からの呼び出しという手を使って本命の子を誘き出すという。なるほど。この犯罪の手口の場合、先に誘拐された少女は囮に過ぎず、ターゲットになった子より先に殺害されるという。それゆえの原題なのである。

 先にハートウォーミングと書いたが、その一番のシーンは、誘拐された10歳の少女に思いを寄せる男の子と、主人公警察官との心の雪解けの部分だろう。この少年、事件の端緒を目撃しているのだが、実は非常に内向的な性質で、人前でひと言も口をきかないといっていいくらいなのである。そんな少年が主人公に心を開く場面・・・ありきたりだが、圧巻なのである。あと、誘拐された二人の少女の友情とか・・・なんとも心温まるのである。

 通常、邦題は原題を越えられない場合が多いのだが、本書の『クリスマスに少女は還る』という邦題は妙題。凄くいい(^.^)訳者もしくは出版社が、この題名に何を込めたのか?それがわかったときに、読者は本書がどういう読み物だったのか、あらためて気付かされる。気付きたいあなたは、読むべし。読んでも気付かなかったら・・・考えるべし!(20060412)

※このミス2000年版第6位は、やはりダテではないぞ。(書評No643)

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by kotodomo | 2006-04-12 17:04 | 書評 | Trackback(2) | Comments(0)
Tracked from 日々のちょろいも 2nd at 2006-04-12 23:23
タイトル : 『クリスマスに少女は還る』読了。
 キャロル・オコンネル『クリスマスに少女は還る』の感想をこちらに。いやーん、これはスゴイ。ラストまで読んで呆然。いつまでも後を引くわ…。どんでん返しもの、というとちょっと... more
Tracked from 防犯対策で安全安心を! at 2006-04-18 23:38
タイトル : 小中学生のインターネット学習塾(子供の防犯対策)
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