2006年 06月 03日

超オフ会当日

ということで、行くのです。

せっかくだから、書評を転載しとくだすだす。



◎「パーフェクト・プラン」 柳原慧 宝島社 1680円 2004/1 

b0037682_8282471.jpg 第2回「このミステリーがすごい!」大賞の大賞受賞作である。第1回の大賞金賞『四日間の奇蹟』浅倉卓弥の作品と比べると完成度はそこまでないし、どちらかというとテイストは大賞銀賞『逃亡作法』東山彰良に近い。粗さも目立つ作品ながら、読ませるパワーは内包しており、とにかく、このミス大賞が気になる方なら、まあ読んでみるべしの作品である。

 ところで、芥川賞とか直木賞とか乱歩賞とかメフィスト賞とか、色んな賞がピンからキリまであるが、その賞の意味合いも大きく二つに分かれることはお気づきだろうか。例えば直木賞とかは、既にプロ作家としての道を歩む人々が受賞している。当然、作品は玄人の書いた作品である。ところが、作家デビューのための賞を受賞した作品は、実は素人が書いた作品なのである。素人が書いて、認められ、デビューして、「受賞後第1作」なんて帯で出される次の作品こそが、プロ作家としての実質のデビュー作にあたるのである。まあ、そういう意味では、文筆家を経ずに作家になった人の場合の多くは、デビュー作は素人時代に書いたものと言えるのだと思うのだけど。

 だから本書『パーフェクト・プラン』も素人の書いた作品だと思えば、粗さも無視して、その才能に感ずるものがあるかどうかというが大切なのである。本書は本当に粗さが目立つ。誰にも迷惑かけずに誘拐して5億稼ごうと考えた主人公たち。なぜ、そういう計画を立てることになったのか、よくわからない。また、途中で、あんなに仲のよかった仲間たちが分裂して、なんて話の運びになるが、仲のよさを表すような深い描写がされていないので、作者のご都合主義的に感じてしまう。また、人物描写も、最初ヨボヨボだった爺さんが、後半では元気溌剌だったり、優しさの塊みたいな描写をされていた登場人物が、後半では裏切り者を簡単に殺すような人物にすり替わってしまっていたりする。そんなこんなで、深みとかブレの無さとかは無縁な作品ながら、とにかく読ませるパワーは中々のもので、そういう意味では面白い小説である。

 『四日間の奇蹟』や『逃亡作法』の完成度と比較すると、本書は間違いなく及ばないし、粗を手直しして出版された本書の出来を考えると、第2回の応募作は不作だったのかな?と思ってしまう。しかしながらこの作家のプロ第1作となる次作には、より多く期待してもいいんじゃないかな。(20040826)

※あっ!忘れていた。浅倉卓弥のプロ第1作目の『君の名残を』を図書館に予約しなきゃ。


○「ビッグボーナス」 ハセベバクシンオー 宝島社 1680円 2004/1

b0037682_831468.jpg 今から何年前だろうかと考えてみる。多分17年くらい前。その頃、評者は今でいうフリーター状態。いや、もっとましか。一部上場企業を辞め、次の一部上場企業の面接を受ける合間のつなぎ仕事をやっていたわけだから。で、その時つなぎでやっていたアルバイトが、スロットの試し打ち。パチンコはやっていても、スロットなんてやったことのなかった評者だったけれど、アルバイトニュースの時給とただ打つだけみたいなコピーに誘われて始めたバイトだったのである。実際に行ってみると、パチスロ開発会社の一室で12名くらい、壁に向かって据えられた器械の前でただ打つだけ。本当にただ打つだけ。過度のお喋りでなければ、隣に座る別のアルバイターとの会話は自由。朝の10時から始めて、大抵は残業をお願いされて夜の11時くらいまで。給料は毎週末払い。大体7万。どう?いいバイトでしょ(^.^)肩や腕には相当こたえるのだが、それを我慢しさえすれば毎週財布の中身が7万増えるのである。俗にいうおいしいバイトだったのである。

 始めてからわかったのだが、特別な機器で自動試し打ちはできるのである。我々アルバイターとは違い、休みなく24時間データが取れるのである。それでも我々が打ってデータをとっていたわけは、どうしても人間の癖というものがあって、機器が闇雲にボタン押しするのと、人間が見ながらボタン押しするのとではズレが生じるかららしいのである。人間は目押しができるし、、、、評者はパチスロやったことないからできないし、、、、いやできるのである。パチスロホールと違って、筐体には鍵をかけていない。コインの補給もないので、ボーナス出してワンゲーム分コインを出し終わったら、自分で筐体を開けて出したばかりのコインを補給する。で、開け閉め自由なので、リールにも触れる。だから、自分が目印にしたい部分に黒ビニールテープを貼っておけば、大体の目押しは可能なのである。7に貼ったとしたら、ビッタシで7とか、ワンテンポずれでチェリーとか。まあ、3ヶ月ほど続けさせてもらったお蔭で、目押しできるようになったけど、エヘン。

 一緒に打っているお仲間の中には、パチスロで2000万貯めて、ある区域では出入り禁止を食らっている凄いやつもいたぞな。でも、彼がやっていた努力とか聞くと、なんか凄い世界なのである。まず、新台が出たら何とかしてリール(筐体の中の3ライン、7とかチェリーとか並んでいるクルクルまわる帯)を手に入れる。その並びを分析して、バグ(開発者が思いもよらぬプログラムの穴)がないかチェックするのが手始め。そして、次はなんとかしてROM(プログラムの機器)を入手して、プログラム上のバグを捜すそうなのである。要するにパチスロは座ってラッキー(^O^)/買った~(^O^)/の世界ではいくらなんでもプロは食えるわけではなく、プログラムで予定されていない裏技でいかに出すかの世界なのである。それ以外にも、開発者が自分がお小遣い稼ぐために裏のプログラムを組み込む場合がある。ちょっと金がないなあっていうとき、開発者はパチスロ店に入って自分が開発した台に座り、自分しか知らない暗号をリールの止まりで伝え、大当たりを出して、ほな飲みいこ♪みたいな。その開発者しか知らない暗号を探り出すのも、またプロの目指すところでもある、というようにお仕事的にも生半可じゃできないプロの世界なのである。

 本書の題名『ビッグボーナス』は、このパチスロの大当たりのことである。今では裏技は自分で探し出すのではなく、情報屋から買うような世の中になっているらしい。売るのはパチスロ攻略会社。買うのはプロではなく、パチスロに嵌まって抜けられない大バカ者たち。たとえ情報料が50万円しようと"いやあ、一日で20万は抜けますから、3日で元は取れますよ"の言葉で"ウッヒョー!それマジっすか。俺買っちゃう!"みたいなやつらである。主人公は、攻略会社の幹部社員。本ネタ、ガセネタ、TPOで使い分けて売ってしまう。売るほうの巧妙さ、買うほうのバカさ加減、読んでいて実に愉快なのである。ところが中盤から、何か大きな陰謀やら暴力の影が見え出すと、途端に普通のミステリーになってしまいのこの評価○。序盤は◎以上かと思いながら読んだ評者なのだが。結果パチスロミステリーとしては成功しているのだが、果たしてパチスロという題材じゃなくても書けたのではないか?いややっぱパチスロは必須の題材だったのだ!でもパチスロいらないと言えばいらないのかな?と、妙に評者の頭の中がグルグルなった読後感であったことを報告しておこう。面白い。面白いが"このミス優秀賞"という観点からすれば、昨年の既評『逃亡作法』東山彰良のほうが格上でエンタメ性が高い。(20040803)

※著者名ハセベバクシンオー、ネットで調べたらやっぱり競走馬の名前でした。最近は馬も本を書くようになったのだと感心しきり。って、受賞当時掲示板に書いたら、そんなわけおまへんと長野在住美人に怒られてしまった(笑)


◎◎「果てしなき渇き」 深町秋生 宝島社 1680円 2005/2

b0037682_2247574.jpg 第3回“このミステリーがすごい!大賞”受賞作である。第1回の◎◎『四日間の奇蹟』浅倉卓弥の新人としての完成度も高かったが、本書『果てしなき渇き』、こちらのほうは筆力もしくは文章の持つパワーというところでは上だろう。ただし、前者のほうが全体的なまとまり、構成の力では上かと思うのだが。とにかく、本書には筆力がある。だから、次作は必ず読む!そう思わせた優れた作品なのである。逆に浅倉作品のほうは『君の名残を』の評価がイマイチなので、それはパスして好評の最新作『雪の夜話』は図書館に予約済みと、とりあえず評者の中では、物語性の評判によりチョイスして読もうかと思わせる作家の位置づけなのである。

 ただし本書、物語の持つ雰囲気は殺伐としている。行動の向こうに狂気があり、狂気の向こうに暴力があり、暴力の向こうにサディスティックな雰囲気が漂う、そういう読者を選ぶ作品なのである。似たようなデビュー作風に、○『葬列』小川勝己の作品があるが、本作はそれよりはるかに完成度が高い読み物でもある。だから、いわゆる鬼畜系(って何だろう?好きな言葉じゃないが)に嫌悪感を抱かず、純粋に小説の面白さで判断できる方には多分合うのではないかな。

 とにかく、冒頭から引き込まれる。警備会社に勤める主人公が遭遇したコンビニでの残虐風景。1週間と経たず、別れた妻からの自分の娘の行方が知れないとの電話。このふたつがうまく絡み合い読者の興味を惹きつけていく。よくある“一見別々の事件と思われた二つの事件、それが最後には・・・”みたいな生温い作りでは決してない。表もなく裏もなく、主人公の暴走はその二つの事件の狭間で読者の想像も追いつかないほどにスピード感を増して転がっていくのである。ポイントごとのサディスティックなシーンも、これに主人公の哲学さえ加わわっていたなら、あの性愛と暴力の名作◎◎『笑う山崎』花村萬月にも肩を並べるような作品に仕上がっていたのかもしれない。

 父親たる主人公、その妻、そして娘という関係に、読み手としての評者の家族構成を投影させる余地などない。自分を重ねる必要はない。狂気と暴力とサディズムの行動は、本書の物語世界の揺るぎない骨格なのだから。今年のこのミス大賞、本書『果てしなき渇き』は、ゆっくりと味わったり、ゆっくりと考えたりせず、ただ読んで読んで読むべしなのである。(20050318)

※図書返却期限が間近に迫り、読まずに返そうかとも思っていた本である。いや、読んで良かったです(^.^)面白かった(^O^)/(書評No496)
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by kotodomo | 2006-06-03 07:27 | メモる | Comments(0)


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