2006年 09月 11日

ついに文庫化再掲 ◎◎「ドスコイ警備保障」 室積光 小学館 600円 2006/9

b0037682_2228374.jpg いやあ、これは、実によい。読んでいると心が幸せになってくる、おかしみに笑みがこぼれる、読み手も一緒になって登場人物たちに応援を送りたくなる、そういう本である本書『ドスコイ警備保障』、読むべし、読むべし、べし、べし、べし、と最初で言っておく。そして、無駄話を始めよう。

 実は「本のことども」を始めてから随分のあいだ、当サイトには掲示板もリンク集もなかったのである。評者も、親サイトである鹿児島情報サイト運営者の管理人さんも、書評を更新して、その感想やお便りは聖月宛てメールをいただければ、それでいいのだと、あまり深く考えていなかった次第なのである。そこへ異変が起きたのは、昨年2002年3月4日。聖月宛てにきた次のメールに起因する。

 “件名:ありがとうございます 本文:ありがとうございます。室積光と申します。拙著「都立水商!」になんと二重丸をつけていただき、感涙にむせび、あまりの涙の量に「花粉症かあ?」と思ってるところでございます。どうやら評者の方は鹿児島在住でいらっしゃるようですが、私の次回作は「百年目の同窓会」という、旧制七高造士館の野球部と鹿児島大学野球部を題材にした小説です。小学館から六月に出る予定です。いわば鹿児島のご当地小説。鹿児島弁の部分は友人で、甲南高校出身の俳優、西田聖志郎に協力してもらっております。物語のモデルは鹿児島市内で開業している「昇産婦人科」の先代の院長先生です。出版の暁にはこちらの方もよろしくお願いいたします。次回作の宣伝のようになって申し訳ありませんが、「鹿児島」の文字を目にすると平静でいられないものですから。あと、私NHKの大河ドラマ「翔ぶが如く」で吉井幸輔を演じた者でして、鹿児島の「ふるさとナントカ館」という所に行くとその時の私の映像が見られると聞いたことがあります。今度本の取材で鹿児島に行ったらぜひそこに行こうと思ってます。そんなわけで急に鹿児島との縁が増えた私としては、鹿児島で良い評価をいただける事が嬉しくて仕方ありません。今後ともよろしく、鹿児島と薩摩人よ。と申し上げる次第であります。室積光“

 驚いたのなんのって、評者は、自分は。作者自ら『都立水商!』の評判いかがかと、その書評を訪ね歩き、わざわざメールまでいただいたのである。慌てて管理人さんにメールを転送するやら、失礼になってはいけないと思いながらお礼のメールを書くやらした評者。内容は細かく思い出せないが、『都立水商!』は面白かった、メールを戴いて大感激、自分が生まれたのもその産婦人科です、次作楽しみにしています、鹿児島へお越しの際は是非ご連絡を、貧乏な管理人さんに奢らせますので等々。礼儀を果たし、少しホッとした評者のもとへ、、、、

 “件名:ご返信ありがとうございます 本文:こちらからの返信が遅れて申し訳ありません。昇産婦人科で誕生されたとの事で、あらためて昇先生が身近に感じられます。このところ、七高出身の方々とばかりお会いしてまして、微妙な薩摩弁のイントネーションに馴染んでいます。実は「都立水商!」は映画化とテレビドラマ化が同時進行してます。そのおかげで、その次の七高を舞台にした作品の映画化も現実味を帯びてきました。映像で昔日の鹿児島の青春を描ければというのが、私の一番の願いです。具体的に話が進み始めましたら、ぜひともお力添えをお願いします。鹿児島にうかがう節はこのメールでご連絡いたしますので、必ずお会いしましょう。それではお元気で。室積光“

 おいおいおい、である。件名を見よ。「ご返信ありがとうございます」だぞ。売れっ子作家が「ご返信ありがとうございます」だってよ。俺ってそんなに偉いのか!という風には勘違いせず、管理人さんと相談。そろそろ掲示板作ろうか。作者と自分で黒やぎ白やぎやっててもな、オープンな場所が必要だな、という結論に達し、掲示板明日オープンという日に室積光氏にお願いメールをしたためた評者。是非、掲示板にも登場してくださいと。すると、お返事メールが。

 “件名:掲示板なんですが 本文:どうも室積です。掲示板なんですが、今いち使い方がわからんのです(恥ずかしい)。私の記事載りましたか?それとも同じ記事が二度載ったりして?どうなってるやら。というわけで、いまだに使いこなせぬ室積です“

 そこで、上記のメール内容を掲示板開設時、承諾を室積氏にいただいて、掲示板に代理カキコした評者なのであったが、実際には室積氏本人にもカキコいただいた。ロム保存してないのでその文章はもうないのだが「アミーゴ 鹿児島の読書人たちよ」みたいな書き出しだったのを記憶している。同時にリンク集を作ったのは、これはついでの作業。

 当然、室積光を応援する会鹿児島支部伊敷地区代表を自認するようになった評者であるが、その後は話に出た野球を題材にした作品は待てど暮らせどで、鹿児島に遊びに行きます、お会いしましょうもないしで、そうそう一回だけウィルスメールが室積氏から来て、室積さんウィルスが!と評者、はあ、どうもすみません、今退治しましたと室積氏、そういうことがあったけど。

 そういうことで、本書『ドスコイ警備保障』を読んで、万が一面白くなかったあかつきには、◎◎◎なんて今まで使ったこともない評価記号でも用いて、「肩入れ作家につき評価保留、とにかく買うべし」なんてことも考えていたのだが、杞憂に終わった。本書はとにかく面白いのだ。

 前作『都立水商』では、もし風俗水商売を育成する高校があったらなんて設定のみで、面白可笑しく書いた著者。サイドに高校野球という材料も置き、豊かな想像力で、楽しい風俗と爽やかな青春スポーツ物という異色の小説で楽しませてくれた著者。今回もその設定のコンセプトこそ似ているが、仕上がりは前作を上回り、おかしみを含んだ優れたサクセスストーリー小説となっている。

 お相撲さん。廃業したら、あとはちゃんこ屋、あわよくば解説者、コメンテイター、そういうことで成功するのは一部の力士のみ。そこで、ある親方が廃業力士の受け皿機関として警備会社を作る。成功するのか?成功するのである。本書に出てくる警備会社、成功して成功して、成功しまくるのである。読んでいて痛快である。ここが、普通の小説と違う。普通のサクセスストーリーであれば、努力して成功するかというときに難問が発生、そしてそれを乗り越え感動のエンディングというのが定石だと思うのだが、著者はそんな定石までも無視して、とにかく楽しいお話を完結させている。重要人物の護衛をするときは、六人の力士が真ん中に空間を作るように体を寄せ合って移動、真ん中の空間に重要人物、なんていう発想も、読者を楽しませてくれる。

 前作では、サイドに高校野球を材料として置いていたが、本書では同好会バスケットボールを置いている。高校まで部活でバスケットをしていた評者。シカゴ・ブルズ相手にカットインしようにも、ジョーダンやらピッペンやらドデカイ選手が待ち受けていたら怖いと想像するのだが、本書ではもっと怖くて面白い。ドスコイ・ブルズ相手にボールを持って向かっていくと、ゴール下には曙や武蔵丸みたいなのが5人もいるわけで、、、。

 とにかく、面白い。買うべし、読むべし、べし、べし、べし。(20030712)


※前作は図書館で借りたが、本書は発売を知って、すぐに本屋に買いに走った。図書館での本との出会いを常日頃主張する評者だが、この作家については好きな作家という通常の分類ではないのである。応援している作家なのである。『都立水商!』を読まなければ、著者からメールが来なければ、未だに掲示板はなかったかもしれない。要するに、室積光氏こそ「いとおかし掲示板」の産みの親なのである、って大袈裟かなあ(笑)
ちなみに著者は山口県光市室積生まれなので、室積光のペンネーム。俳優、脚本家を経て『都立水商』で小説家としてデビュー、だったよなと思いながら、本書の著者紹介を見ると…ム、ム、ム…なんか変だぞ、この著者の写真、なになに1977年撮影?1955年生まれだから…48歳の著者が22歳の頃の写真を載せるとは、こりゃ爆笑もんじゃあ。爆笑もんだけど、何人の人が気付くことやらの細かいところのおかしみ。
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by kotodomo | 2006-09-11 14:21 | メモる | Trackback(1) | Comments(0)
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