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「本のことども」by聖月

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2006年 10月 09日

〇「真夜中のマーチ」 奥田英朗 集英社 1575円 2003/10


 どうも内容と題名がピッタシこないような、それでいて奥田英朗だからこれでいいような気もして、そんなこんなで少し題名について考えてみた。

 まず“真夜中の”は、これはこれでいいような、そうでもないような。真夜中に開かれる隠れ賭場がひとつの舞台。そこの売上金をめぐって、主人公ヨコケン、変なサラリーマンのミタゾウ、いい女クロチェが繰り広げるドタバタクライムノベル。しかしなあ、真夜中なのはそこだけで、中盤からは昼間も多いし・・・まあ、“真夜中の”っていうのは、非常に俗っぽくって、“真夜中の”なんとかっていう題名の小説も歌も映画も多いから、単に通俗さを現した著者の洒落と受け取っておこうかな。

 でもなあ、“マーチ”がよくわからん。マーチといえば、まず3月。しかし、本書にはクリスマスを前にした街の描写があるので、3月という意味ではない。次に、マーチといえば車種。日産マーチ。本書には、色んな車の車種(って、なんかカブッタ表現だが)が出てくるが(例えば主人公?ヨコケンの車は黒のポルシェ)、日産マーチは出てこない。で、いよいよ本命の音楽のマーチについて考察するが、マーチといえば評者の世代、水前寺清子の“365歩のマーチ”だろう。一日一歩、三日で三歩、三歩進んで二歩下がる・・・なぜ、三歩進んで二歩下がるのって、幼少時代に人生の虚しさを感じた人々は多いだろう。この曲は、評者の小学校の運動会で入場行進曲に使われ、みんなが三歩進んで二歩下がるものだから、入場に60分かかったといういわくつきの曲でもある。ウソである。しかし、ここで判明!そう、マーチは音楽でいうところの行進曲である。他にポピュラーなところでは軍艦マーチ。パチンコ屋。ということは、行進曲っていう直訳ではなくイケイケドンドンって感じ?だったら、少しこの題名の意味もわかる。『真夜中の行進曲』ではなく『真夜中のイケイケドンドン』・・・そう、本書はイケイケドンドンなお話なのである。

 よからぬことで派手な生計を営むヨコケン。彼の主催したお見合いパーティーで知り合うミタゾウ。その二人が、ヤクザなフルテツをギャフン(って死語?)といわせようとする場に、いい女クロチェが登場。あとは、この三人が繰り広げるイケイケドンドン物語なのである。

 ただし、名手奥田英朗としてはチープな物語。同じ評価記号でもデビュー作〇『ウランバーナの森』のほうが上。軽さは一緒ながら、ウランバーナのほうが深さがある。悪くはないが薦めもしない一冊。しかし、奥田英朗ブランド。奥田印。地道に奥田コンプリを目論む評者としては、はずせない一冊なのだよ。こんな奥田もあるのだなあということで。(20061008)

※軽めの読書にはいいのかも(書評No671)

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by kotodomo | 2006-10-09 08:16 | 書評 | Trackback(8) | Comments(0)
Tracked from ぱんどら日記 at 2006-10-09 09:06
タイトル : 奥田英朗【真夜中のマーチ】
お見合いパーティーに参加したことがある。 参加者は真面目な人もいたが、たぶん下心ありありの殿方もいただろう。いわゆる「サクラ」の女性がいたかどうか、そこまでは知らない。私はサクラではない。一般の参加者であ... more
Tracked from ぱんどら日記 at 2006-10-10 11:50
タイトル : 妄想キャスティング――奥田英朗【真夜中のマーチ】
小難しいところのないコメディタッチの作品である。 日本テレビ「ドラマコンプレックス」あたりに良さそう。 奥田英朗作品の重要なキャラクターである「伊良部医師」は、この小説には登場しないが、ドラマ化す... more
Tracked from たりぃの読書三昧な日々 at 2006-10-11 20:56
タイトル : 「真夜中のマーチ」(奥田英朗著)
 今回は 「真夜中のマーチ」 奥田 英朗著 です。... more
Tracked from *モナミ* at 2006-10-21 19:35
タイトル : 『真夜中のマーチ』 奥田英朗
『最悪』とは違って、軽いノリで楽しめる、 ドタバタ泥棒劇。 登場人物がみな、騙し騙され。 真夜中のマーチを進むのは、 太陽が似合わない若者たちと、怪しい大人たち。 大企業の御曹司と同姓同名なのを、 害のなさそうな顔をして利用するミタゾウ。 協調性がなく、落ち着きがなく、やる気もなく、 上司からは見放され、派遣社員からも相手にされず、 しかし記憶力は抜群。... more
Tracked from "やぎっちょ"のベストブ.. at 2006-12-03 18:26
タイトル : 真夜中のマーチ 奥田英朗
真夜中のマーチ ■やぎっちょ書評 香港4冊目・・・といっても帰りの電車と飛行機の中で読み終えた一冊。あちらの日本の本屋さんで1000円ちょいで買いました。高かったなぁ。定価571円+税だし(いくら?)。 香港3冊目がなぜ飛んでいるかというと「IWGP」シリーズなので順...... more
Tracked from デコ親父はいつも減量中 at 2007-03-03 10:12
タイトル : 真夜中のマーチ<奥田英郎>−(本:2007年24冊目)−
集英社 (2006/11) ISBN-10: 4087460959 評価:80点 普通に面白かった。 相変わらず、魅力的にキャラを作り上げる技術は見事なもの。 主役の3人、いかがわしいパーティー屋を経営しているチンピラまがいの「ヨコケン」、一流会社のダメ社員「ミタゾウ」、家族を捨て....... more
Tracked from 本を読もう at 2007-04-23 17:13
タイトル : 真夜中のマーチ
大金をめぐる,勘違いやドタバタを描いた作品ですが, 行きずりで組むことになた『普通』の男女3人の心理や, それぞれへの感情や関係などが,うまく描かれています. 特に,利用するほどにしか考えていなかったそれぞれに, 信頼とまではいかないものの,気持ちの変化が見えだして, 最後に『作戦』を成功させるあたりにはニヤリとさせれます. ... more
Tracked from あれやこれや at 2008-02-04 20:17
タイトル : 真夜中のマーチ-奥田英朗
「真夜中のマーチ」 奥田英朗 春が立ち 冷たい露に じっとたえ 君を待ちらむ 梅の花 おはようございます。また記憶がなくなるぐらい飲んでしまいました。最近いやなことが多いのでしょうか。それともお酒に弱くなっちゃったのかしらね。昨日は人生初の合コンという名の飲..... more


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