2006年 10月 21日
いわゆるパラレルワールドストーリー物である。Aの世界とBの世界、同じ世界だけど、どこかが少し、もしくは大きく違っている、そんな世界を多くの場合一人称視点で描いていく。 この手の物語の最初のハードルは、主人公にパラレルな世界に来てしまった!と、いつ気付かせるかということになるかと思う。早過ぎても呆気ないし、遅すぎたらイライラするだけ。本書の場合、早い段階で主人公が気付くのだが、その気付かせ方も無理なくロジカルでOK。 あとは、ゴールに向かって進みながら、間違い捜し。間違いのピースを一つずつ拾っていき、それの意味するところを理解して、目的のゴールに突き進め!なのである。これも、本書の場合、明確になっている。 しかし、最後までノレナカッタというのが、評者の率直な感想。何が起こるのか?どこから拍車がかかるのか?そんな感じで読んでいたら、終ってしまった。仕掛はなし。いや、なくもないのだが、その仕掛と予想される結末との蓋然性が希薄なのである。結局、読み終わって“で?”とか“だから?”的気分の評者。もしくは“そうだったんですか。なるほど、そういうことだったのですか。で、それがどうしたんですか?”と長文化してみてもいい。 帯に“若さとは、かくも冷徹に痛ましい。”と書いてあり、ネット書評などでも切ない結末とか言われる本書だが、評者としては痛ましいとか切ないとか思う前に、ノゾミのああいう性質は有り得ないと主張したいし、フミカの異常な性格を動機にするのは無理があるし、そして何より、二つの世界の存在に意味を与えずに終ってしまうのは・・・よくないよなあと思うんだけどなあ。違うかなあ。でも、評判いいしなあ、本書。出来はよくないが、雰囲気のよい一冊と呼べば許してくれる?誰が?(20061020) ※ネットで購入。面白かったらリアル「本のことども」コーナーに置こうと思っていたんだけど。(書評No672) 書評一覧 ↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら
by kotodomo
| 2006-10-21 09:04
| 書評
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Comments(6)
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from 粋な提案
at 2006-10-21 18:12
タイトル : ボトルネック 米澤穂信
装画はフジモト・ヒデト。装幀は新潮社装幀室。書き下ろし。 主人公で高校一年生の語り手の僕、嵯峨野リョウは2年前に事故死した恋人、諏訪ノゾミを弔うため東尋坊を訪れます。強い眩暈に襲われ崖下へ落ちてしまったはずが、... more
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from ヾ(=ΘΘ=)ノ日記
at 2006-11-02 12:43
タイトル : [本:ヤ行の作家]米沢穂信『ボトルネック』
恋人を弔うため東尋坊に来ていた僕は、強い眩暈に襲われ、そのまま崖下へ落ちてしまった。―はずだった。ところが、気づけば見慣れた金沢の街中にいる。不可解な想いを胸に自宅へ戻ると、存在しないはずの「姉」に出迎えられた。どうやらここは、「僕の産まれなかった世界」... more
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from たこの感想文
at 2006-11-04 21:23
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from AOCHAN-Blog
at 2006-11-20 18:29
タイトル : 「ボトルネック」米澤穂信
タイトル:ボトルネック 著者 :米澤穂信 出版社 :新潮社 読書期間:2006/11/02 - 2006/11/03 お勧め度:★★ [ Amazon | bk1 | 楽天ブックス ] 恋人を弔うため東尋坊に来ていた僕は、強い眩暈に襲われ、そのまま崖下へ落ちてしまった。―はずだった。ところが、気づけば見慣れた金沢の街中にいる。不可解な想いを胸に自宅へ戻ると、存在しないはずの「姉」に出迎えられた。どうやらここは、「僕の産まれなかった世界」らしい。 2年前に死んだ同級生・諏訪ノゾミを弔...... more
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from 本を読む女。改訂版
at 2006-12-12 01:01
タイトル : 「ボトルネック」米澤穂信
ボトルネック発売元: 新潮社価格: ¥ 1,470発売日: 2006/08/30売上ランキング: 3199posted with Socialtunes at 2006/09/14 傑作だ。だけど、誰にも薦めたくない。 今読みおわったところで非常に動揺している。 頭の中が爆発寸前で、割れる直前の風船みたいになってしまった。 絶望とかやりきれなさとか、語彙のない頭で無理やり書いてみるとそんなようなもの、 で、ぱんぱんに腫れ上がりそうになって、少し涙を流すことでそのカタマリを 外に出す...... more
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from しんちゃんの買い物帳
at 2008-05-17 12:54
タイトル : 「ボトルネック」米澤穂信
ボトルネック(2006/08/30)米澤 穂信商品詳細を見る 兄が死んだと聞いたとき、ぼくは恋したひとを、弔っていた。諏訪ノゾミは二年前に死んだ。ここ東尋坊で、崖から落ちて。ノゾミの事故の原因は、この強風だと聞...... more
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from "やぎっちょ"のベストブ..
at 2008-05-18 02:12
タイトル : ボトルネック 米澤穂信
ボトルネック ■やぎっちょ読書感想文 ざっ、ぷーんの東尋望 東尋望をご存知ない方のためにやぎっちょが物語風にご説明いたしましょう。ある、家庭の食卓。 長女「ねえ今度の週末家族でどこか行こうよ」 母「あら、いいわねぇ。ねぇ、お父さんどうかしら」 父「お....... more
確かに冷静に読んでしまうと、作中人物の造形はかなりウソっぽいですよね。
でもまあそれはそれとして飲み込んで読んでいけば、けっこうきつい作品ではあると思いますよ。ぼくは好きですね~。というかこういうものを好きといっていいのかどうか……。
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おおきさん こんにちは(^.^)
確か、おおきさんの書評を読んで俄然読みたくなった、そんな本書でした。 粗探しというよりは、ノレナカッタ感が強い作品でしたね。 でもねえ、最後はどうしても納得できないんですよねえ。 夢のような幻のようなパラレルワールド。 その影響を受けるか、夢から醒めてハッとする自分か? 穿った読み方なのかなあ(^^ゞ でも、多くの人に好評ですね(^^)v
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おおき
at 2006-10-22 18:40
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ああ、そうですね。あのラストって結局パラレルワールドの影響が大きいんですよね。現実的に考えると「そんなのあり?」と思っちゃうところはありますよねえ。でもあえてこういう結末にしてしまうというのが、何となく「今」を反映してると思うんですよ。「今」だからこういう結末になりうるというか。
で、これを読んで「危険だ」と言う人が多いのも「今」という時代の特徴かと。引っ張られる人、いるのかなあ。ぼく自身はそんな危惧なんてちょっとも思いませんでしたけど、そういう読み方をされているらしいことだけは確かです。 ってこういうのは自分の感想で書けって話ですよね^^;
おおきさん 『犬はどこだ』が凄っごい好きだったので、今回期待が大きすぎたのと、テンポのギャップもあったのかも知れないです。
もしかしたら、これが初米澤作品だったら、また感じ方も違ったかもしれないですね。 でも、自分は作者の目論見通りにいかなかったですけど、そういう意図で多くの人に好感を持たれるっていうのは、やはり中々の作家なんですよね。
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ヾ(=ΘΘ=)ノ
at 2006-11-02 12:54
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遅ればせながら、やっと感想書きました。なるほどねえ。キャラとか動機とか、細かく理屈っぽく見れば、そうなのかもなあ。でも、こういうよぅわからん心理状況というのも、ある意味青春らしさとして受け入れてしまった私でごわす。
後味が苦いとか言われている作品ですが、ノレナイままラストで、“で?”って感じでしたでごわす。
夢か現か、トシシュンですなあ、トシシュンの裏バージョン? |
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