「本のことども」by聖月

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2006年 10月 21日

▲「ボトルネック」 米澤穂信 新潮社 1470円 2006/8


 いわゆるパラレルワールドストーリー物である。Aの世界とBの世界、同じ世界だけど、どこかが少し、もしくは大きく違っている、そんな世界を多くの場合一人称視点で描いていく。

 この手の物語の最初のハードルは、主人公にパラレルな世界に来てしまった!と、いつ気付かせるかということになるかと思う。早過ぎても呆気ないし、遅すぎたらイライラするだけ。本書の場合、早い段階で主人公が気付くのだが、その気付かせ方も無理なくロジカルでOK。

 あとは、ゴールに向かって進みながら、間違い捜し。間違いのピースを一つずつ拾っていき、それの意味するところを理解して、目的のゴールに突き進め!なのである。これも、本書の場合、明確になっている。

 しかし、最後までノレナカッタというのが、評者の率直な感想。何が起こるのか?どこから拍車がかかるのか?そんな感じで読んでいたら、終ってしまった。仕掛はなし。いや、なくもないのだが、その仕掛と予想される結末との蓋然性が希薄なのである。結局、読み終わって“で?”とか“だから?”的気分の評者。もしくは“そうだったんですか。なるほど、そういうことだったのですか。で、それがどうしたんですか?”と長文化してみてもいい。

 帯に“若さとは、かくも冷徹に痛ましい。”と書いてあり、ネット書評などでも切ない結末とか言われる本書だが、評者としては痛ましいとか切ないとか思う前に、ノゾミのああいう性質は有り得ないと主張したいし、フミカの異常な性格を動機にするのは無理があるし、そして何より、二つの世界の存在に意味を与えずに終ってしまうのは・・・よくないよなあと思うんだけどなあ。違うかなあ。でも、評判いいしなあ、本書。出来はよくないが、雰囲気のよい一冊と呼べば許してくれる?誰が?(20061020)

※ネットで購入。面白かったらリアル「本のことども」コーナーに置こうと思っていたんだけど。(書評No672)

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by kotodomo | 2006-10-21 09:04 | 書評 | Trackback(7) | Comments(6)
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Commented by おおき at 2006-10-22 00:31 x
確かに冷静に読んでしまうと、作中人物の造形はかなりウソっぽいですよね。
でもまあそれはそれとして飲み込んで読んでいけば、けっこうきつい作品ではあると思いますよ。ぼくは好きですね~。というかこういうものを好きといっていいのかどうか……。

Commented by 聖月 at 2006-10-22 18:21 x
おおきさん こんにちは(^.^)
確か、おおきさんの書評を読んで俄然読みたくなった、そんな本書でした。
粗探しというよりは、ノレナカッタ感が強い作品でしたね。
でもねえ、最後はどうしても納得できないんですよねえ。
夢のような幻のようなパラレルワールド。
その影響を受けるか、夢から醒めてハッとする自分か?
穿った読み方なのかなあ(^^ゞ

でも、多くの人に好評ですね(^^)v
Commented by おおき at 2006-10-22 18:40 x
ああ、そうですね。あのラストって結局パラレルワールドの影響が大きいんですよね。現実的に考えると「そんなのあり?」と思っちゃうところはありますよねえ。でもあえてこういう結末にしてしまうというのが、何となく「今」を反映してると思うんですよ。「今」だからこういう結末になりうるというか。

で、これを読んで「危険だ」と言う人が多いのも「今」という時代の特徴かと。引っ張られる人、いるのかなあ。ぼく自身はそんな危惧なんてちょっとも思いませんでしたけど、そういう読み方をされているらしいことだけは確かです。

ってこういうのは自分の感想で書けって話ですよね^^;
Commented by 聖月 at 2006-10-24 11:59 x
おおきさん 『犬はどこだ』が凄っごい好きだったので、今回期待が大きすぎたのと、テンポのギャップもあったのかも知れないです。
もしかしたら、これが初米澤作品だったら、また感じ方も違ったかもしれないですね。

でも、自分は作者の目論見通りにいかなかったですけど、そういう意図で多くの人に好感を持たれるっていうのは、やはり中々の作家なんですよね。
Commented by ヾ(=ΘΘ=)ノ at 2006-11-02 12:54 x
遅ればせながら、やっと感想書きました。なるほどねえ。キャラとか動機とか、細かく理屈っぽく見れば、そうなのかもなあ。でも、こういうよぅわからん心理状況というのも、ある意味青春らしさとして受け入れてしまった私でごわす。
Commented by 聖月 at 2006-11-03 07:36 x
後味が苦いとか言われている作品ですが、ノレナイままラストで、“で?”って感じでしたでごわす。
夢か現か、トシシュンですなあ、トシシュンの裏バージョン?


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