2004年 10月 19日
名古屋で男が労働基準監督署に立てこもる!なんて事件があって、建物の多くの職員が避難したというニュース。取るものもとりあえず避難したわけなのだが、多くの職員の手には自分のパソコンが抱えられていたという話には大笑い(^.^)大笑いなんだけど、よく考えてみると評者も同じような行動をとるような気もする。例えば今の一人住まいの自宅が火事。そんなことになったなら、燃えてもなんとかなる通帳や印鑑より、パソコンや携帯電話を持ち出すだろうなあ。いや、間違いなく持ち出す。やっぱ、情報機器はお金に換えられない価値を持っているわけだ。例えば本書『方舟は冬の国へ』を読むきっかけになったのも、リンク先『JardinSoleil』by四季さんの紹介が気になったからだし、色んな情報がとれて、色んな情報が蓄積されているのが今の情報機器の重要性なのである。 それにしても、本書『方舟は冬の国へ』の評価◎はいつもに比べて甘すぎるような・・・いや、甘い!キッパリ!小説の面白さとしては、やはり〇が妥当なのである。じゃあ、なにゆえに?いや、きっかけになった四季さんに遠慮しているわけじゃない。そうではなくて、実は設定がたまらなく好きなのである。主人公にすり替わってみたいくらいに(^.^) たとえば昔『翔んだカップル』なんて漫画があって、映画化されたりドラマ化されたり。それが実にベタな話なのであるが、やはり設定だけで評者は憧れてしまったのである。だって、手違いでカワユイ女の子と一緒の家に住むんだよ、主人公。それも薬師丸ひろこだぜ!って、それは配役だけどさあ(笑)。でも、男子として生まれたからには、そういう設定に憧れてしまうのである。ああ、鶴見辰吾が羨ましい!って、だからそれは配役だって(笑) 会社を辞めた主人公(男!羨ましい!)は、ハローワークの帰り道に、仕事の依頼を見知らぬ男から持ちかけられる。まずは、その金額がデカイ。本書ではその金額にはサラリと触れてあるだけだが、主人公が6年間高卒で勤めてきた会社の全報酬より上だというから、高卒ルーキーでも年間に最低200万は貰っていると思うので、ざっと1200万超。ところが本書の主人公にすり替わってみたい評者の肝はそこにあらず!実はこの仕事、とある屋敷で一ヶ月間、見知らぬ女性と夫婦の役を演じ、そこに可愛い娘も加えて親子の役を演じきるという仕事なのである。主人公より、年上の女性ながらプロポーションバッチリの妻役相手役。演じきるのが仕事ということは、色んな夫婦の秘め事も演じきるわけで・・・ウッヒョー!主人公になりたい♪ 評者には、愛する嫁さんも、かえがえのない娘二人もいるが、それはそれ、これはこれ。憧れは憧れ。男子の本懐は本懐。だって、今でも高校生に戻って翔んだカップルにしてくれるんだったらそうしてほしいくらいに、憧れは何年経っても憧れなのである。60過ぎのオバサマが、キムタク!素敵♪とかヨン様!死ぬう♪とかいうのと一緒。バカみたいだけど、ツボにはまる憧れは年齢には関係ないのである。 実は、評価が甘くなったのは、この擬似夫婦関係への憧れ以外に、擬似親子関係の娘の可愛らしさにもあるのである。今は成り行き上、鹿児島と東京と離れて暮らす自分の娘の存在も重なって、微笑ましく可愛く感じてしまったからなのである。 著者が、あとがきで書いているように、本書は粗筋展開としてはベタな話、ベタな設定である。それでも中々読ませるのだが、注文をつけるとすれば、ベタな会話のやりとりでページを重ねるよりは、もっとこの擬似家族の微妙な関係を盛り込むエピソードを入れて欲しかったような気がする。 一人、はしゃぎまくって紹介してしまった評者なのだが、本書の良さは結局その読後感にあるだろう。その読後感を醸しだす本書の本来のテーマとは・・・。(20041018) ※四季さんのお薦めで『七回死んだ男』を次に、と思ったら、我が荒川区立図書館には蔵書なし。まあ、何かのついでに古書店覗いたら見つかるでしょう。(書評No420) 書評一覧 ↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら
by kotodomo
| 2004-10-19 00:05
| 書評
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Comments(2)
Tracked
from Ciel Bleu
at 2004-10-20 06:26
Commented
by
四季
at 2004-10-20 06:38
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私もトラックバックさせていただきましたー! 評価、大甘で◎なんですね。(笑) でもそれってすごく妥当だと思います。私も実際のところどうなんだろうと思いつつも、でもすごく好きなんです、この話! やっぱり最後は、好きか嫌いかですよね。そういう意味で凄くいい作品だったと思うので、これは読んで満足でした(^^)。
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四季さん 沖縄からです。
今から、リンク先道田夫妻と二人の娘とプチオフ会。 まあ、奥様は高校、大学と私の同級生なので、古い歴史をもつ 新しいつきあいなのですが、家族ぐるみの。 一番はあと味かと。あそこがなければ、ふ~ん、そんな話で終わっちゃうかもしれません。 四季さんお薦めの「七回死んだ男」今度捜してみますね。 沖縄は、まだ風が強い。 そちらは今時分が一番かな。 |
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