「本のことども」by聖月

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2006年 12月 19日

あの名作文庫化につき再掲 ◎◎「追憶のかけら」 貫井徳郎 1000円

1890円の単行本が1000円の文庫に・・・高いようだが、コストパフォーマンスを考えれば安い!
読むべし、読むべし、べし、べし、べし!!!

b0037682_21382285.jpg 傑作である。それも大傑作である。なぜ本書『追憶のかけら』が昨年2004年、もっと取り沙汰されて、ランキングなどの話題にならなかったのか不思議でならない。多分、評者が本書を昨年中に読んでいて、このミスなどのランキングに推すとしたら、間違いなく本書である。それだけ凄い傑作なのである。久しぶりに本物の小説を読んだという気にさせてくれる逸品であり、多分ミステリー&サスペンス&エンタメファンをも納得させてくれる匠の物語だと思う。

 本書を読みながら思い出したのが、◎『異邦の騎士』島田荘司や、◎◎『グロテスク』桐野夏生や、◎◎『白夜行』東野圭吾等の永遠の語り継がれるべき傑作群。本書も同様に語り継がれるべき傑作であり、『異邦の騎士』のノートに書かれたものや、『グロテスク』の中国人の独白のように、作中話の凝った作りが目を瞠るのが共通の特長でもある。作中話、それだけでも充分にひとつの物語として完成されたものが、単に小説全体の構成部分であること自体が、全体の完成度の高さを物語っているし、また、この二作以上に力量を見せつけてくれた『白夜行』を凌ぐとも劣らない著者の力技に感心し、そんなこんなで以上3作品を思いだ出したのである。

 大学で国文学を教える主人公の現状は、職場でもパッとしないし、妻を亡くした境遇に加え、幼い一人娘を亡妻の両親に預けたままにせざるを得ない環境にある。そんな主人公のもとに、50数年前に自殺した、ある無名の作家の未発掘の原稿が迷い込むところから物語は始まる。と、設定と出だしだけ紹介すると、凡百の作品と思われるかもしれないが、そこからが凄い。その掘り出し原稿、いわゆる作中話の中に、主人公と一緒に読者も引き込まれてしまい頁を繰る手が止まらなくなってしまうのである。主人公が“傑作だ!”と叫ぼうがどうしようが、それは作者の操りによるものでしかないのだが、主人公と同じ視点で読み出した読者もその物語の持つ力に捉われてしまうのである。まあイメージとしては、夏目漱石の傑作『こころ』が、単に物語を構成するための作中話に過ぎない存在として小説内小説として書かれているようなものかと言ったらちょっと言い過ぎだろうか。

 しかし、この原稿も小説全体の中盤あたりで終わってしまう。評者は読みながら、ええっ!もう終わり!もっと読みたかった!で、現在時点の主人公の物語に戻っちゃうの?残念!・・・と思ったのだが、ここからがまた凄い。その原稿の存在を中心にしたどこへ行くともわからない展開に、またまた頁を繰る手が止まらなくなる読者なのである。とにかく、読むべし、読むべし、べし、べし、べし。そう話題にならなかった大傑作を見逃すことなかれ!

 ということで、いつもと同じく大傑作だから、粗筋には今回も触れない。ただひとこと言うならば、本書を読んでの読後感は人それぞれあるけれども、多分、みんな日常の出来事で棘棘していた自分勝手な心から、素直な心に戻れるはず。そして、物語の後半では、愛するってなんだっけ?なんて、人それぞれ考えながら読んでしまうかもしれない。

 お茶の間で評者は言う。“じゃあ問題です。パパが一番好きな人は誰でしょう?”すると下の娘が“知ってるよ。あたしたちでしょ。あたしとオネエチャンでしょう♪”と何の臆面もなくすかさず言うのに驚きを覚えながらも、パパ評者は“ブッブー”。“じゃあ、ママ?”またしても、パパは“ブッブー”。横から嫁さんが“答えはパパよ。パパは自分が一番好きなのよ♪”そんな平和な会話がある我が家の、お互いの愛情の示し方は必要十分と思っていたが・・・。

 前回、鹿児島に帰省して東京へ戻るとき、嫁さんと娘二人が空港まで車で送ってくれるついでに、途中のファミレスで4人でお食事の予定だったのだが、下の娘が少し体調を崩してしまいお婆ちゃんとお留守番、結局、嫁さんと上の娘に送ってもらった評者なのである。4年生の上の娘は、最近では知恵も知識も正義感もついてきた上に、それが親としては少し鼻につくように感じてもいて、ちょっと問うても子供らしくない返答がかえってきたりするので、以前より距離感が出てきて、逆に大人の目で娘のことを見たりする最近の評者でもある、ということも言っておこう。で、ファミレスで3人でお食事・・・実はこの風景、当たり前のことなのだが、下の娘が生まれて以来なかった風景なのである。7年ぶりの風景。そして、嫁さんや評者が、お前さんが一人っ子だったらこんな風景だったんだねえとシミジミ。なんか娘もふ~ん♪とシミジミ。そいでもって、空港に着いて評者が降りるとき、車中で娘を振り返り“じゃあ、パパ仕事頑張るからねえ。また3週間したら帰ってくるね。”と行ったときに見た娘の顔が今でも強く印象に残っている。パパを見送りにきたのは、これが初めてじゃないのだけど、いつもは姉妹一緒に“パパ、バイバ~イ(^^)/~~~”なんだけど、今日はこれから帰りの区間ママの運転で後部席で一人になるわけで、その前にファミレスでなんかシミジミしたわけで、そういうわけでいつもよりパパがいなくなるのを実感した娘の顔は、笑いとハニカミと寂しさと深刻さと色んなものが入り混じった顔で、そして一呼吸置いて“パパ♪ほんとうにお仕事頑張って、早く帰ってきてね♪”と心の底から沸いてくるような言霊が零れてきた。ああ、まだ子供だったんだ。もっともっと愛情注がなきゃ。もっともっと愛さなきゃ・・・そう後ろ髪を引かれてフライトしたのだよ、パパは。(200500205)
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by kotodomo | 2006-12-19 11:39 | メモる | Trackback | Comments(0)
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