樋口有介作品にしては、少し芸のない作品である。
まず、主人公がどこか社交的でない、どっちかというと内向性の青年。ぶっきらぼうな会話の中に樋口流のハードボイルドが見え隠れはするのだが、それが粋な会話なのか、根暗な会話なのか、読んでいて迷ってしまう。
また、本書に書かれている内容も、11月から12月までの、主人公の周囲の描写に過ぎず、その周囲っていうのが、母親の悩み、父親の悩み、姉貴の悩み、そして自分の悩みを、全部自分に押し付けられた日々の描写と、言葉にすれば単純な構造になっているので、物語の深味や広がりにどうしても限界が生じてしまう。
結局あれだねえ。主人公の生き方に、一本筋が通っていないのがいけないのだろうなあ。そういう主人公は他の作品でも登場するが、そういった主人公たちは一本筋が通っていないことを生き方にしているわけで、結果的に一本筋が通っていない主人公っていうのは共感するには、ちと、難しいのである。(20070429)
※それでも、まだまだ樋口作品、読み続けまっせ(^O^)/(書評No714)
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