2007年 05月 14日
なんだか最近、小説っていう狭義の意味の小説が読みたくなった評者。ミステリーでもなく、サスペンスでもなく、なんとかものでもなく、ただただ小説。読者に対して“どうよ、この物語”みたいな下心もなく、ただただプロとしての作品。 GW鹿児島の書斎で、急にそんな気持ちになって書棚を眺める。そうだ!『海峡』三部作を読もう!『海峡』『春雷』『岬へ』三冊とも所蔵本。そのうち『海峡』は5年前に既読、書評はこちら。評価は○。本書を再読してわかったことは、当時の評者の評価はなんざんしょ?というほど、いい加減だったということか。ていうか、多分当時と今と、本に対する姿勢が変わってきたのかもしれない。一時期は、このミスにランクインされそうな本を読む傾向にあったり、まだネット書評を始めたばかりで、もしかしたら人のために本を読んでいたり、そんな感じの読書だったのかもしれない。 小説が読みたいという気持ちから、『海峡』三部作を読破したい。そういう連想に至ったのは、元々『海峡』という小説に、素敵な印象を残していたからに他ならない。実際、あらためて読んでみると・・・いい。実にいい。そして・・・ほとんど内容を忘れていて新鮮(^^ゞいやあ、未読の方々、読むべし、読むべし、べし、べし、べし!!!現在は、評者が所持している単行本たちは入手困難だが、三部作の文庫本たちは廉価になって、当時と違ってセット扱いされていたりして、お買い得で入手しやすいぞ。 ほとんど内容を忘れていたと書いたが、本当に憶えていたのはシーンのみである。主人公少年の家の男衆とのキャッチボールのシーン、渡し板から女の子が海に落ちるシーン、友人との切ない別れのシーン、そして父親が開いたキャバレーみたいなとこでのシーン。 今回の再読では、そのシーンを埋めるシーンが繋がって・・・とにかく素晴らしい。高木の家に生まれた少年。その高木の家には、多くの男衆、女衆が住まう。姉たちがいるが、跡取りは主人公少年。男としての少年の、少年期の物語が本書である。三部作と銘打たれてからは、本書は幼年篇、『春雷』が少年篇、『岬へ』が青春篇と文庫上は色分けされているが、幼年期というよりは、やはり小学校高学年の少年の物語である。悲しさも喜びも切なさも、大人になるちょっと手前の甘酸っぱく純粋な、どこか懐かしい心裡なのである。 舞台は、戦後復興期の瀬戸内。少年と友人たち、大人たちの日々・・・とにかく、登場人物たちが素晴らしい。半分やくざ風情の父親の男気、厳しく優しい理想的な母親、男衆の“親父さんの息子”に対する向き合い方、どれをとっても素敵なのである。 素敵な小説を読み終えて・・・まだまだ、『春雷』『岬へ』と素敵が続くのが嬉しい評者。確か『春雷』は発売当時、雑誌ダカーポの年間大賞も獲得した逸品。やはり、狭義の小説というジャンルは素晴らしい。今後の読書傾向に、一石を投じた感のある今回の読書体験のことども。(20070512) ※すぐには『春雷』は読まない。なんだか勿体ない。多分、2週間以内かな(^_^)その後、6月に鹿児島帰省予定。そのときに置いてきた『岬へ』予定。なんだか、嬉しい読書予定。(書評No719) 書評一覧 ↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら
by kotodomo
| 2007-05-14 12:38
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