2007年 12月 10日

◎◎再読再評価「煙か土か食い物」 舞城王太郎 講談社文庫 580円 2004/12

b0037682_1033268.jpg 舞城を再読中の評者なのである。先日、本書『煙か土か食い物』の続編にあたる『暗闇の中で子供』を4年半ぶりに読んで、そのパワーに圧倒されるとともに、じゃあデビュー作はどんだけぇ、と気になり、5年半ぶりに本書の再読と相成ったのである。

 メフィスト賞でデビュー作・・・う~む、凄い完成度である。当時は、その機関銃のような文体が話題になったが、今読み返してみると、文学的な高みも垣間見える完成度。いいよ、いいよ、昔の舞城。ただ・・・『暗闇の中で子供』のほうが完成度はやや劣るが、傑作性は非常に高く、評者としては、お薦めは2作目のほう。まあ、とにかく、この2作を読むべし!特に『暗闇の中で子供』は、『煙か土か食い物』とこのミス集計時期が重なってしまったため、余り話題にならなかったし、未読の方も多いのではないかな。とにかく、読んでみな。

 評者的には、最近の舞城作品は完成度及びパワーが今ひとつ・・・やはり昔の舞城はいいなあ(^_^)あと『世界は密室でできている。』と『阿修羅ガール』までは、どこかの機会で再読予定(^^)vとにかく、初期の舞城作品は最高である。

 では、5年半前の書評を載せておきますね↓。


 第19回メフィスト賞受賞作にして、このミス2002年版国内8位ランクインの作品である。

 さて、メフィスト賞とは何ぞや?メフィスト賞受賞の意味合いとは?

 「姑獲鳥(うぶめ)の夏」で京極夏彦がデビューしたのが1994年である。実はこのとき、京極夏彦本人はどこかの賞の応募も視野に入れていたらしい。しかしながら、後の「魍魎の函」他の作品と比較しても短かめの「姑獲鳥の夏」にしても、新人賞応募となると、長すぎて枚数制限にひっかかり、さりとて作品を削るつもりもなく、最終的に講談社に持ち込み、編集者に気に入られ、めでたく出版、今をときめく京極堂シリーズの最初の一歩となったのである。

 そこで講談社は考えた。持ち込み作品でも、こんなに素晴らしい作品がある。こういうのを、今後掘り出していけないものかと。

 通常の新人賞においては、著名な作家で構成する最終選考委員の話し合いにより、その受賞作が決定するのだが、勿論選考委員が応募された総ての作品を読むわけではない。下読みをする人たちがおり、そこで稚拙な力のない作品は落とされ、一部の作品だけがプロの作家のもとへ上がってくるのである。

 そして、各委員がその新人賞に相応しい作品を選出するのである。

 講談社は、メフィスト賞を創設した。上限の枚数制限なし、賞金なし、講談社の文芸部門における編集者の直読みによって選出される。その結果、読む者に対して挑戦的な作品も多く選出された。

 普通の新人賞なら、その新人賞の目的にふさわしい優等生の作品が選出され、読者がその作品を読み、つまらなく感じても、"今年の受賞作は、ちょっと面白くなかった。自分には合わなかった。"と思うくらいである。ところがメフィスト賞になると、出版サイドの方が"今回のメフィスト賞は、この作品だ。この面白さが、お前らにわかるかな。"的な作品を出してくるので、読者側もはっきりと、"いやー、面白かった"とか"これのどこが面白いんじゃ!ぼけ!埋めるぞ!"言えるのである。普通の新人賞が、プロの作家によって選出され、最初である程度の評価が下されるのに比べ、メフィスト賞は出版されてから、読者により、その評価が下されるのである。

 「煙か土か食い物」は、評者にはバッチグウ。ただし、前半の疾走感が、後半には少し衰え、読み疲れがしたのだが。主人公奈津川四郎は、サンディエゴで働く凄腕の救急医だが、そんなことはどうでもよい。

 舞台はすぐに、福井の実家に移るからだ。母親が連続主婦殴打生き埋め犯罪の魔の手にかかる。奇妙にもこの事件の被害者は、すべて頭部を殴打され、袋に入れられ、庭先に埋められるのである。福井へ飛んで帰ると、母親は病院で昏睡。四郎は自らの手で、犯人を捕らえようと考える。

 えっ、安易な設定だなって?そうではない。この四郎、頭が滅茶苦茶いいのだ。連続犯罪現場の位置関係、犯人が残していった謎のメッセージ、そういった物が読者に提示されるのだが、読者がそれについて考える暇もなく、主人公四郎が解いていくのである。

 四郎は、4人兄弟である。長男の一郎は、親父と一緒の代議士。次男の二郎は、家に隣接する藏の中で17歳のとき、消息を断つ。なんじゃ、こりゃ。三男の三郎は、ちょっとした作家だが、今度の事件に際し名探偵を雇う。なんじゃ、名探偵とは。すべての兄弟は身長180センチ以上、頭の良さは全員がIQ人並み以上(多分)、喧嘩は滅法強い。その兄弟の生き様が面白く、そこへ密室、暗号、名探偵などという本格物の材料が、謎解きとは別の意味で並べられる。疾走感、破壊力、知性を感じる物語なのである。 あえて、評価に◎◎をつけてみた。多分、いろんな種類の本を読んでいる人には、大いに楽しめる、味のある作品だと思う。久し振りに読書でもしようと思った人が手に取ると、駄作に思えてしまうだろう。なんせ、本の体裁がノベルスだから、それだけで読むのを敬遠する人も多いかも知れない。でも評者の評価は◎◎。この面白さが、わかるかな?

(20071209)

※文庫本を古書店100円で購入。(書評No759)

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by kotodomo | 2007-12-10 23:58 | 書評 | Trackback | Comments(0)
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