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「本のことども」by聖月

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2008年 03月 21日

〇「悪果」 黒川博行 角川書店 1890円 2007/9

〇「悪果」 黒川博行 角川書店 1890円 2007/9_b0037682_10154067.jpg 題名の『悪果』を一応調べてみた。評者としても馴染みのない単語。果たして造語なのか?そう思っていたら、パソコンの漢字変換で“あっか”と入力したら、一発で“悪果”と変換されるではないか。それで調べてみると、どうやら仏教のほうの言葉らしい。意味は、悪い行いの報い。“悪い果報”らしい。

 えっ?果報って、いい意味のみ使われるんじゃないの?例えば、友人に好きな女の子がいて、奥手な友人なんで告白もできないでいるんだけど、なんだか相手の方からアクセスしてきて、ピクニックに行きましょう♪お弁当も作るから期待しててね♪なんて、友人に言って、友人は顔を赤らめるわけで、その横で一部始終を観察していた評者は、“よっ!このぉ、果報者!”と肩を叩いて一緒に喜ぶの図みたいな。

 これも調べてみると、確かに通常は、果報というのは“よい運を授かって幸福なこと。また、そのさま。「-な身分」”とあるのだけど、仏教語では“前世での行いの結果として現世で受ける報い”とあって、ということは“悪い果報”もあるのだということである。

 本書の主人公は、大阪の警官コンビ。やくざも顔負けのしのぎの世界。果たしてその報いや如何に?というのが、大筋のテイストだろう。各所の書評を見ても、そこのところがクローズアップされていて、“凄悪の警官もいたもんだ”みたいな書き方をされているが、なんだかなあ、評者的には、そこらへんはイマイチ。森巣博の描く悪徳警官、逢坂剛の描く禿鷹シリーズに較べれば、まあ常識的な悪徳警官くらいにしか思えないのだなあ。

 しかし、評価が低くなったのは、そこのところではなく、期待した物語と実際の物語に乖離があったからである。黒川博行の疫病神シリーズ『疫病神』『国境』『暗礁』を読んできた評者としては、大阪、悪徳警官、裏社会、そんなキーワードを紹介記事や書評で目にすると、大阪弁のコミカルな会話を期待してしまうのだけど、基本的にそれがなかったのが期待外れな第一の理由。それと、事件の構図が意外にややこしく、ややこしいまではいいのだが、ややこしさに蓋然性がついていかず、事件の構図はわかったけど、普通、人間というのはそういう道理でそういう行動はしないだろうみたいな、消化不良な部分があったのが、期待外れの第二の理由なのである。

 しかしなあ、考えてみれば、やはり暴対の警官というのは、金を使わないとやっていけんかもなあ。もしくは、金を踏み倒さないとやっていけんだろうなあ。色んな夜の店で、色んな情報を集めて・・・そこで、裏金を出すか、用心棒代として踏み倒すか、はたまた自分の金を使うか・・・使うほど貰ってなければ、前二つしかないんじゃないかなあ。大変だなあ警察って。あ!公務員だからいけないんじゃん。郵政民営化みたいに、警察民営化すれば・・・結局、やくざと変わらなくなっちゃうかもしんないからボツということで。(20080318)

※少し期待外れではありましたが、黒川博行は巧いです。(書評No778)

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by kotodomo | 2008-03-21 10:39 | 書評 | Trackback | Comments(0)


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