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「本のことども」by聖月

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2008年 04月 14日

◎◎「ウォッチメイカー」 ジェフリー・ディーヴァー 文藝春秋 2200円 2007/10

◎◎「ウォッチメイカー」 ジェフリー・ディーヴァー 文藝春秋 2200円 2007/10_b0037682_16151046.jpg 最近になってようやく、ディーヴァーという作家がいかに素晴らしいかということがわかってきた評者である。

 話題になった『ボーン・コレクター』を中々面白いと評価し、次作『コフィン・ダンサー』を前作並に面白いと思い、でも別にこの作家のこのリンカーン・ライムシリーズを追うほどのこともないかと、3作目『エンプティー・チェア』はスルーして、何気なく4作目『石の猿』を読んで随分と面白いじゃないかと思い、5作目『魔術師』でこりゃ最高!と思い、6作目『12番目のカード』でやはりディーヴァーは巧いなあと唸り、そして7作目の本書『ウォッチメイカー』で、ここまでやりゃあ凄いと叫び・・・だから、スルーした『エンプティー・チェア』を早く読みなさい!自分!!!

 それとですね、今これを読んでいるあなた、リンカーン・ライムシリーズを読んだことがないというなら、そりゃあ幸せというもので、もう7作出ているシリーズを一気に読みなさい。娯楽の海に溺れなさい、浸りなさい。

 本書『ウォッチメイカー』、各所でその捻りに捻った展開に絶賛の声があがっている。それは、一読者として大いに評価するところであるが、冒頭から一人無駄な脇役の存在が気になるわけで、その捻りに捻った展開の結末までは想像できなくても、この無駄な脇役の役割が判然とするまで物語は終らないのだよということはわかってしまう。わかってしまうのだけど、わかった後も物語は捻りに捻られ、やはりディーヴァー凄すぎます(^.^)凄すぎるけど、それはもう6作目まで読んでわかっていたことで、今回評者が評価した部分は、また別の部分にある。

 まずは、結末にかけてのハートウォーミングな部分。ライムという登場人物その他、これまでの作品の中でも、中々心温かいやつらじゃないかという描写はあったのだが・・・『ハリー・ポッター』を愛読書にしている少女が登場、その存在自体がハートウォーミングに映った評者なのである。つまり、ディーヴァー自身が『ハリー・ポッター』を子供のための良書と受け止めているわけで、それが嬉しい評者なのである。最近のハリー・ポッターシリーズは色々言われてはいても、やはり少年少女に夢を与える物語であり、大人がとやかく言うべきことはない良書なのである。色々言っているのは、結局大人の世界であり、こんな良書が読める最近の子供たちは幸せ者なのである。その良書を大事そうに抱えている少女の存在自体がハートウォーミングなのである。

 あと、新機軸のキネシクスという手法の登場が興味深い。ダンスという名の女性、キネシクスのスペシャリストが本書に初登場。今後の顔出しにも注目だし、彼女を中心に据えた物語の上梓も読者としては期待するわけで、これからの楽しみが増えた、長生きはするもんだ、まだ45歳だが、と思うわけである。

 このキネシクスという手法、相手の会話の状況、しぐさから、ウソを見抜き、示唆するものを見通すもので、いわゆる“論理的な人間嘘発見器”なのである。人間嘘発見器なんて小道具は、読者はみな歓迎するし、そこに論理的な裏付けが語られるなら、読書の楽しみは倍増なのである。

 内容は語らない。とにかく読むべし、読むべし、べし、べし、べし!!!個人的には、物語の展開として『魔術師』のほうを上位に評価する評者だが、物語が醸しだす全体の雰囲気、ハートウォーミングな観点から評価するならば、総合評価は本書のほうが上位かもしれない。

 とにかく、未読の方には読んでくれとしかいいようがない、ディーヴァーのリンカーン・ライムシリーズの完璧なまでの完成度なのである。(20080413)

※1作目から3作目の題名のお約束事から考えれば、本書の題名、ウォッチとメイカーの間に“・”が入るのでは?(書評No785)

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by kotodomo | 2008-04-14 10:36 | 書評 | Trackback(2) | Comments(0)
Tracked from *モナミ* at 2008-06-07 15:12
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