2008年 04月 30日
評者は学生時代、駒込に住まっていたのだが、これが中々家に帰らない、他人の家に泊まり歩くよくある学生風情のテイタラクな生活を送っていて、中でも世田谷代田に住まう孝(タカシ)君の家にはよくお世話になったもんだったなあ。 孝君の“孝”、これは苗字である。変わった苗字なので、彼はそれなりになんというか劣等感みたいなのを持っていたのを憶えている。“僕は例えば麻耶という女とは結婚できない”“なぜなら、タカシマヤ、高島屋になってしまうからである”・・・高島屋でも三越でもダイエーでもイオンでも、愛があれば関係ないとは思ったのだが、当時の評者。 その孝君と、お隣の下北沢にはよく出かけていたものである。何もない世田谷代田と違って、下北沢には何かあるのである。何があるわけじゃないが、何かあるのである下北沢には。例えば、世田谷代田にはケンタッキーはないが、下北沢にはある、そんなことではなくて、活気とか、賑やかさとか、それも若者が何だかウキウキするようなものがあるのである。 そんな下北沢を舞台にした本書『下北沢』である。主人公の恋と、下北沢の不思議な活気や集いを描いたお気楽青春小説といえるだろう。 実は、評者の下北沢最後は、多分もう20年以上前の話である。だから、本書内に登場する店や場所が、今実際にあるものかどうかわからないのが残念なのである。しかし、多分言えることは、今現在下北沢に住まう若人や、下北沢をご贔屓にしている人々には、随分とリアル感のある舞台が小説内に登場するのではないかな。(20080425) ※藤谷治、段々とコンプリに近づいてきたぞ。手持ちに『いなかのせんきょ』、新作『二都』、もう少しである。(書評No790) 書評一覧 ↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら
by kotodomo
| 2008-04-30 10:47
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