「本のことども」by聖月

kotodomo.exblog.jp
ブログトップ
2008年 07月 30日

〇「破滅の石だたみ」 町田康 角川春樹事務所 1575円 2008/6

b0037682_8532934.jpg いつもの町田康ダラダラ雑文集なのだが、この本の完成のために書かれた文章が載っているわけでなく、これまで未掲載だったものを寄せ集めた感があるので、全体としてのまとまり度は低い反面、興味深い文章も掲載されている。

 まずは「告白」という文章。これは、あの大傑作『告白』を書いた後に、作者が認(したた)めた文章なのだが、新聞連載という形式に関して大体このようなことを書いている。新聞掲載とは、公開執筆なり、反面公開処刑にならぬようしなければ。また、連載中は挿画の畑中純氏の絵が楽しみであったこと・・・なるほど至極である。産みの苦しみと対面せざるを得ないということ、また自分が描いた文章がどういう具象で絵になるのかという楽しみ、これは実際連載という体験をしないと気付かないことかもしれない。

 また、この『告白』という作品の多くの書評を読んだ評者だが、色んな書評の中で“この作品で作者が描きたかったもの”に触れていた部分があったような気がする。それについては、この小文で町田康が“書きたかったもの”について“告白”しているので、なるほど当たり前のことだが、本人の言うことが一番的確な表現なのである。(以下抜粋)「殺人をするにしろ、しないにしろ、人間は色んなことを考えている。しかし、その考えは、本当の考えを考えないために考えによって功名に考えられた考えで、その考えがあるから人間は本当の考えを考えないで安全に生きていくことができるのではないか、と思う。その色んな考えを中途半端に深いところで考えてしまい、考えの泥沼で進退が窮まって、しかし過ぎてしまった時間は元に戻らず、先に進まざるをえなくなり、結果、ついに本当の考えにたどり着いてしまうというのは悲しいことだが、私はそんなことを書こうと思ってしまったのだった。」・・・やはり、作者は何を描きたかったのかということは、作者が一番よくご存知ということで、こんな問いを国語の試験に出す教師は、ズバリあほうであるということである(笑)。

 次に興味深い文章が「私のオールタイム文庫ベストテン」。町田康がベストというからには、ファンたるもの一応読んどこうかというアリガタイベストが載っているのである。『コインロッカー・ベイビーズ』村上龍は、これは評者も◎◎。『蛍・納屋を焼く・その他の短編』村上春樹は、評者の評価は○、中身は忘れた。『真夜中のマリア』野坂昭如は読んだことないが、町田康が野坂好きなのは知っていたので興味はある。『豊饒の海』三島由紀夫は今更読まないような気がする。『叫び声』大江健三郎は読んでもいいような気がする。『脱走と追跡のサンバ』筒井康隆は、なんか興味感じるかな。以下は、多分読まないだろうなあ。『死の家の記録』ドストエフスキー『ジェイルバード』カート・ヴォネガット『羽むしられて』ウディ・アレン『ボロ家の春秋』梅崎春生なんかはね。

 以上のような興味深い文章もあるのだが、後半は他人の本の“あとがき”なんかの寄せ集めで、少しかったるく読み飛ばしてみたりして、でも最新の町田康が図書館で借りれ、嬉しかったのことども。(20080718)

※しかし、町田康、こうやって見ると色んなところに文章寄せているんですねえ。(書評No820)

書評一覧
↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら
[PR]

by kotodomo | 2008-07-30 08:54 | 書評 | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://kotodomo.exblog.jp/tb/9180760
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。


<< ▲「ゴミの定理」 清水義範 実...      ◎◎「戸村飯店青春100連発」... >>