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「本のことども」by聖月

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2008年 08月 25日

〇「ぼくは落ち着きがない」 長嶋有 光文社 1575円 2008/6

〇「ぼくは落ち着きがない」 長嶋有 光文社 1575円 2008/6_b0037682_14543377.jpg 最近の長嶋有は、ちょっと意地悪になってきていて、“僕の本を読んでくれれば嬉しいのだけど、借りて読むんじゃなくて、買って読んでよ。じゃないと・・・”ということで、表紙カバーの裏に特別な文章を掲載している。要するに、図書館で借りると、表紙は糊付け、もしくはコーティングしてあるので、表紙の裏の文章まで読むこと出来ないだろう、ザマーミロ、ワーイということである。

 それに反して、鹿児島市立図書館は実にいいやつで、表紙カバーの裏をコピーし、巻末に貼り付けているので、“登場人物たちのその後”について、借りて読んだ評者も読むことが出来たのである。ザマーミロ、長嶋有、ワーイってなことである。

 本書『ぼくは落ち着きがない』は、独特のリアル文体青春小説である。舞台のほとんどが、高校の図書部の部室の中。どういう風にリアルかというと、部室に7人も生徒が入っていたら、あっちでワイワイ、こっちでワイワイやっているわけで、すべてを文章に汲もうと思っても落ち着きがなくなるわけで、それでもそれを全部表現しようとする企みにリアルさが存在するのである。お前、何やってんの。へえ、新しいゲームじゃん。おい、そっちうるさいぞ、っていうか、なんでお前が部室にいんの?まあ、いいや、そのゲーム貸してよ・・・そんな感じ?

 題名から察するに、主人公は男性かと思っていたら、女子高生。しばらく読み進めると、謎の男子生徒の目撃情報が集められ、もしかしたらそれが「落ち着きのない僕」なの?と思いきや、それも期待を裏切られ、はてさて題名の意図するところは何処に、ってな感じである。

 芥川賞受賞作家の、意欲的青春小説と受け止めてもいいかもしれない。軽いごちゃごちゃした文章の中にも技巧は存在し、結果的には文芸であるので、読みづらい向きもあるかとは思う。しかし、作品全体に落ち着きがないなかに、最終的にまとまり感はあるのかな。

 で、結局、どういう話かって?ある高校の図書部の日常を描いた作品である。以上。(20080824)

※最近は、有といえばダルビッシュのほうが有名。(書評No828)

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by kotodomo | 2008-08-25 14:54 | 書評 | Trackback(1) | Comments(0)
Tracked from 粋な提案 at 2008-10-17 02:41
タイトル : ぼくは落ち着きがない 長嶋有
ぼくは落ち着きがない(2008/06/20)長嶋有商品詳細を見る 桜ヶ丘高校の図書部は図書室の書庫が部室。部員の望美の目線が中心の群像劇です。 会話や動作が丁寧に書き込まれていて、部室での日常と繋がりが鮮明に筆..... more


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